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2020.02.11

基準認証でビジネスの勝負を決めろ!

 環境ビジネスの業界では最近、何かと基準認証の話が流行っています。つい最近はイギリスのNGOであるCDPが、世界の大企業を気候変動対策への対応度によって格付けしたリストを発表し、日本からは約40社がAランクに入ったことがちょっとしたニュースになりました。基準認証とはいったい何で、どういう働きをするのでしょうか?

 環境ビジネスに止まらず、何か世の中に良いことをしている人たちにアドバンテージを与えたいというような場合、基準認証は便利な道具になります。身近なところでは、運転免許がゴールドだと自動車保険が安くなる、といった例があります。環境に良いことをしている会社には、それだけ簡単な手続きで商売に参加出来たり、優先的に注文が入ったりするように仕向けられるわけです。

 基準認証には、①ISO14000のように自分から進んで取りに行くもの。おカネも時間もかかる、②ミシュランの☆のように黙っていてもつけてくれるもの。でも選ばれる側に意見を言う権利は基本的に存在しない、等がありますが、上で触れたCDP認証の場合は、会社が行っている気候変動対策について、NGOであるCDPから送られた質問票に回答するとその内容によって格付けがされるというものです。

格付けの結果はビジネスに直結する要素でもあるので、公正中立を守る意味でCDPは営利団体ではないNGOという体裁を取っています(実態は投資家向けの格付け機関だと言っておかしなところはないと思います)。これ以外にも、たとえば持続可能な森林保全に貢献するFSCなどは、基準を作る団体と認証機関を認証する団体が別個になっていたりします。そうすることで、基準認証の透明性を担保しようとしているのです。

世界では、環境保全への関心が高まるのとほぼ同時に基準認証へのニーズも高まってきています。理由は単純で、サプライチェーン管理にとても便利なツールだからです。東京オリンピックでも、調達規則の中に「認証を取っていること」と定められている部分が多いそうです。木材であればFSCやRSPO(持続可能な油椰子)認証、水産資源であればASCやMSCと呼ばれる認証が良く知られています。これらを取得することで、信頼できる納入事業者としてサプライチェーンに食い込める可能性が出てくるわけです。むろん、おカネも準備のための時間もかかりますが。

今回なぜ基準認証の話をするかと言うと実は今、世界がどんどん基準認証を求める方向へと動いているからです。EUでは、地球温暖化を巡る「EUタクソノミー」という基準を作って、CO2排出に貢献すると認めるための基準値を全ての産業に対して導入しようとしています。具体的には、炭素鋼1トンを作るとき、約300㎏くらいのCO2までなら排出しても良しとするが、それ以上排出する製鐵所は、たとえ環境に貢献する実績があったとしてもタクソノミー上は不合格とされてしまう、というようなものです。

電気炉は高炉に比べてCO2排出量が少ない、というのはだいぶホントらしく聞こえますが、だったら電気炉はすべて良いのか?という根源的な疑問に答えようとするのがタクソノミーの考え方です。仮に、鉄1トン作るために400㎏くらいCO2を排出する電気炉の製鐵所があったとすると、タクソノミー上は不合格となり、電気炉なのに環境への貢献は不十分、ということになってしまうのです。

EUは、このタクソノミーを全ての産業に当てはめる前提で準備を始めています。昨年までならスルーできるパターンが多かったと思いますが、今後特に海外市場への展開を志向する会社にとっては抜き差しならぬ事態へと進んで行くとも考えられます。もしもそのような動きが本格化するのなら、このコラムをお読みの方にはぜひそのチャンスをモノにしてもらいたいと思います。受験生ガンバレ、技術を持った日本企業も、この際だからガンバレー!。

2020.02.04

サーキュラーエコノミーが売上を向上させる仕組みとは

昨年くらいからたびたびメディアに取り上げられてきた実績はあるのですが、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」と言うコトバを聞いたことがある、と言う方は実はまだ多くないかもしれません。しかしながら昨今、特に環境問題への関心が高まるにつれて、今まで全く関係なかったような会社がいきなりサーキュラーエコノミーに取り組むという例があちこちで見られるようになりました。

 「循環経済って、リサイクルの事でしょ?」
コンサルタントをしていると、そんな質問に遭うことも少なくありません。皆さんがご存知のいわゆるリサイクルと、サーキュラーエコノミーとの間には、現象的に85%くらい共通な要素があるので、その認識もあながち間違いではないのですが、でもやっぱり違う。特に残りの15%くらいの要素が働くと、ボチボチ儲かるリサイクルビジネスより、圧倒的なボリュームと利益率で儲けることができるようになるのです。今日はその仕組みについて主なところを皆さんにだけお伝えします。

1. 閉じた循環はすべてが「お客さま」
サーキュラーエコノミーとリサイクルの最も大きな違いは、リサイクルが廃棄物から有価物を抽出して市場に出せるようにするところまででオシマイなのに比べて、サーキュラーエコノミーはユーザーと、そのまたユーザーとさらに最終ユーザーをつなぎ、「閉じた循環」を構築するところにあります。
つまり、再生材のユーザーはリサイクル事業者にとってのお客様ですが、そのまたユーザーはさらに次の段階のお客様であり、最終ユーザーまでの連環が確保されている中で、バトンリレーのように商売をつないで行くイメージなのです。この効用は、何と言っても資源効率を極限まで高めうるところにあります。
大量生産・大量消費モデルのように大生産拠点を高度な遠距離物流でつなぐというよりは、小型の分散型ネットワークの中で回してゆくイメージです。低炭素化の流れで考えれば、物流を極力軽くするようなネットワークデザインを考えるということにもつながります。

2. それなのに「規模の経済」が通じる
循環の輪は、あまり大きくすると輸送費が大変なことになります。分野にもよりますが、たとえばアフリカの廃棄物を日本に運んでリサイクルしようとしても輸送費がバカにならず、損益的にはメリットが生じない場合が多いです。が、それと同時にリサイクル技術を横展開するための投資余力がモノをいう部分も大きいのです。
たとえば最近流行のサブスクリプション制は、資金繰りに強みを持たない中小企業では、やりたくてもなかなかできないと言われています。多くの場合は、まず機械や箱モノを売り資金繰りに目途をつけないと次のステップへ進めないのですから仕方ありません。ところが一定の資本力がある会社にとっては、リサイクル単体でもランニングでしっかり儲かることが分かっているのなら、最初から設備提供のための大規模投資を実施することによって、ユーザーの一時負担を軽くするという選択肢が現実的なものになるのです。
初期投資に絡んでユーザーが負担に思うことは極力事業者が負担する、そうすることによってユーザー満足を高め、そのかわり粗利率の高い利用料金を設定しやすくなる、という構図です。たとえばNTTや東京ガス・大阪ガスが出資した新電力会社が太陽光発電システムの貸し出しサービスを開始しています。これまで、付けたくても設備費が高い太陽光発電は、個人ではなかなか導入しづらいものでした。それがレンタルによって設備を無償で借りられるとなると、ずいぶん導入しやすく感じられるのではないでしょうか。
借りた太陽光発電システムで発電した電気は自家消費し、余った分は単価的には安いかもしれませんが、新電力会社に買い取ってもらえるとしたら、「ウチでもつけてみようか」と思う人は少なくないのでは?でもそんなサービスを実現するためには、かなりの物量で太陽光発電システムを製造して在庫を持ち、注文に応じて取り付けられるような体制ができていないといけません。いずれも、大企業の資本力があってこそ可能だった話、ではないでしょうか。

3. 社会善は何より囲い込みの強い因子となる
サーキュラーエコノミーの閉じた連環に加盟すると、そのつながりは強固な関係によって囲い込まれることになります。共通の夢、共通の目標によって結ばれた同志みたいなものですから、なかなかブランドスイッチングが起きづらい関係になることが知られています。
最近NTT西日本のグループ会社が始めた生ごみによる肥料作りのプロジェクトも、その底流には食品ロス対策を一緒に目指そうとする社会善への取り組みがしっかりと存在しています。一般の個人やレストランなどは、事業者側が用意する生ごみ発酵機をレンタルで導入し、肥料作りを行います。できた肥料は事業者が引き取って肥料を使う農家へ配ります。
閉じた連環の中で、生ごみが加工されて有機肥料になり、その肥料が有機野菜を育てて、最終的には青果や加工食品になって戻ってくる。ユーザーは、一回の循環に1年以上かかるサイクルにプレーヤーとして参加するのですが、そうすると、このサービスに加盟してしまった会社や個人はかなり長期間にわたってユーザーでいてくれる可能性が高くなるわけです。

もうお分かりと思いますが、サーキュラーエコノミーには①閉じた連環を活用し、特に輸送面では低炭素化を追求できる、②初期投資の事業者側負担により長期の高収益モデルを構築できる、③社会善による強い囲い込み効果が期待できると言ったメリットがあり、いずれも企業収益に直結するパワフルなものなのです。
一見すると大企業向きのソリューションと見られがちですが、コア技術の開発や小規模連環の構築など、ベンチャー企業や中小企業に優位性のある部分も色濃く存在することから、「サーキュラーエコノミー」は大企業と中小ベンチャー企業がオープンイノベーションで協力するためのキーワードになるのです。
チャンスの女神は後ろ髪を持たないとよく言われますが、サーキュラーエコノミーの女神もまた、同じ髪形をしています。ゆめゆめ、機会を逃すことのないように・・・。

2020.01.28

未来を獲得するための投資

 「西田先生、ぜひ当社でも学生インターンを受け入れたいのですが。」最近、よくこんなご相談を受けるようになりました。聞いてみると、若年層の人材不足が深刻化していることに加え、循環経済を巡る世間の目に変化が出てきたと敏感に感じ取っている様子がよく分かります。

 他方で環境問題はまだまだ敷居が高いと言われています。ジャケットの襟に虹色の輪っかをつけていても、それが何を意味するのか知っている人はまだ少数にとどまるようです。昨年8月に朝日新聞が東京・神奈川で実施した調査では、国連が定めた「2030年のための持続可能な開発目標:SDGs」について聞いたことがある、と言う人でも全体の3割に満たないという結果が出ていますので、7割強の人はSDGsについて「聞いたこともない」という状態なのです。たとえば地球温暖化でどれだけ災害が発生しても、それは専門家や行政に任せるべき仕事、という考え方がまだ支配的なのかもしれません。

 でもここで丁寧に数字を見てゆくと、少し違った景色が見えてきます。たとえば、29歳以下の人だけに限れば認知度は3割を超えており、わずか半年の間に12ポイントも増えていることが分かります。もしもこのペースが続くとするなら、次回の調査で4割を超え、今年の夏には半数以上がSDGsを認知している、という状況になることもありえるのです。

 さらに興味深いのは、昨年8月の段階で「管理職」は44%がSDGsを認知していたという数字です。つまり、学生インターンに限って言えば取る方も、受ける方もかなりの確率でSDGsを知っているところから話をスタートできるということです。さきほど「世間の目に変化が出てきた」と言いましたが、これこそが大きなポイントなのです。

 意識の高い学生を、対応準備ができた管理職が受け入れる・・人材確保に向けたインターンシップが成功するための最低条件ですが、実はこれだけでは不十分なのです。もうお分かりと思いますが、世間の半数以上が同じことを考えて、同じことを実施するとしたなら、そこには何らの差別性もなくなるからです。無事にインターンシップを終え、内定を出したは良いが最後の最後で入社辞退の連絡が入る、というパターンに陥る危険性は全く排除されていないのです。

ここ最近、循環経済が見直されてきたとは言っても、いまだ5割を超える人が旧態依然たる見方で企業を評価している状態です。学生の父兄や祖父母の年代だと、環境ビジネスに良い印象を持っていない人もかなりいます。就職戦線そのものは売り手市場が続いており、引く手あまたの学生にとってはどれを選ぶか贅沢な悩みに浸る中で、循環経済に携わる企業をどう評価するかがポイントになってきます。

単刀直入に申し上げると、ここで絶対に必要なのは経営者による明示的なコミットメントなのです。企業規模に関わらず、経営者と新入社員候補という一対一の関係を踏まえて、他ならぬ経営者がしっかりと学生の思いを受け止め、自分の言葉でモノを言えるかどうかに尽きるのです。具体的には経営理念と長期ビジョンをその学生と共有できれば、それが他社との明確な違いをもたらします。仮に他社が同じことをやったとしても、他社の経営理念や将来ビジョンが御社と全く同じはずはないからです。そのために使うあなたの時間こそ、未来への投資だと思ってください。それが地方の学生だとしても、インターンシップ参加のための旅費や滞在費などは取るに足らない出費です。

意識の高い学生が入社したくなるような、一緒に30年後の将来を夢見て仕事ができるような、経営者としてのコミットメントをしっかりと磨いて学生に相対してください。経営者が端折らず努力することによってしか、会社の未来は拓けないのです。

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