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新着情報

2019.10.08

環境ビジネスと災害レジリエンスについて

 先日の台風15号は千葉県南部に甚大な被害をもたらしましたが、それによって発生した災害がれきの処理が大きな負荷になっていることが一部で報道されています。新聞報道によると、自治体の焼却工場はOB人材の応援も受けて、24時間操業によるフル稼働体制で災害がれきの処理を続け、周辺自治体の協力も得て災害がれきの処理に当たったそうです。

 環境省は2014年に全国の自治体に対して「災害廃棄物処理計画」作成を求めており、この計画が国の「廃棄物処理施設整備計画」に反映される仕組みを構築しています(災害廃棄物対策指針の位置づけ及び構成 https://www.env.go.jp/recycle/waste/disaster/guideline/ による)。

 通常、焼却工場など自治体が所管する一般廃棄物(家庭や事業所から排出される、いわゆる一般ごみ)処理施設については、想定されるごみの排出量を一日16時間程度の稼働で無理なく焼却できる容量で設計されています。大規模な自治体では、人口減少に加えて環境教育の充実などから実際の排出量が設計値を下回り、平時の操業について容量のゆとりが生じている場合もありますが、一旦災害が起きると発生するがれきの量は尋常ではありません。2016年の熊本地震では約310万トン、2018年の西日本豪雨では約180万トンの災害がれきが発生したと言われています。

 これらの災害がれきをどう処理するか、という問題ももちろんありますが、環境ビジネスの視点から言うと、災害レジリエンス(抵抗力)を強化してがれきの発生量を減らすことにこそビジネスチャンスがあるのではないかと思われます。

 最近、自宅近くに新築のアパートが出来たのですが、窓という窓にシャッターがついています。他方で中古の集合住宅にはガラス窓の保護が不十分な物件も少なくないのですが、窓ガラスにワイヤーが入ったサッシや、後付けできるタイプのシャッターなどの対策ビジネスにとっては商機であるということができるでしょう。同様に、エアコンの室外機や太陽光発電パネルのパワコンなどを水没から守るためのかさ上げ架台なども需要が高まるのではないかと思われます。

 そして何より千葉の経験を生かすのが「停電対策」です。緊急避難的な対策としては、自動車の12V電源を家庭用電源として使えるインバーターを備えておくことでしょう。小型の発電機があればそれに越したことはありませんが、家庭で太陽光発電をされている場合、バッテリーの備えがあるだけで夜間にも電気が使えるため、蓄積される生活ダメージは全く違ってくるのです。

 東日本大震災後には、家具の転倒を予防するためのつっかえ棒などがよく売れたことが思い出されます。まさにビジネスチャンスは正直です。今のところ気候変動による災害の深刻化が向こう数年以上は続くものと思われます。災い転じて福となせるよう、感応度を研ぎ澄ませておきたいものですね。

2019.10.01

人工肉とビジネスチャンス

 このコラムの読者にも、ごく最近の話として人工肉の話題に触れたことのある方が増えてきているかもしれません。実際にアメリカではBurger Kingがこの8月からImpossible Foodsという会社が売り出した人工のミートパテを使ったImpossible Whopperという商品を売り出してちょっとしたブームになっていますし、Beyond Meatというスタートアップが売り出したBeyond Burgerも大きな話題になっているのだそうです。

 環境ビジネスコンサルタントの私がいきなり人工肉ハンバーガーの話題を始めると、「ついに西田もネタ切れか?」と思われる向きがあるかもしれません。実際は全く違いまして、先ごろスウェーデンの女子高校生が切れ味鋭い演説で世界の耳目を集めた気候変動サミットでも注目された、温室効果ガス削減に関する大きな可能性の一つが食肉供給であることによるものです。

 世界で排出されている温室効果ガスのうち、およそ15%は畜産業によるものであるという統計は、特に日本ではあんまり関係ないと思われているかもしれません。でも、たとえばアメリカでは毎年240万頭もの牛が食肉加工用に出荷されているのだそうです。この牛が出すゲップが温暖化に及ぼす影響がバカにならないのです。そこで今注目されている技術が人工肉、すなわち植物を肉に似た素材へと加工する技術なのです。

 アメリカでは環境対策というよりむしろ健康志向の人を中心として売り上げが伸びているそうですが、仮に食糧生産の見直しで温室効果ガスの削減ができるとしたら、そこには一定の市場評価がついて回るのではないかということは申し上げられます。

 具体的には社会的インパクト投資が評価する基準、たとえばTCFD(The FSB Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の求める基準を満たす企業行動として評価されるものなので、マクドナルドやバーガーキングなどの大手は特に、投資家に対する意識から温室効果ガス削減につながる取り組みとして選好的に採用を増やすのではないか(あくまで「売れれば」という条件が付きますが)と思われるわけです。

 だとしたら、旨味の調整や味付けなど、日本企業が得意とする部分で市場開拓の可能性があるのではないでしょうか?なにせカニカマではほぼ本物、みたいな商品を作ってしまった国ですので、日本企業にとって「ほぼ牛肉」みたいな味付けを考えることは十八番ではないかと思うのです。

 現状、アメリカの人工肉は味の面で「それなりの」評価を得てはいるようですが、食べ始めに「本物の肉みたい」と思っても、食べ終わるころには「やっぱり違う」と言われる程度の差がまだ克服できずにいるようです。この隙間にこそ日本の技術が入れるチャンスがあるのではないか?私はそんな風にマーケットを見つめているのですが。

2019.09.24

サーキュラーエコノミーとビジネスチャンス

 このところ私は自己紹介のとき、「環境ビジネスコンサルタントです。最近はサーキュラーエコノミーに注目しています。」と言うようにしています。
そうすると、決まって
「サーキュラーエコノミーって、リサイクルの事でしょ?」
と問い返しをいただきます。

ここ2年ほど、さまざまな場面で似たような質問を頂いてまいりました。完全に間違っているとは言えませんし、現象的にはほぼ合っているので、「そうですけど、思想的な背景が少し違うんですよ。」とお応えしています。

そうならそれでいいじゃん、なんでわざわざカタカナを使うんだろう?なんだかややこしい奴だな、多分そんな風に思われているのではないかと思いつつも、これまでのリサイクルとは思想的にかなり違いのあるアプローチなので、その点に触れようとするとどうしても「サーキュラーエコノミー」という括りでお話をせざるを得ないのです。

その理由のうち、最大のものは「今までのリサイクルは、結局資源消費経済であるリニアエコノミーにとって、延命策の一つに過ぎない」というものです。主に地下から産出されるさまざまな鉱物資源が精製・加工されて投入される経済は、消費された資源が最終的には廃棄されるという一直線(リニア)な流れから形成されています。

どんな国でもこの経済を長く続けると、やがて廃棄物処理が社会の課題となることは構造的に明らかです。アメリカやオーストラリアのように広大な土地がある国であれば、他国に比べて長い時間的余裕を持つことができますが、それとて根本的な課題解決にはなっていないと言わざるを得ません。その中で、少しでも廃棄物処理の負荷を減らすための対策として振興されたのがリサイクル、そして3R(リデュース・リユース・リサイクル)という考え方だったわけです。日本では特に、「ごみの減容化による最終処分場の延命措置」とされてきました。

これに対してサーキュラーエコノミーとは、経済の仕組みそのものを資源投入→消費→廃棄という流れから、既存資源の循環活用へと変えて行こうとする取り組みの事で、根本的な思想に大きな違いがあるのです。

基本的には新たな地下資源の採掘をなるべく当てにしない、という考え方なので、使用済みの資源すなわち廃棄物に近い対象物からいかにしてバージン材に近い仕様を再生できるか、という技術的なソリューションの成否が第一のカギになります。

価格的に競争力を持てるようなら、この技術そのものを切り売りするビジネスモデルも成り立ちうるかもしれません。ただ、今回提案したいと考えているのはそのソリューションを核にした新しいビジネスの仕組みを考えてみませんか?ということなのです。

再生材は、バージン材に比べるとどうしても仕様面で劣後しがちなことに加えて、思ったほど安くないこと、供給が安定しづらいことなどから、細々とリサイクルされては限られた市場に再投入されていた、というのがこれまでの展開でした。

この状況について、もしも技術的なブレークスルーを実現できれば、バージン材に比べて環境負荷の少ない再生材を主原料として市場投入することができるのではないか、そうすることによって地球の持続可能性はぐっと高まるのではないか、というのが「サーキュラーエコノミー」の考え方なのです。

今仮に、価格的にも安く、安定的な供給量を満たしながら、バージン材とそん色ない仕様の再生材を提供できるようになったとしましょう。世の中には、その技術を投入しただけで新しく広がる市場もあるかもしれませんが、せっかくそんな再生材を提供できるのであれば、もう少し気合を入れたビジネスモデルを作るほうが良いですよね、というのが私の提案です。

具体的には、環境負荷が少ないこと、持続可能性に資するビジネスであること、そのような原材料の活用はSDGsに貢献するものであることなどを、協議会的な仕組みで取引先と共有できるようにすべし、というものです。

なにせ世の中は、リニアエコノミーを前提とした仕組みがしっかりと出来上がっているので、そうでもしないとサーキュラーエコノミーへの乗り換えが加速するとは限らないのです。またそうだとすると、サプライチェーンのあり方そのものから少し手を入れてゆく取り組みが必要になってくるだろう、ということですね。

バージン材に比べて価格面・品質面・供給面で競争力のある再生材を世に送り出す。チャレンジのためのハードルは低くありません。でも、たとえば品質面の基準値を少し下げた市場を相応の価格で確保できるなら間違いなく脈ありにできる話だろうと、私はそんなふうに考えているのですが。

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