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コラム

2019.06.01

循環型社会の隙間

 イソップの「ウサギと亀」に出てくるウサギみたい。私は環境ビジネスのコンサルタントをしていて、日本の立ち位置をよくそんな風に感じることがあります。他国より圧倒的に先行する立場を得ながら、その後の展開に対する油断があったりしていつの間にか大きな商機を逃してしまう、みたいな展開が多いからです。かつて世界最先端を誇った太陽光発電の分野でも、今日日本勢はまるで振るわないのが実態です。

 いま、環境問題を議論する国際会議などでちょっとした流行コトバになっている感があるのが「サーキュラーエコノミー(Circular Economy)」です。直訳すれば循環経済ということになりますが、その意味するところは単に「廃棄物をリサイクルして原材料に使う」、というシンプルなものではなく、社会の環境負荷を低減させる様々な取り組みをも包含するもの、とされています。

広義の考え方ではライドシェアや民泊などのシェアエコノミーも含まれますし、単なるリサイクルやいわゆる”3R”と異なるのは、資源リサイクルに対応しやすいように製造業のほうも歩み寄る、という部分があることです。たとえば設計を変えて、より再生資源を使いやすくしたり、製品として廃棄される場合に分解しやすくしておく、などの対応がこれにあたります。

いささかややこしいのですが、日本には「循環型社会形成推進基本法」という法律がありまして、今から19年も前の平成12年に制定されたものなのですが、これに基づき5年ごとに「循環型社会形成推進基本計画」という計画が政府によってまとめられています。ただこの法律は若干立て付けが古く、製造業の役割を強く打ち出しているわけではありませんで、主に3Rの推進を進めようとするものです。中身的にも、たとえば焼却処分による熱回収がリサイクル(サーマルリサイクルと言います)に含まれる、といった具合です。

国際社会が議論しようとしているサーキュラーエコノミーは、基本法が目指すものと同名異質だと思うのは何も私だけではないと思います。ところが、すでに盤石な法整備が済んでいて、そのための計画が着々と推進されている現下にあって、いまさら法律を手直しする、などという話にはどうもならないらしいのです。確かに、字面を翻訳すれば日本はあたかも20年前からサーキュラーエコノミーを推進してきたようなことを言えなくもないのだろうと思いますが、シェアエコノミーの普及ぶりを見ればそこに大きな瑕疵があることも一目瞭然だろうと思うのです。

日本の法律や体制と、国際社会の求めるものとの間に隙間が存在する。この問題は技術を持つ日本企業にとっての課題であると同時に、ジャーナリストや行政官を含めたより広い範囲で共有されるべき要素を含んでいます。そういう部分の情報発信や意見交換についてもコンサルティングを通じてお手伝いさせていただいております。世界と歩調を合わせて循環型経済を推進するために、ぜひ一度当社のセミナーを受講ください。

2019.05.22

ESG金融をご存知ですか?

昨今の日本社会において、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)に対する認知度が高まってきたのは心強いことです。さまざまな立場の人たちが、地球の未来を考えるうえでSDGsを共通言語として一緒に議論を進めて行けることほど、国連が果たした役割の中で将来の可能性を感じさせるものはなかったと感じています。

今、国際社会ではSDGsのみならず様々な切り口で社会善への積極的な取り組みを可視化し、評価しようという動きが強まっています。金融の世界ではEnvironment: 環境、Society: 社会、そしてGovernance: 企業統治をその評価軸としたうえで、非財務情報をも併せて投融資の判断基準とする考え方が導入されつつありまして、3つの評価軸の頭文字を取ってESG金融と呼ばれています。

すなわち、経営者は①環境に良いことをどのように導入・実践しているか?②社会に良いことをどのように導入・実践しているか?そして③自身の企業統治をどのように可視化し、持続可能な経営を実現しているか?という点で評価される、ということなのです。

この中で、言ってみればEとSは将来へのコミットメントであり目標であるのに対して、Gは現在進行形であり半ば実績であるという違いがありますが、いずれも社業が社会善への貢献をどのように果たしつつあるか、また果たしているかを評価するために使われつつあります。

欧米では株主による投資を通じた関係情報の可視化が進んでおり、「ESG投資」と呼ばれていますが、日本では企業向けの資金調達手段が金融機関による融資が中心であることもあって、独自の取り組みがなされつつあり、「ESG融資」と呼ばれています。

令和元年はその実践がスタートする年にあたるのですが、今や政府の後押しを受けた各金融機関、なかんずく地方銀行が「地域循環共生圏」に資する働きをしている地方の企業を見出し、融資を通じた支援を円滑に進めようとする動きが出始めています。

具体的には、エネルギーの地産地消、ごみの減量と循環型経済の促進、産業廃棄物の適正処理、再生可能エネルギーの導入と活用などが挙げられますが、このような環境ど真ん中の事業でなくても、社会的弱者への支援や、経営状況をガラス張りにして可視化する取り組みなども評価される流れにあります。

その中で、特にSDGsを標榜し実践することは、国際社会が共同で目指している目標への直接的なアプローチになるということもあって社会的な訴求性の高い取り組みとして評価されるが、その反面で実態が伴っていないと「カンバンを借りているだけ」との批判を受けるケースも出てくるのではないかと思われます。

金融機関もみな横一線で取り組みを始めたところなので、むしろ企業側が具体的な取り組み事案を提供することでイニシャチブを取れるチャンスです。社会善の実現を通じて明日の地球を作ってゆくための取り組みを、あなたの企業がリードするという心意気でESG金融への対応を進めてください。今こそ、そのチャンスなのですから。

2019.05.14

心がときめく「環境の魔法」とは

今や世界にその名を知られる片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんですが、その著書「人生がときめく片付けの魔法」で彼女が世界に発信したのは、持ち主の「心の持ちよう」が全てを変える、という独自性の高い考え方でした。彼女のビジネスモデルはいったいどこが優れていたのでしょうか?

彼女の考え方について、賛否はあると思いますが、結果として世界中に広まり、多くの人がその手法を実践しているのは紛れもない事実だと思います。

結果的に大きな市場を創造することにつながったそのアプローチは、環境ビジネスが世界を目指す上で大変参考になる、私はそんなふうに考えています。そのポイントをいくつか挙げてみたいと思います。

1) まず、「実効性ある方法論から入る」こと。近藤さんの場合は「捨てる」こと、その際に「思い」についても納得できる方法で整理することが該当すると思います。そうすることでリバウンドしない片付けができるようになる、というロジックで、高い実効性を訴求しています。「まずはやってみよう」と思わせるアプローチです。
2) そこで、ポイントとなるのが「持ち主の心」であることを著書で解説し、妥当性を高めていること。片付けるのもちらかすのも、全て持ち主(=である読者)次第であることを納得しやすい言葉で説明しています。捨てるかどうかを決める基準も「心がときめくかどうか」という、極めて主観的なものに特化させています。客観性を排除することで、読者に対して「すべてはあなた次第」であることを説き、捨てたことについての「反芻的な疑問をシャットアウトする」ことをサポートしています。
3) 以降は、その後のリバウンドを防ぐための考え方や習慣について、事例の紹介となぜそうなのかという解説が中心で、「技術論・方法論は最初に出てきたものだけ」に限られています。

片付けは、生活習慣そのものでもあるため、難しい話は厳禁です。環境ビジネスも、言ってみれば社会全体の生活習慣に深くかかわる事業である分だけ、彼女のアプローチがヒントになる要素は少なくありません。具体的には、まず「実効性ある方法論から入る」ことで投資の成果を約束し、潜在顧客の関心を引くことができます。次に潜在顧客が自信を持って「反芻的な疑問をシャットアウトする」ことができるようなロジックを提供できれば、周囲の雑音を気にせず投資を検討してもらえることになります。さらに「技術論・方法論は最初に出てきたものだけ」に限り、考え方を繰り返し説明することで、疑念なくこちらが提供するソリューションのみを検討してくれることになるのです。

このアプローチを採用するためには、①提供するサービスが実効性の高いものであることに加えて、②サービスの背景にオリジナリティの高い哲学や考え方が伴っていなくてはなりません。一般的に日本の環境ビジネスは技術力が高いため、①についてはあまり問題がないものの、②の部分を外国人にも明示的に解りやすく説明できるという事例はまだ限られているようです。

片付けに悩み、近藤さんの考え方に共鳴した人たちが世界中で新たな顧客となりました。同様に、環境問題に悩む社会に対しても、共鳴しうる考え方を懇切丁寧に発信すること、納得してもらったうえで実践してもらうこと、その部分を持続的にサポートして行くことなどを通じれば、市場は際限なく広がってゆくのです。

もうお分かりいただけたと思うのですが、環境ビジネスのグローバル化に際しては「オリジナリティあふれる考え方」こそが、必須条件として求められる強みそのものである、ということです。逆に言うと、技術の優秀さだけを訴求する方法にはおのずと限界があり、考え方で勝負するアプローチを取らないと、新たな市場を開拓することにはつながらないのです。

技術の説明と合わせて、あなたの会社だけが持つオリジナルの考え方を、分かりやすい言葉で堂々と潜在顧客に説明してゆきましょう。それを繰り返すことで、それまで誰も開発できていなかった新しい市場への扉が開かれて行くのです。

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