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コラム

2019.04.30

人材のレベル不足を補う仕掛けとは

 令和元年を迎える日本経済は、西を向いても東を見ても人手不足の大合唱です。不足しているだけならまだしも、人材のレベルが需要に追い付かず、頭数はいるのに肝心の仕事を任せられる層がごく手薄である、という経営者の悩みも深刻化の一途です。一体どうすればこのお悩みを解決できるというのでしょうか?

 人材のレベル不足は、頭数の補充と違って「とりあえず手を打てば」何とかなるという性質の問題ではありません。主に業務の品質管理面で、要求する仕事と能力の間に明らかな開きがあり、任せたくても任せられない状況が発生しているということだからです。応急的に同僚が交代でその穴を埋めたり、上長あるいはどうかすると社長が現場に立つことで何とか急場を凌いでいる、というような場合がほとんどです。

 この場合、最も合理的な選択肢は何か?経営者が考えるのは以下の3つではないかと思います。
1) 能力ある人間を雇用し、その任に充てる
2) 現在担当している人間を教育し、仕事を任せる
3) 職場の仕事をやりくりすることで、皆で分担してその仕事をこなす方法を考える

 平成の長い不況が続いた時期は、1)の方法でも人が採れたと思うのですが、もはやそういう時代ではなくなりました。

ITの普及によって、ルーティンワークを中心として部分的には3)が当てはまるケースも出てきていますが、クライアントごとに異なる個別要求への対応や業務の品質管理に関わる部分では、まだまだ人間の力が必要とされており、「皆で分担して」対応することが恒常的な残業を意味するという場合も少なくありません。令和の時代になって加速する働き方改革に逆行する解決策だ、との批判は免れないでしょう。

教育というと時間がかかり投資も必要となることから、一見回り道のように見えるかもしれませんが、実は2)が最も効率的で、最も持続性の高い解決策なのです。それを効果的に行うためはひと手間が必要なのですが、この手間を惜しむかどうかで成功の確率がぐっと変わってくるのです。前置きが長くなりましたが、今日のコラムはここがポイントです。

上の表を見てください。今日のテーマは人材のレベル不足感についてなのですが、それは「誰にとっての不足感なのか?」という点が大きなポイントになってきます。「もしかして社長ご自身こそが社員のレベル不足感を感じているのではないですか?」という問いかけにあなたはどうお答えになりますか?

その通り、と言われる方も少なくないと思いますが、それではあなたのフラストレーションは溜まる一方、片や現場あるいは本人がそれをどうにかしようという自発的な対応はほとんど取られないでしょう。

他方で、世の中には坂本光司先生の「日本で一番大切にしたい会社」のように、社員が自分の頭で考えて、日々会社のために嬉々として働く会社も確実に存在します。そういう会社は例外なく社内で「目指すべきゴール」についての情報が共有されています。

それは経営理念であったり、会社を良くするための全社的活動であったり、社員一人ひとりへの思いやりや働きかけだったと、見え方は会社によって少しずつ異なりますが、大事なことはそれを通じて会社として目指すべきゴールが経営者と社員の間に共有されていること、なのです。

ゴールが共有されていれば、社内の誰もが自分はどのような位置にいるのか、ゴール達成のために何がどう足りないのか、それを自ずと考えるようになります。なぜなら人間は誰も自分が一番かわいいから、という古今東西変わることのない鉄則があるからです。

もうお分かりだと思いますが、「ひと手間」とは、「目指すべきゴールの共有」を図ることなのです。そのうえで、社員がレベル不足を自分事として捉えることをほめてあげてください。そうすることで、少しずつ会社は変わり始めます。

レベル不足解消のための教育投資や時間は、場合によっては不可避かもしれません。がしかし、その動きは一見ゆっくりとでも自発的に進む道をたどり、副次的な効果として社員のやる気や定着率も向上するようになるのです。

次回はゴール共有後の変化を加速させるための手段についてお伝えします、お楽しみに。

2019.04.23

社会善を支える情熱とビジネスチャンスの交差点

最近、SDGsを通じて企業が取り組む社会善のあり方を議論する若手ビジネスマンの会合に参加する機会がありました。参加メンバーには、有名大企業から中小企業までさまざまな業種・企業規模の会社の方がいらしたのですが、そこで気づかされたのは、そのような集まりが盛んになる背景には、業種や企業規模に関わらず今の若い世代が共通して持っている社会善への強い関心が底流にあるということでした。

聞けば、今の30代中盤の方々は、京都議定書が採択された1997年当時はまだ小中学生ながら、社会が取り組むべき環境対策については学校教育を通じてじっくりと考えさせられる機会があったのだそうです。具体的課題としての気候変動に関する学習は、さらに広い視点を持つことへの関心を呼び起こすきっかけになったに違いありません。

昭和に育った私たちの時代には公害対策についての授業くらいで、社会問題の解決についての視点は学んだものの、そこから先に議論を膨らませて社会善の方向性について学ぶというところまでには至っていなかったように思います。

世の中がすべてこのように意識高い系の若手ばかりではない、というご指摘は覚悟のうえで、今日はこの変化の流れに注目してみたいと思います。会合で紹介があった事例は、某有名進学塾が中学入試問題の中からSDGsに関するものを選り分けて問題集を出している、というものだったのですが、ちょうど中学受験を控えた子供たちの保護者が30代ということを併せて考えると、親を対象にした受験対策プロモーションとしては卓越した目の付け所だと思います。

具体的な例を挙げてみましょう。

以下は西武学園文理中学校の入試問題です。これが12歳の子供に対する問いかけだと認識して読んでみてください。

『「働く」ということについて次の文章を読み、あとの問に答えなさい。
かつてあるイギリスの経済学者は、「将来は一人が一週間に15時間働けば十分な世の中になる」と言いました。また、生活を送るために十分なおカネを全員に与える「ベーシックインカム」という取り組みを実験的に行った地域もあります。さらに「AI(人工知能)の発達によって不要になる職業」も最近話題となりました。このように考えると、「人が働くのは当たり前」という考え方自体が大きく変わるのかもしれません。」
問、働かなくても生活をするために十分なお金が国からもらえるとしたら、あなたは働きますか?働きませんか?どちらか一方を選んだ上で、その理由を具体的に答えなさい。』
(日能研:「SDGs 中学入試問題から見る2018年の変化」より)

そういう受験問題を解かされて育つ世代が社会人になる時代に、企業が提供すべき社会善はどのような形で、どんなビジネスチャンスが生まれることになるのか?

ベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者である法政大学の坂本光司先生は、仏教の僧侶から学んだ話として「幸福とは①人に愛されること、②人にほめられること、③人の役に立つこと、④人に必要とされることです。この三つの幸福(②、③、④)は、働くことによって得られるのです。」と述べられています。

SDGsでは、ゴール8のDecent Work(やりがいのある仕事)がこれに当たると思うのですが、坂本先生の言う「働くこと」と、お金のために「働く」は、ちょっと意味や範囲が違うような気もします。いずれにしても、全員ではないにしろ12歳でこのような問題を考えた人材が、今から10年後の日本ではごく普通に社会人になる、ということを、私たちは肝に据えておくべきなのだろうと思います。

今から10年後に、かつてなかった変化からビジネスチャンスを先読みしようとするならば、中学入試問題を見ておくというのは意外と悪くない将来予測かもしれません。

2019.04.16

副業としての環境ビジネス

いよいよあと半月ほどで令和元年がスタートします。平成の最後の方になって勢いが出てきた働き方改革の中で、副業解禁という動きも広がってきたようですね。サラリーマンにとってはかつてなかった時代が到来したという感じですが、企業経営者にとっては何も目新しい話ではなく、新規事業や多角化という言い方で、副業を展開することは昔から行われてきたのです。

この、新規事業あるいは多角化を通じて環境ビジネスに進出される会社は実に数多く、事例も多岐に渡っています。製造業が自社製品や経年劣化した運搬具などを処分する廃棄物処理業を始めるような事例から、不動産業が自社の強みである土地を生かしたメガソーラーの建設・運営に進出するような事例まで、そのパターンも様々です。

このような新規事業への進出に関する最終的な経営判断は、主に損益の予想に基づいて決められることが多いのではないかと思いますが、各社がそれぞれ「企業文化」を持っているように、異なる業界もそれぞれの色「業界特性」を持っている点にも十分注意を払っておくべきなのです。特に環境ビジネスについてはそれが重要なポイントとなります。

具体的には、たとえば製造業が製品の納期・品質・価格に強く縛られるという特性を持っているのに対して、それが廃棄物処理業だと厳格に同じ意味での「納期」は存在せず、廃棄物を引き取ってしまえばその後いつ処理するかについて顧客からの厳しい要求が出てきにくい、という大きな違いがあるのです。

この納期に縛られない、あるいは客が納期を気にしないという点は、処理施設の操業コストを合理化するうえで大きなアドバンテージになり得ます。特急注文が入ったり、段取り替えが頻繁に起きることから、製造業の工場にとっては至難の業である安定操業が、廃棄物処理業では比較的楽に実現できるからです。

反面で、品質面での社会的責任については一般的に廃棄物処理業のほうが製造業のそれよりも格段に厳しい責任を負っています。多くの場合は行政の審査による許認可と、違反に対する厳しい罰則に縛られており、義務付けられているといってもリコールによる善後策や、厳しいと言ってもニュース報道などの社会的制裁で済まされることの多い製造業のそれと比べると確実に一段以上厳しい責任が追及されるのです。

日本では、多くの新規事業は母体企業出身の経営者に委ねられる場合が多く、それが環境ビジネスであっても例外は多くありません。ですが環境ビジネスがそれだけ社会性の高い事業であるという点について、必ずしも経営者が良く理解しているかと言われると、残念ながらそうとばかりは言えないのが現状です。

特に、いわゆる「事業子会社」としてたとえば廃棄物処理のみを行っているような事業体の場合、経営判断に関わるような決裁事項が親会社に上がるというような例も珍しくないのですが、そうなると決裁者はまさに製造業そのものの経営者ですので、社会的責任に関する認識が廃棄物業界のそれとズレてくる、というようなことも起きがちになります。

市場を見ると、環境ビジネス専業で成り立っているという事例はむしろ少数派で、製造業など別分野の企業が多角化する中で環境ビジネスにも進出したという事例のほうが多いのですが、このような業界特性の違いによる思わぬ経営トラブルを招くことのないよう、経営者は万全の注意を払わなくてはなりません。

業界特性の違いを可視化して、会社組織として理解しておくこと、そして経営判断の場面では必ずその「違い」を確認すること。この二つを確実に実行することで、新規事業進出のリスクを低減し、収益を確実なものにできる可能性はぐっと高まるのです。

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