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コラム

2020.01.28

未来を獲得するための投資

 「西田先生、ぜひ当社でも学生インターンを受け入れたいのですが。」最近、よくこんなご相談を受けるようになりました。聞いてみると、若年層の人材不足が深刻化していることに加え、循環経済を巡る世間の目に変化が出てきたと敏感に感じ取っている様子がよく分かります。

 他方で環境問題はまだまだ敷居が高いと言われています。ジャケットの襟に虹色の輪っかをつけていても、それが何を意味するのか知っている人はまだ少数にとどまるようです。昨年8月に朝日新聞が東京・神奈川で実施した調査では、国連が定めた「2030年のための持続可能な開発目標:SDGs」について聞いたことがある、と言う人でも全体の3割に満たないという結果が出ていますので、7割強の人はSDGsについて「聞いたこともない」という状態なのです。たとえば地球温暖化でどれだけ災害が発生しても、それは専門家や行政に任せるべき仕事、という考え方がまだ支配的なのかもしれません。

 でもここで丁寧に数字を見てゆくと、少し違った景色が見えてきます。たとえば、29歳以下の人だけに限れば認知度は3割を超えており、わずか半年の間に12ポイントも増えていることが分かります。もしもこのペースが続くとするなら、次回の調査で4割を超え、今年の夏には半数以上がSDGsを認知している、という状況になることもありえるのです。

 さらに興味深いのは、昨年8月の段階で「管理職」は44%がSDGsを認知していたという数字です。つまり、学生インターンに限って言えば取る方も、受ける方もかなりの確率でSDGsを知っているところから話をスタートできるということです。さきほど「世間の目に変化が出てきた」と言いましたが、これこそが大きなポイントなのです。

 意識の高い学生を、対応準備ができた管理職が受け入れる・・人材確保に向けたインターンシップが成功するための最低条件ですが、実はこれだけでは不十分なのです。もうお分かりと思いますが、世間の半数以上が同じことを考えて、同じことを実施するとしたなら、そこには何らの差別性もなくなるからです。無事にインターンシップを終え、内定を出したは良いが最後の最後で入社辞退の連絡が入る、というパターンに陥る危険性は全く排除されていないのです。

ここ最近、循環経済が見直されてきたとは言っても、いまだ5割を超える人が旧態依然たる見方で企業を評価している状態です。学生の父兄や祖父母の年代だと、環境ビジネスに良い印象を持っていない人もかなりいます。就職戦線そのものは売り手市場が続いており、引く手あまたの学生にとってはどれを選ぶか贅沢な悩みに浸る中で、循環経済に携わる企業をどう評価するかがポイントになってきます。

単刀直入に申し上げると、ここで絶対に必要なのは経営者による明示的なコミットメントなのです。企業規模に関わらず、経営者と新入社員候補という一対一の関係を踏まえて、他ならぬ経営者がしっかりと学生の思いを受け止め、自分の言葉でモノを言えるかどうかに尽きるのです。具体的には経営理念と長期ビジョンをその学生と共有できれば、それが他社との明確な違いをもたらします。仮に他社が同じことをやったとしても、他社の経営理念や将来ビジョンが御社と全く同じはずはないからです。そのために使うあなたの時間こそ、未来への投資だと思ってください。それが地方の学生だとしても、インターンシップ参加のための旅費や滞在費などは取るに足らない出費です。

意識の高い学生が入社したくなるような、一緒に30年後の将来を夢見て仕事ができるような、経営者としてのコミットメントをしっかりと磨いて学生に相対してください。経営者が端折らず努力することによってしか、会社の未来は拓けないのです。

2020.01.21

投資家に「カネを出させてくれ」と言わせる方法

 事業オーナーとして、自分のビジネスをある程度のところまで大きくしたと思っても、あるレベルの規模を超えて大きくなるにはどうしても「追加投資」を検討せざるを得ない場面がやってくるものです。手元資金で賄えれば最善ですが、追加投資の金額が大きくなる場合には、どうすれば良いのでしょうか?

 何とかビジネスは軌道に乗った、でも未開拓市場がこんなにある、そこに自分のビジネスをぶつけるには、ヒトもキカイも全く足りない・・・。そんな時にこそ何より欲しいのは投資家からの支援です。それを、こちらから頭を下げることなく、むしろ先方に「カネを出させてくれ」と言わせる方法があるとしたら、その方法を聞いてみたくありませんか?

 事業で何をするかにもよりますが、一般的に環境戦略の展開には①ある程度の設備投資を求められることが多い、②その割に即効性を持った売上拡大は望みづらい、③実施出来れば競合他社に確実な差をつけることができる、等の特徴があります。平たく言うと、カネがかかる割にリターンを得るまでに時間がかかるということです。故にすんなりと投資対象になるのは難しい。が、もしも投資して成果が上がるようになれば、投資金額と先行時差が二重障壁となり、競合はついて来られなくなる、と言うくらいの意味だと思っておいてください。

 既存の判断基準は投資金額に対する売上高=カネの増減だったのですが、それだけだと貧弱な投資計画にしか見えないところが弱みに見えてしまいます。だったらそれ以外の評価軸も考えようじゃないか、というのが今日のポイントです。昨今の社会では特に環境戦略について、その実施段階でさまざまなモノサシが使えるようになってきているのです。

CO2排出の累積値であるカーボンフットプリントが代表的なものですが、CO2削減に大きく貢献することを言えればそれがプラスのバリューになります。それ以外にも、たとえばそれが働き方改革に寄与するものだったり、SDGsの実現に直接つながるものだったりするかもしれません。途上国の水問題に貢献するものかもしれませんし、衛生管理を劇的に改善するものかもしれません。社会の持続可能性を高めるもの、災害への耐性(レジリエンスと言います)を強化するもの、性差による不公平を解消するものなども、社会がそれを評価してくれる仕組みが少しずつ整い始めているのです。

ポイントは「それを顧客が評価してくれる」≒今後、売上に寄与する可能性が高い、という潜在的な評価です。たとえばSDGsなどを想像してもらえばわかりやすいと思うのですが、過去5年の実績データには含まれていないか、入っていても微弱な要素のはずです。それくらい社会は変化しつつある、その要素を評価軸に取り込もうというものです。

そういう事案に投資する人や会社は、未来の方向性が見えているということで証券アナリストがしっかりと評価してくれる、そういう事案に投資しただけで自社の株が上がる。言われてみればごく簡単な仕組みです。

実際に、福岡県に本社を持つ環境ビジネスの中小企業A社がこの方法で毎年10億円もの投資をモノにできたという実績があります。投資することになった関西の大手企業B社は、もともと縁もゆかりもなかった環境ビジネスについて、大胆にも相当額と人員を惜しげもなくつぎ込んでいます。

この事案でも、事業主体であるA社に対して積極的に投資の申し入れをしたのは投資家であるB社だそうです。投資家の側もそんな案件を探している、2020年初頭はそんな時代なのです。

そのような目でご自身のビジネスポートフォリオを見直してみると、意外なネタが浮かび上がってくるかもしれません。ぜひ投資家目線で環境戦略を洗い直してみてください。

2020.01.14

売上アップ・業容拡大と環境戦略

 2020年初頭の段階では、環境戦略を考えることで売上を上げるチャンスが訪れると言われても、今一つピンとこないという人の方がまだ多い状況です。今年はぜひこの状況が変わるように努力を続けて行きたいと考えています。そもそもなぜ、環境戦略が売上向上や業容拡大に寄与すると言えるのか?について、今日は実際の事例を参照しながら説明してみましょう。

1. 営業単価を2割上げる環境戦略
 しっかりした環境戦略を構築するだけで営業単価を2割は上げられる、と言うとどこの世界の話かと思われるかもしれませんが、海外のマーケットではありえない話ではありません。日本のように規制でがんじがらめになっている国とは違い、環境面での付加価値を訴求できる市場があるということに気づいたA社は、市場調査段階で想定した単価の3割増しで現地パートナーとの価格交渉を終えることができました。
 このパートナーは、A社が繰り返し訴求した技術の確かさや国際条約への適合実績を高く評価し、A社と取引することで自身のステータスも上がる、との経営判断をして単価アップに応じてくれたのでした。
 環境への意識が高まっている市場や、意識の高いユーザーをどのように拾ってゆけるかが勝負のポイントになるのですが、そのための地道な努力を怠らないことで道は確実に開けるのです。

2. 社員が張り切る仕組みと環境戦略
 SDGsやサーキュラーエコノミーなど昨今の流行もあって、トップがしっかりとした環境戦略を考えている会社は社会が求める課題への対応を取りやすい状況に置かれます。社会課題への対応を考える仕事は、単に企業収益や市場シェアの拡大を目指した仕事と違い、社員にとって「やるだけで達成感や充実感を得られる仕事」になりやすいという特質があります。仕事をしながら同時に達成感を得られる機会が増えるわけですから、自発的に取り組む社員が増えてゆくという副次効果も伴い、自然と社内がエネルギーに満ちてくるのです。
 社会課題への対応と、ビジネスの現状をどうやって埋めてゆくのか?そのために必要な予算や技術はどうやって確保するのか?社内での議論を通じてひとつひとつ解決策を積み重ねてゆくことで、社員の間に本気度が高まって行きます。
 やがて社員が「ウチの会社は本当に良い会社だ」と言い出す頃には、間違いなく営業が張り切って成果を上げる仕組みが定着しているはずです。実際にこの戦略を採ったB社では、ごく最近になって、新しい投資に向けて既存事業の一部を売却することで戦略資金を手当てするという意思決定がなされました。SDGsも最後の10年で実績を積み重ねる段階へと移行しようとする中で、B社は確実に勝ち組への階段を上っていると言えるでしょう。
 逆にトップが「環境はCSR部に任せておけばよい」という態度に終始すると、いつまでたっても社内の士気は上がらず、CSR部以外の社員が環境問題に関心を持たない状態が続くことになります。スーツの胸に虹の輪をつけていても、実際は成長機会を逃し続けていることにトップが気づかないようではバスに乗り遅れるべくして乗り遅れている、と言われても仕方ないのではないでしょうか。

3. 投資家が注目するポイントと環境戦略
 フードロス対策や有機農業に欠かせない生ごみ処理を行うC社は、最近になって大手通信会社との資本提携による事業の拡大に成功しました。すでに確固たるビジネスモデルがあって、確実な投資収益性が見込める状況にあったことに加え、通信会社にとっては自らの顧客であるホテルやレストラン、スーパーマーケットなどに対するフードロス対策の提供をも行うことで、環境・社会・企業統治(ESG)への積極的な対応を取る会社であるとの評価を得ることができます。これは昨年くらいから注目されているESG投資の考え方に沿った経営判断によるものです。これまでの商圏を一気に拡大できるだけの資金を得て、C社の業績も急成長の軌道に乗りつつあります。
 もしも御社のビジネスに、大手企業が顧客に対するサービスとして採用できそうなものがあるとするならば、同じような視点で資本提携に結び付けられるチャンスが巡ってきているのです。これをモノにするためは、証券会社やアナリストに対して納得的な説明ができなくてはなりません。しっかりした環境戦略を構築できていることが何より重要な条件になるのです。

 2020年、世の中はオリンピックに沸いていますが、ビジネスの世界では新たな成長機会として環境戦略がモノを言う年になるのです。もしまだ経営者として確固たる意思決定ができずにいるとするならば、もしかするとそれは大きなチャンスを逃す前触れかもしれません。チャンスの女神には後ろ髪がない、とはよく言われる話です。迷う話ではありません。次は御社の番なのです。

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