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コラム

2019.04.09

やれてる会社でも、実は人はいない

コンサルタントとして環境ビジネスの海外展開に関わっていると、よく社長から「ウチは人材が弱みで・・」とか、「英語のできる人材がいないんです。」という声に出会うことがあります。確かに、英語が喋れて外国の企業とも交渉できる人材がいてくれれば海外展開を考えたい、という気持ちもわからなくはありません。

でもそういう人材がいないと仕事にならないとうのは、私に言わせるといささか短絡が過ぎるのです。逆に、海外展開できている会社でも必ずしも人材が豊かなわけでもなければ、英語による交渉力が十分にあるというわけではありません。

2019年現在、かなりの部分はIT技術の進歩によって、英語による仕事が昔ほど難しいものではなくなってきていることが、まだ十分には知られていないのかもしれないと思い、今日はそのあたりを少し詳しくご案内してみます。

1. 読む・書く
最近では、海外とのビジネスコミュニケーションのほとんどが電子メールになってきている状況だと思います。どうしても先方が電話による対話を望む、というような場合でなければ、基本的に電子メールでのやりとりで済むのですが、その場合はGoogle辞書を使って相手の文章を読み、こちらから打つ文章については「ココナラ」などのネット翻訳サービスを使えばスムースに英語にしてくれます。多少英語が使える人なら、自分で書いた英語をチェックしてくれるサービスもありますので、そちらのほうが割安だと思います。

2. 話す
最近のAI自動翻訳機は、かなり込み入った日本語でもだいぶ正確に英語にしてくれます。これは自社の商品を説明するなど、定型の文章を話すときに最もその力を発揮します。すなわち、予め決まった文章を翻訳し、それを暗記しておくのです。

・・と、ここまで聞いて「なるほどそれならやれる!」と考え方が変わった人はあまり多くないかもしれません。これらはそもそもあまりインパクトのあるニュースではなく、科学技術の発達についてあちこちで取り上げられている情報にすぎないのです。

それなのにどうして、と思われた方のギモンにお答えすると、海外ビジネスに挑戦して、そこそこやれている会社も実はそれほど人材に恵まれているわけではない、という事実があるからなのです。せいぜい上で紹介した1.と2.くらいが出来れば、あとは「何とかなる!」式の挑戦でどうにかこうにか商談が動いているという場合も少なくない、ということなのです。強いて言えば、これまでの2点に加えて、

3. ガイド役を配置する
外部人材で業界のことが分かっていて、英語のチェックをかけてくれるくらいの実力ある専門家を雇う、ということです。最近はインターネットを介して世界中どこにいてもさほど長いリードタイムを取らずに英語の精緻化がカンタンに確認できるのです。この部分を担保できるかどうかで、英語に自信のない社員でも海外とのやり取りができるようになるかどうかが決まると言っても過言ではないでしょう。

ここで述べた1.~3.までを総合的に実施すれば、多くの場合は今いる人材の力+ITの力で比較的簡単に英語を使ってビジネスができるようになります。さらにこの外部人材の力を継続的に用いることによって社員の英語力向上も同時に図れるため、立ち上げ時期に多少のトラブルが出たとしても、それほど時間をかけずに是正することが可能となります。

そこで決定的に重要になるのが、海外の環境ビジネスでどのくらいの売上を見込むのかという経営方針と、そのための営業努力について、いつまで何がどの程度求められるのかという見通しです、これがないと仕事をエンドレスに計画しなくてはいけないこととなり、英語もどこまで上達すれば良いのかわからない状態が続くため、担当する社員はモチベーションが非常に保ちにくくなります。

時あたかも、循環型経済というタイトルでリサイクルビジネスに関するISO規格が検討されていたり、気候変動対策に2兆ドルもの資金が動くとの観測もある等、環境ビジネスにとってはまたとないビジネスチャンスが広がっています。

他方で日本企業にとって人手不足は業界を問わず共通の制約条件となっています。海外市場の開拓に成功している会社でも必ずしも人材がいるわけではないという現状を踏まえ、「現在の人材でどこまでやれる?」という棚卸をしっかりと行うことこそ、機会を逃さないために経営者が今取るべき施策なのです。

2019.04.02

ビジョンを提示できる強み

いま世界の環境ビジネスの最先端で問われているのは、技術やコストもそうですが、意外にも長期のビジョンを語ること、だったりします。ビジョンなんかがカネになるのか?と突っ込まれそうですが、その背景には今の時代ならではの事情があるのです。

一言で環境ビジネスと言っても、再生可能エネルギーから水処理、砂漠化対策や大気汚染対策、土壌改良やごみ焼却炉など、守備範囲がものすごく広いのですが、話を分かりやすくするために、いわゆる静脈産業と言われる廃棄物処理の分野に限って説明します。

この分野では、どこの国でも法律による規制があり、その中でできるだけコストをかけずに安全・安心を提供することが求められます。ごみの収集・運搬から分別、焼却もしくはリサイクルと最後には埋め立て処分が続くのですが、規制のため使える技術はおのずと限られ、誰がやっても同じような成果しか出ない、というパターンになりがちなのです。これは洋の東西を問わずほぼ普遍的に見られる現象です。

そのような市場環境に対して、技術に優れた日本企業が提案してしまいがちなのが高度な仕様です。小型で省エネ、高効率な技術をこれでもか、と投入しようとします。ところが、そもそも規制事業なので基準値以上の過剰な仕様は求められませんし、エネルギーや触媒など投入資源の原単位が少し減らせるから、と言ったところで初期投資コストが高いと話にもなりません。すなわち、仕様やコストの世界で勝負する、という絵が非常に描きづらい市場環境にある、ということなのです。

他方で、世界的に見れば規制をかける側(すなわち行政)そして市場が強く要求するようになってきたのが社会善へのコミットメントです。それが金融の世界にまで波及効果を及ぼしつつあり、大規模な投資を伴う案件においてはその多くに対して環境・社会・ガバナンスに関するコミットメントを語ることが求められるようになってきています。

国連が提唱する「2030年のための持続的開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)に象徴されるように、この流れは強まることこそあれ当分の間弱まることはないでしょう。すでに欧米の企業の間では、まず社会善を尊重するビジョンを語り、そして実行するという流れがごく当たり前のものとなりつつあります。逆に言えば、この部分のコミットメントに注力することで無用な価格競争を回避できる可能性も見えてくるのです。

意図してそのような価格競争回避の戦略を描くことで、事業の収益性自体を改善できるとしたら、それは意義ある取り組みと言えるのではないでしょうか?これまで日本企業はたとえ大手でも最大5か年の中期計画以上のビジョンを持たない、と揶揄されたものですが、この際10年後あるいはさらにその先の未来を語ることで、市場に攻勢をかけるという選択肢が現実味を帯びてきたと言えます。特にオーナー企業の場合は、超長期のビジョンであっても堂々と語れるだけの素地があるので、ぜひ取り組んで市場対策に役立てて頂きたいと思います。

2019.03.26

ESG投資の熱狂

2019年3月末現在の話ですが、全世界の一部が熱狂し、その度合いが加速度的に高まっている投資ネタがあります。聞いたことがある人は少なくないと思うのですが、ESG投資と言われる社会善を基軸とした投資スキームの話です。

なんでそんなものが、と言われる向きも少なくないと思います。日本国内だけの説明で済むのであれば、最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人:厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っている)が2015年に国連責任投資原則に署名したことがきっかけであった、と言われています。日本はそれだけGPIFの影響が大きい市場環境にあることを、図らずも露呈させてくれたという話なのですが、世界全体を俯瞰する視点を持つと、話はそれだけでは済まなくなります。

GPIFが署名した国連責任投資原則(PRI(Principles for Responsible Investment))とは、機関投資家が環境・社会・ガバナンス(ESG)の課題を投資の意思決定や所有慣習に組み込み、受益者のために長期的な投資成果を向上させることを目的とした原則で、2006年4月にアナン元国連事務総長によって公表されたものです。投資家に対して真正面から社会善への対応を求めたという意味で画期的な提案でした。

その考え方の延長線上に、このコラムでも何回か取り上げたSDGs(持続可能な開発目標)という、国連が採択した国際社会全体のための行動指針があります。さらにまた、国際社会にとって喫緊の課題である地球温暖化対策に向けたパリ協定も重要な要素です。これらの動きは相互に近く、また連動していて、ESG投資の中身についての議論では、常に温暖化対策のための財務的開示に関するガイドラインが参照されます。

議論は熱気を帯びていて、非財務情報の開示をどのように行えばよいか、裾野を広げるための施策はどうあるべきか、関係各業界の対応はどうなるかなど、社会善を真正面から捉えようとする動きが本物であることを感じさせてくれます。

ただ残念ながら、日本社会全体がこの流れを認識しているかと言われれば、そこには確実に大きな段差があり、ややもするとその段差はむしろ広がりつつあるのではないかとすら思われるところがあります。前述のとおり、最先端の議論はどんどん進んでいる中で、大企業のCSR部門であればどうにか話題に着いて来られていても、多くの中小企業にとっては、とてもついて行けない性質のものだと取られる部分がまだ大きいということだと思います。

この落差は世界的に見れば、大企業対中小企業の差である以上に先進国対途上国のそれであり、常に議論をリードする欧米社会に対し、是々非々で対案をぶつけるインド・中国およびそれ以外の途上国という図式になっています。ただ、大枠で言えばSDGsもそうですが、パリ協定にはこれら途上国も参加している状況なので、それが縛りになっていて議論の枠組み自体は担保されているという状況です。

だとすると、確かに紆余曲折はあるのでしょうが、早晩世界はこの落差を吸収する形で議論をまとめ上げることになるのでしょう。その段階では企業に社会善を求めるESG投資の考え方が本流になっている、という姿もあながちホラ噺ではないかもしれません。

企業経営者として、どのようにESG投資の考え方を取り入れれば良いのか、先んじてESG投資を受け入れることでどのようなメリットがあるのか。当社のセミナーではこの点を詳しくご紹介しています。詳しくはセミナー案内のページをご覧ください。

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