「西田さん、環境ビジネスを海外で展開するのはカンタンではありませんよ。」東南アジアで環境ビジネスに深く関わった方のコトバとして、コンサルタントの私の胸にはこのセリフが突き刺さっています。そもそも「日本では多くの場合、歴史的に地元でスクラップ事業を行ってきた会社が、近隣の声や環境啓発の高まりに応じて自治体が法的、財政的、政治的な介入を行った結果、たまたまリサイクル事業者という地位を築いたにすぎません。技術的な特殊性や大きな売りがあるわけでもなく、既得権益を分配されることに慣れきってきた。行政がそこまで面倒見てくれない途上国に出ていっても、そもそも技術的な特殊性があるわけでもなく、システムを構築した経験もない企業にできることはほとんどないのです。」というお話です。
他方で、世界には環境ビジネスの分野で国際的に活躍している会社も複数存在しています。これらの会社は何がどう違うというのでしょうか?今日はそのポイントをお話しましょう。私は、乗り越えなければならない壁が2つあると思っています。
1. 確実な収益モデルを作ること
2. 綿密な市場対策を講じること
まず「確実な収益モデル」についてですが、たとえ途上国といっても、環境対策のニーズは確実に存在しています。そこで収益を上げるには、①ニーズにきちんと対応すること、②他社が真似しにくい付加価値を提供すること、③事業活動に加えて、収益性を確保するための活動をしっかり行うこと、の3点がポイントです。
たとえば東南アジアでは、現在も経済成長が続き、インフラ投資へのニーズには依然として高いものがあります。そこで良質な資材を安価に提供できれば当然ですがビジネスチャンスは広がるわけです。バージン材を補完する再生材の活用にも十分な可能性があると言えます。そこで他社が真似できない再生材製造ノウハウを展開する、というのは理想的な取り組みで、リサイクルビジネス一般に言えることですが、この部分での差別性を「キラーコンテンツ」として提供できるかどうかに命運がかかってくると言えるでしょう。たとえ冒頭お話したような事例であっても、技術開発などによるキラーコンテンツを持つことができれば道は拓けるのです。
さらに、収益性を確保するための取り組みとして再生材活用のメリットを訴求するなど、アドボカシーと呼ばれる活動にも目配りする必要があります。たとえば再生材はバージン材に比べてCO2の発生量が極めて少ないというパターンが多いのですが、その点を訴求することでユーザーへのメリット感を売り込むことができます。最近よく聞くようになったESG投資などの観点から、どのような資材を使っているのかについてもユーザーの評価は多面的なものになってきています。
と、ここまでは「絵描き」にあたる事前準備の段階である程度整理することができるのですが、そのプロセスを確実なものにするためにはやはり綿密な市場対策が欠かせません。東南アジアで成功している会社の多くは、日本政府の公的支援を活用した市場調査や、関係するODA事業との協力、さらには信頼できる地元パートナー探しのための投資などに積極的な対応をしています。
海外展開を進める上で、実際に操業する段階での「エコシステム」までしっかりと作り上げたうえで実施して行く、支援してくれる日本政府に対するコミットメント、地元パートナーとの契約、更には自社内での位置づけなど、経営者として強い覚悟が求められる段階です。
「キラーコンテンツ」と「エコシステム」。この必要十分条件をしっかりと満たしたうえで、海外展開で成功するために求められるのは、何より経営者の意思決定と、それに基づくブレない事業展開なのです。当社では、このような対応を進める経営者を積極的にサポートしています。いくつもの成功事例から抽出されたノウハウをご提供することで、一つでも多くの事例を成功に導けたらと祈念しています。