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2019.06.18

国際リサイクルシステムとビジネスチャンス

昨年、中国が廃プラスチックの輸入を全面的に禁止する措置を取って以降の国際リサイクルシステムはその余波に揉まれ続けています。その中で改めて見えてきた景色があるので、今日はそのあたりについて書こうと思います。

1. 改めて判った縦割りの市場特性
日本は特にそうですが、自治体が取り扱う一般廃棄物(主に家庭や一部の事業所などから出て、公共の廃棄物処分施設に持ち込まれるもの)と民間事業者が取り扱う産業廃棄物で処理のフローが異なります。

廃プラスチックの場合、前者は主として容器包装リサイクル法に則って自らまたは指定法人やリサイクル事業者に委託してマテリアルやケミカルおよびサーマルリサイクルされています。

後者はマテリアルリサイクルの原料として市場で有価取引の対象となってきた経緯があるのですが、これまで買い手は主に中国の廃棄物処理業者でした。このため大量の廃プラスチックが世界各地から中国へと輸出されてきたのです。

先日、都内で行われたセミナーで専門家による報告があったのですが、中国政府による禁輸措置以降、国内でプラゴミの引き受け価格は3倍から、どうかすると10倍にも達している状況だそうです。10倍とは「事実上、引取をお断りします」という価格ですよね。

他方で自治体による(一般廃棄物ということになります)処分施設への受入について、受入価格自体はまだ大きく変動するまでには至っていないとのことで、これにはいくつかの原因があると考えられます。つまり、①一般廃棄物と産業廃棄物のフローが規制によって峻別されており、相互の影響があまり大きくない、②一般廃棄物の処理は法律に則り廃棄物の受入方法や処分量について計画があり、その数字がすぐに大きくは変動しない、③人口減少などによって一般廃棄物は全体的に減少傾向にあり、入札価格が高くなる基調とはいえない、等の原因によるものと思われます。

今、日本のプラゴミの1割は東京地区で出てくるものだそうですが、処理余力のある地方の焼却工場へ輸送できれば、より効率的な処理ができるかもしれないところ、輸送ドライバーの人手不足がネックになっていて、なかなかうまく対応できていない、という話もありました。

ニュースでは、各地の産廃置場が行き場を失った廃プラスチックで満杯状態、というような話も聞きますが、厳しく縦割りされた廃棄物のフローを見直すことが出来れば、物理的に本当に困る事態を招くことなく対応できるのかもしれません。

2.  規制で変わるビジネスモデル
 マクロで言って廃プラスチックは産廃分野が供給過多、一廃分野に余裕ありという状態なわけですから、経済原則的に言えば一廃分野に価格交渉力が生じるはずで、そうだとすると一廃分野の処理事業者にとっては稼ぎ時、になるはずの話です。他方で産廃事業者の立場に立てば、これまで中国が買い取ってくれた廃プラスチックの儲けがなくなり、一廃の処理施設に持ち込むためのコストがかかるとすれば、その分の負担をどうするかが頭痛のタネになるところだと思います。

 廃プラスチックは、実は焼却時のカロリー原単位が高く、ごみ発電をしている施設にとってはサーマルリサイクルのための大切な資源と言える側面を持ちます。ここで生じる儲けの可能性として、廃プラスチック1㎏あたりのカロリー貢献度を金額に換算できれば、産廃事業者から一廃処理施設への受け渡しモデルが構築できるのではないだろうか、という仮説が成り立ちます。

実際には廃棄物の受入条件が条例等で規制されている側面もあるので、そう簡単な話ではないと思いますが、この問題には保管場が満杯で苦しんでいる産廃事業者への対策という側面もあります。ですからたとえば地方議会などが音頭を取って新たな商流を開拓できれば、いわゆるグリーンファイナンスによって社会全体として最適な取り組み方法を編み出せる可能性は小さくないと思います。

諸外国と異なり、すでに製品段階から色のついていないPETボトルや剥がしやすいラベル、圧縮しやすい発泡スチロールなどが一般的となっている日本は、規制の枠組みを機動的に運用することでリサイクル比率を上げ、災い転じて福とするビジネスチャンスも創り出して行ける土壌にあるのです。

2019.06.05

5月のセミナーを開催しました

去る5月31日、今年3回目のセミナーを開催しました。フォローアップの申し込みをいただき、現在対応の準備中です。

2019.06.01

循環型社会の隙間

 イソップの「ウサギと亀」に出てくるウサギみたい。私は環境ビジネスのコンサルタントをしていて、日本の立ち位置をよくそんな風に感じることがあります。他国より圧倒的に先行する立場を得ながら、その後の展開に対する油断があったりしていつの間にか大きな商機を逃してしまう、みたいな展開が多いからです。かつて世界最先端を誇った太陽光発電の分野でも、今日日本勢はまるで振るわないのが実態です。

 いま、環境問題を議論する国際会議などでちょっとした流行コトバになっている感があるのが「サーキュラーエコノミー(Circular Economy)」です。直訳すれば循環経済ということになりますが、その意味するところは単に「廃棄物をリサイクルして原材料に使う」、というシンプルなものではなく、社会の環境負荷を低減させる様々な取り組みをも包含するもの、とされています。

広義の考え方ではライドシェアや民泊などのシェアエコノミーも含まれますし、単なるリサイクルやいわゆる”3R”と異なるのは、資源リサイクルに対応しやすいように製造業のほうも歩み寄る、という部分があることです。たとえば設計を変えて、より再生資源を使いやすくしたり、製品として廃棄される場合に分解しやすくしておく、などの対応がこれにあたります。

いささかややこしいのですが、日本には「循環型社会形成推進基本法」という法律がありまして、今から19年も前の平成12年に制定されたものなのですが、これに基づき5年ごとに「循環型社会形成推進基本計画」という計画が政府によってまとめられています。ただこの法律は若干立て付けが古く、製造業の役割を強く打ち出しているわけではありませんで、主に3Rの推進を進めようとするものです。中身的にも、たとえば焼却処分による熱回収がリサイクル(サーマルリサイクルと言います)に含まれる、といった具合です。

国際社会が議論しようとしているサーキュラーエコノミーは、基本法が目指すものと同名異質だと思うのは何も私だけではないと思います。ところが、すでに盤石な法整備が済んでいて、そのための計画が着々と推進されている現下にあって、いまさら法律を手直しする、などという話にはどうもならないらしいのです。確かに、字面を翻訳すれば日本はあたかも20年前からサーキュラーエコノミーを推進してきたようなことを言えなくもないのだろうと思いますが、シェアエコノミーの普及ぶりを見ればそこに大きな瑕疵があることも一目瞭然だろうと思うのです。

日本の法律や体制と、国際社会の求めるものとの間に隙間が存在する。この問題は技術を持つ日本企業にとっての課題であると同時に、ジャーナリストや行政官を含めたより広い範囲で共有されるべき要素を含んでいます。そういう部分の情報発信や意見交換についてもコンサルティングを通じてお手伝いさせていただいております。世界と歩調を合わせて循環型経済を推進するために、ぜひ一度当社のセミナーを受講ください。

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