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新着情報

2019.10.29

キーワードは世界観

 「西田さん、世界的企業の担当者だというのに、話題がすごく細かいことばかりだって驚かれたみたいですよ。」先日、日本の某大手企業で環境を担当されている方が国連の担当者と面会した時の様子を伝え聞く機会があり、やっぱりなあ・・と思わされたことがあったので、今日はその話を取り上げます。

 21世紀になって2度目の十年紀を終えようとする今日にあって、情報社会や国際経済から見ると、かつてないほど地球は小さくなってきています。日本を別として多くの国では依然として人口増が続き、限りある資源についての懸念が深刻化する流れは一向に変わりません。他方で気候変動や環境汚染の脅威は増すばかり・・という現状について、企業家そしてビジネスマンは何をどう考えれば良いのでしょうか?

 私は、「世界観」こそがキーワードだと思っています。特にここ数年、企業を取り巻く経営環境は急激に変化しており、その中で世界観が持つ意味合いが急激に高まっているという変化については押さえておく必要があるでしょう。以下に述べる理由により、その影響は大企業であればあるほど大きく、変化のスピードも速いと言えます。

 誤解を恐れずに言ってしまえばこれは2015年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国連の「責任投資原則」に署名したことに端を発しているというのが私の見方です。これ以降、GPIFの運用資金は社会善に向けたもの「にしか」回らないことになった、と捉えていただいて大枠で間違いありません。

 だからどうなの?と言われるかもしれませんが、GPIFが世界最大の機関投資家であることがもたらした金融界への影響はかつてないもので、今も時々刻々と変わり続けているのです。たとえば新規大型案件には必ず気候変動対策に関する情報開示が求められ、働き方改革への具体的なコミットメントは数字で報告することが不可欠になり、統合報告書がBSやPLと同じくらい重要な書類になってきている、というような。

金融が変われば、実業も変わらざるを得ないのです。世界的にはダボス会議やWBCSDなどの枠組みを通して大企業経営者の間に広まった考え方ですが、日本でも特に大企業の経営者レベルにおける問題意識の醸成が進み、矢継ぎ早に対策が講じられようとしています。他方で、長年それでやってきた実業界のストラクチャーは一朝一夕に変われるわけではありません。いまだに「SDGsって何だっけ?」というレベルの中堅幹部は珍しくもなんともないのです。

 ところが世界ではすでに、GPIFの先を行くスピードで、社会的課題に適合した新しいビジネスモデルを切り開こうとしている会社があるのです。世界的にはCoca-ColaやUnilever、スノーボードのBurtonなどが知られていますが、いずれもマイケル・ポーターが唱えたCSVなどをバックボーンに、社会善へのコミットメントを強く高く打ち出しています。

具体的な取組みの切り口は途上国への支援だったり、環境対策や社会貢献だったりと様々ですが、いずれも①社会善に対する自社の考え方が哲学として社員に共有されている、②収益を二の次にせず、しっかり儲ける仕組みが出来ている、③他者との協力について基本的にオープンである、などの特徴を備えています。

 冒頭で話に出た「大企業の担当者と国連の環境担当者との接点」みたいな話も、当の日本企業にとっておそらくは矢継ぎ早に講じられた施策の一端ではなかったかと言うのが私の洞察です。これまでの展開ではおそらく出会うことすらなかった方々が会っただけでも大きな前進、と言う見方があるかもしれません。ただ、あるいは準備ができたとは言い難い状況だったとすると、その結果として明らかになったのが「Coca-Colaとはあまりに違う日本企業の現実」で、国連担当者の失望を誘ったとするならば、却って逆効果だったのではないでしょうか。

 まずは、経営者が哲学として信ずる世界観を社員と共有するところから始めてください。そのうえで、実践を通じて哲学が社内に浸透するよう時間をかけることです。そして「結局は上滑りなスローガン」、で終わることのないように、最後までしっかりと目配りをすることです。最近よく聞くようになったSDGs(国連の「持続可能な開発目標」)を指標として取り上げるのは悪くないのですが、共通言語として社会に行き渡っている分だけ「やってるふり」と批判されることのないよう、くれぐれも覚悟を決めて実施してください。

 企業の評価は世界観で決まる、もしかするとそんな時代がもうすぐそばまでやってきているのかもしれません。

2019.10.22

環境ビジネスの海外展開を成功させるための必要十分条件とは

「西田さん、環境ビジネスを海外で展開するのはカンタンではありませんよ。」東南アジアで環境ビジネスに深く関わった方のコトバとして、コンサルタントの私の胸にはこのセリフが突き刺さっています。そもそも「日本では多くの場合、歴史的に地元でスクラップ事業を行ってきた会社が、近隣の声や環境啓発の高まりに応じて自治体が法的、財政的、政治的な介入を行った結果、たまたまリサイクル事業者という地位を築いたにすぎません。技術的な特殊性や大きな売りがあるわけでもなく、既得権益を分配されることに慣れきってきた。行政がそこまで面倒見てくれない途上国に出ていっても、そもそも技術的な特殊性があるわけでもなく、システムを構築した経験もない企業にできることはほとんどないのです。」というお話です。

 他方で、世界には環境ビジネスの分野で国際的に活躍している会社も複数存在しています。これらの会社は何がどう違うというのでしょうか?今日はそのポイントをお話しましょう。私は、乗り越えなければならない壁が2つあると思っています。

1. 確実な収益モデルを作ること
2. 綿密な市場対策を講じること

 まず「確実な収益モデル」についてですが、たとえ途上国といっても、環境対策のニーズは確実に存在しています。そこで収益を上げるには、①ニーズにきちんと対応すること、②他社が真似しにくい付加価値を提供すること、③事業活動に加えて、収益性を確保するための活動をしっかり行うこと、の3点がポイントです。

 たとえば東南アジアでは、現在も経済成長が続き、インフラ投資へのニーズには依然として高いものがあります。そこで良質な資材を安価に提供できれば当然ですがビジネスチャンスは広がるわけです。バージン材を補完する再生材の活用にも十分な可能性があると言えます。そこで他社が真似できない再生材製造ノウハウを展開する、というのは理想的な取り組みで、リサイクルビジネス一般に言えることですが、この部分での差別性を「キラーコンテンツ」として提供できるかどうかに命運がかかってくると言えるでしょう。たとえ冒頭お話したような事例であっても、技術開発などによるキラーコンテンツを持つことができれば道は拓けるのです。

 さらに、収益性を確保するための取り組みとして再生材活用のメリットを訴求するなど、アドボカシーと呼ばれる活動にも目配りする必要があります。たとえば再生材はバージン材に比べてCO2の発生量が極めて少ないというパターンが多いのですが、その点を訴求することでユーザーへのメリット感を売り込むことができます。最近よく聞くようになったESG投資などの観点から、どのような資材を使っているのかについてもユーザーの評価は多面的なものになってきています。

 と、ここまでは「絵描き」にあたる事前準備の段階である程度整理することができるのですが、そのプロセスを確実なものにするためにはやはり綿密な市場対策が欠かせません。東南アジアで成功している会社の多くは、日本政府の公的支援を活用した市場調査や、関係するODA事業との協力、さらには信頼できる地元パートナー探しのための投資などに積極的な対応をしています。

 海外展開を進める上で、実際に操業する段階での「エコシステム」までしっかりと作り上げたうえで実施して行く、支援してくれる日本政府に対するコミットメント、地元パートナーとの契約、更には自社内での位置づけなど、経営者として強い覚悟が求められる段階です。

 「キラーコンテンツ」と「エコシステム」。この必要十分条件をしっかりと満たしたうえで、海外展開で成功するために求められるのは、何より経営者の意思決定と、それに基づくブレない事業展開なのです。当社では、このような対応を進める経営者を積極的にサポートしています。いくつもの成功事例から抽出されたノウハウをご提供することで、一つでも多くの事例を成功に導けたらと祈念しています。

2019.10.15

循環経済とサーキュラーエコノミーの違いとは

 このところ、環境ビジネス業界ではサーキュラーエコノミーと言うカタカナの単語をよく耳にします。使い終わった品物でも、リサイクルしたり修理したりして、なるべく廃棄しないようにする、みたいな処し方であるという理解に間違いはないのですが、だとすると敢えてカタカナ表記されるのは何故なのでしょうか?

 よく、リデュース・リユース・リサイクル、あるいは3Rというキャッチフレーズで語られてきたのが循環型社会、あるいは循環経済というコンセプトです。日本はもう20年近く、国を挙げてこの取り組みを続けて来たので、廃棄物削減への取り組みは法律から処理施設、初頭教育、社会規範そして業界構造に至るまで、社会の隅々まできめ細かく組み込まれた国になりました。定量的に計測したことはないのですが、3Rの普及率みたいなものを調査してみれば世界でもかなり上位に入ることは間違いないだろうと思います。

 この取り組みは、そもそも各地の埋め立て処分場が一杯になってきて、少しでも延命させなくてはならないという背景から始まったところがあり、その意味では基本的に資源投入と廃棄を大前提とした経済構造に基づくものでした。これはこれで成果を挙げ、日本政府も「日本の取り組みは成功した」と自認しています。

 これに対して、サーキュラーエコノミー(カタカナ)の思想的な前提はだいぶ異なっていまして、そもそも化石燃料をはじめとする地下資源の収奪と投入が持続可能性を損なっている、みたいなやや過激ともいえる考え方がその基礎になっているという違いがあります。

今仮に、一切の採掘を止めて社会にある資源のみを使って生き延びるためには、現有資源を再循環させて使ってゆくしかないだろう、でもそうすればCO2排出も、環境汚染もこれ以上増えることはない。サーキュラーエコノミーの発想の原点は、実はそんなところにあったりするのです。

この考え方は2015年にEUが支持したことから広まったという経緯があり、これまで日本が取り組んできた循環型社会や循環経済とは「似て非なるもの」なのです 。

(参考:https://www.researchgate.net/publication/319403544_The_Theoretical_Background_of_Circular_Economy_and_the_Importance_of_it’s_Application_at_Renewable_Energy_Systems_The_Theoretical_Background_of_Circular_Economy_and_the_Importance_of_it’s_Application_ )

 ではなぜいま日本でサーキュラーエコノミー(カタカナ)なのか?という疑問が湧いてきますね。そこには資源循環と気候変動対策の切っても切れない関係があり、すでに成果が出てしまった3Rを細々と続けているだけでは何もしていないのと同じ、との批判を免れないほどに切羽詰まった状況がある、と言わざるを得ません。

 先日の台風15号、直近の19号による被害でも明らかなように、気候変動対策を本気で推し進めないことには、地球の持続可能性がかなり危機的な状況にあるのは明らかなのですが、だとすると資源循環プロセスにも聖域はない、とする考え方の方が勢いを増しているのが世界の現状なわけです。

 ソロバンが合わないから、法律がそうなっていないから、前例がないから。これらの理由でこれまで見送られてきた資源循環も、改めて見直されようとしています。もしもそこにビジネスチャンスがあるのだとしたら、今こそ先行的に取り組むべきタイミングではないのか?コンサルタントとして私はいつもそんな風に考えているのです。

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