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新着情報

2019.11.19

ビジネスチャンスは足元に

 つい先日のことですが、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン社(以下、P&GJ社)が、同社の台所用洗剤JOYのボトル向けに、日本国内の海岸で回収された海洋プラスチックごみを再生して原材料に使うというニュースが流れたのをご存知の方もいらっしゃるかと思います。
 https://www.newsweekjapan.jp/press_release/2019/11/000000022000031986.php

 リサイクルビジネスにおいて、プラスチックは長年にわたって儲からない分野の代表選手みたいに言われてきた過去があります。なにしろ①大量に計画生産できるバージン材に比べて再生材は安定供給が難しい、②廃棄物にはポリエチレンやポリプロピレンなど多様な素材が混じっていて選別を徹底することが難しいため、再生材は素材の純度を上げることが難しい。また工程上どうしても異物混入が発生しがち、③そもそも価格的にバージン材のプラスチックがものすごく安いなど、プラスチックのリサイクルには難しい要件ばかりが揃っているからです。

 業界ではたとえば白いポリスチレンの精肉トレイに異物混入による黒点などがあると、それだけで消費者はその肉を買わなくなるんだ、というような意味を込めて、ごく少量でも再生材に見られる異物混入を「コンタミ」と呼んで忌避しています。コンタミネーションはそもそも「汚染」と言う意味ですから、思わず「その材料は有害物質にでも汚染されているのか?」と聞き返したくなるところですが、業界慣習の世界では誰一人疑うことなく今日まで再生材忌避の流れが続いてきていたのでした。

 ところがこの夏、大阪で開かれたG-20でクローズアップされたこともあって、「海洋プラスチック」は一気に注目されるテーマとして浮かび上がりました。単に地球環境問題と言うだけに止まらず、社会への配慮を示すためのシンボリックなテーマとしても。目ざとい大手外食チェーンなどが早速プラスチックのストローを廃止したりする動きが加速されたのは皆さんもご存じですよね。

 今回、P&GJ社はさらに突っ込んで、「海洋プラスチックを再生してボトルに使う」という戦略に出ました。ここでパラダイムの転換が起きるのですが、明らかに海洋プラスチックであることを示すには、たとえば「コンタミ」があったほうが良い、みたいな話になるのではないかと見ています。ゴミ集めや再生工程の動画は、そのままコマーシャル映像になりうるでしょう。それまで忌避材料でしかなかったコンタミが、この流れでは価値を生み出すものになるという、そんな流れが新たに生まれるのです。

明らかな異物混入の痕跡も、海洋プラスチック由来であることを示すアイキャッチャーとして、むしろ店頭では目立たせるディスプレイに使われたりするかもしれません。もはや「コンタミ」ではなく、それ自体が価値の証明になるということです。

 良い話題でも悪い話題でも、話題になったことは商機をもたらすという、今回の事例はその典型的なパターンを示してくれているのではないでしょうか。ちょっと前になりますが、CSV=Creating Shared Valueというキーワードが流行ったことがありました。ストローの材料見直しはコストです。でも海洋プラスチックで作る洗剤ボトルは?そうです。話題作りのインパクトが強い分、もしかしたら売り上げ増につながる取り組みなのです。まさにビジネスチャンスは足元にある、ことを如実に示してくれた事例ですね。

2019.11.12

ラストワンマイルに商機あり

 最近、製造業では至る所でRFIDなどを活用した「位置情報のデータ化」が進んでいます。流通を支える大規模倉庫では、この流れについて来られない中小企業による製品などを対象とした「タグ付け」という仕事が存在しており、倉庫内で働くタグ付け専門の下請業者が存在していたりします。タグはそのまま製品に組み込まれてしまうと、基本的にはその役目を終えるのですが、なにせICが組み込まれているため、多くの場合は放っておけば数十年は使えるようにできているのだそうです。

 一説によると自動車は一台が約3万点もの部品から出来上がっているのだそうですが、仮にこのうち大半にICタグが付けられているとすると、故障して取り替えられたりする履歴情報もその気になれば追いかけられるということになります。

 また、スーパーの商棚に並んでいる製品のほとんどにはバーコードがついています。生鮮品などスーパーが自分で付けたものもありますが、メーカー品の多くは工場でつけられたもので、製造から輸送、販売までのデータが一元的に紐付けられています。

 このデータも、家庭の冷蔵庫に入ったからと言って消えてなくなるわけではなく、その気になればレジの向こう側で起こっていることをトレースするための手掛かりになるのです。消費者が冷蔵庫から出し入れするたびにバーコードリーダーが働けば、たとえば消費期限内に食べられたかどうか、もっと言えばいつ消費されたか。お米のように、開封後しばらくかけて消費されるものは、次の購買までの期間を捉えることができれば「何日くらいかけて消費されたか」がわかるようになります。ちょっとメンドクサイかもしれませんが、同じようにバーコードがついている洗濯洗剤やシャンプーなども同じことが可能なはずです。

 ガソリンスタンドでも、クルマの個体識別ができるのですから、いつどこでどのくらい給油したのかをトレースすることは技術的に可能だろうと思われます。小売り各社の系列が違うことでデータのやり取りがしにくいという点はあるかもしれませんが、でもそれはスーパーやドラッグストアも同じです。

 このようなデータが共有されるようになると、たとえば消費者には「そろそろ買い時」または「賞味期限が近い」ことを知らせてくれるサービスが実現できそうですし、小売店はキャンペーンを計画するための手掛かりが得られます。またメーカーでは容器のサイズやデザインを再検討するための情報として活用できそうですし、流通ではロットの組み方を見直すための情報として注目が集まりそうです。

 いずれも、店から消費現場までのラストワンマイルに注目した考え方ですが、スマホが広く行き渡った現代社会では、インフラの問題はほぼ解決している状態にあります。今までこの部分のデータが欠落していたことで発生していたフードロスや家庭内死蔵品の問題を解決し、新たな商機をひねり出すためにも、ラストワンマイルを商機と捉えた取組みに注目したいと思います。

2019.11.05

なぜシェアリングビジネスがそんなに注目されるのか

 世界ではUberやLyftなど、ライドシェアサービスのユニコーン企業が羽ばたく中、少し前までは「日本では規制があってなかなかシェアリングビジネスが根付かない」などと言われていたものでしたね。今やその風景はすっかり様変わりで、確かに大手ライドシェア企業こそ不発だったかもしれませんが、アイカサ(傘のシェアリング)や、コインパーキングと結びついたカーシェアリングなど、しっかりと日本の土壌に受け入れられたサービスも出て来ました。

 サブスクリプションという対価支払いの考え方が普及したことと合わせて、「ルーティンの中でサービスを提供する/受ける」ことがビジネスである、というような感覚が広まってきたということだと思います。これはその対極にある「資産を販売する/保有する」というビジネスモデルの絶対性が薄れてきたことの証明でもあるのですが、先行的な事例としてはパソコンとクラウドソリューションの関係が挙げられると思います。

 その昔、と言うほど昔でもないかもしれませんが、パソコンのソフトは一台ごとにライセンスを購入して、CDなどのメディアからインストールして使うものでした。これは販売/保有モデルそのものに他なりませんが、その後インターネットが普及するにつれ、クラウド上で提供されるサービスにとって代わられて行きました。今やクラウドソリューションでないパソコンの使い道など、少数派になっているのではないかと思います。

 それが販売/保有モデルでも、サービス提供モデルでも、所詮デジタルで動いているサイバーベースのビジネスについてはさほど大きな副次的効果はなかったかもしれません。でもそれが実需の世界に展開されてゆくと、モノの流れに根本的な変革が起きる可能性が出てくるのです。

 クルマを例にとって考えると判りやすいと思うのですが、カーオーナーは人によっては3年で乗り換え、別の人は10年以上も乗り続ける、みたいな消費行動をとります。オーナーシップによって廃車のタイミングも個々のケースで変わってくるという避けがたい宿命を負うことになります。でも、もしこれがサービス提供のシェアリングだったなら、何が起こるでしょうか?

 言ってみれば大手企業が使うリースパソコンと同じで、ある日一斉にモデルチェンジが可能になるわけです、しかも計画的に。それが起きると、クルマの提供というサービスの総コストは劇的に安くなることに加え、廃車となる車のリユース・リサイクルにも大きな価値がつくようになることが想定されます。なにせ、全く同じモデルで全く同じ車齢のクルマばかりを計画した台数だけ集めることができるのですから。

 この考え方は、対象が傘でも自転車でも「サービス提供型ビジネス」でさえあればたぶん有効です。シェアリングエコノミーの普及によって、そういう区切りでビジネスを提供するという取り組みが、すでにあちこちで始まっているわけです。

 最近、環境ビジネスではよく「サーキュラーエコノミー」というコトバが聞かれるようになりました。いわゆるリサイクルビジネスと、現象的には非常に近いのですが寄って立つ考え方が少し違っています。政策的に言って既存のリサイクルビジネスが目指してきたのは、最終的には「廃棄物の削減」だったのですが、サーキュラーエコノミーには「新たな資源の投入を減らすことで地球の持続可能性を高めたい」という高次の理念みたいなものがくっついています。

 環境ビジネスの側から言わせると、実はシェアリングエコノミーもまたサーキュラーエコノミーのバリエーションであると認識されているのですが、その理由は上で述べたように、オーナーシップが顧客に渡っていない分だけ、サプライヤー側が設備更新の自由を手にすることができるという点にあります。そうすることでリサイクルをしやすくし、再生資源のコストを下げて品質を上げることを可能にする、というものなのです。単にモノだけでなく、モノが提供する満足度を循環的に提供し続ける、そんなビジネスモデルを回す企業が出てくるような時代が、もうそこまでやってきているのかもしれません。

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