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2020.01.07

メルカリと環境とビジネスチャンス

 皆さま、明けましておめでとうございます。2020年も本コラムをどうぞよろしくお願いします。21世紀もいよいよ20年目、その1/5を終える年になりました。先日のCOP25でも見られたように世界の環境ビジネスにとって、これまでの10年は物事の方向性を決め、その実現へ向けたルール作りを進めてきた時代だったと思います。

ルールの細部については残念ながら若干積み残された部分はありますが、大まかに言って次の10年は実績を(しかもなるべく早く)積み上げることが期待される時期になるはずです。

ビジネス的には、SDGsやサーキュラーエコノミーなど、これまで言われてきた新しい考え方を先取りして大きく伸びる会社がある反面で、石炭やプラスチックを巡る既存の枠組みに絡めとられて勢いを失う会社も出てくると思います。中には会社の存続すらおぼつかなくなる事例も出てくるかもしれません。

そういった変化を先取りするイメージの話になりますが、今最も勢いのある環境ビジネスは「メルカリ」であると説明すると、驚かれる向きがあるかもしれません。でも同社のウェブサイトには、しっかりとサスティナビリティに関する情報が開示されています。ただ、そんな部分があってもなくても、メルカリのビジネスモデルは先発の競合他社に比べて成約率や買取り価格の高さで確実に勝っており、市場シェア的には明らかに勝ち組なのです。

逆に言うと、今の時代はたとえ環境面で強く意識する理念があったとしても、メルカリのようにまずはビジネス面の成功を志向するという順序付けがなされるべきである、というふうにも読めるのだろうと思います。もう少し社会の風向きが変わってくるまでは、成功の前に環境を語るとそこで不要なレッテル貼りをされてしまわないとも限りません。やはりあくまで消費者にはメリットで選んでもらい、そのサービスが実は環境にも良かったという流れが理想なのだろうと思います。

まずは正当にビジネスの価値で評価を受け、しかる後に環境面でも万全の対応が取れている、と言い切れるような準備をしてビジネスを始めること。今後はその変化がさらに加速されると思いますが、2020年にスタートする新しいビジネスのオーナーには、さしあたりここまでの準備をして臨むことこそが成功のカギであると申し上げます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2019.12.24

最初から決めておくメリット エコデザイン

 循環経済を巡る重要なコンセプトの一つに「エコデザイン」という考え方があります。製品のデザイン段階から、廃棄するときのことを考えておこうという取り組みです。解体時に部品を外しやすくしておく、リサイクルしやすい素材を使う、完全廃棄される部分を極力少なくする、等々の工夫があります。

 他方で消費財はどうしても消費者の注意を惹くような奇抜さや洗練されたデザインを目指してしまいがちです。結果として解体しにくかったり、廃棄される比率の高い製品になることも珍しくありません。そのような矛盾を解決するにはどうすれば良いのでしょうか?

 一つのアイディアは、製品設計段階から廃棄に関する意見を取り入れるというやり方で、設計時の打ち合わせに廃棄物処理を担当する人たちに入ってもらうというような取り組みが挙げられます。最近特に「動静脈連携」などという言われ方をしているようですが、もしもこの取り組みが上手く行くなら、さほどの苦労なくエコデザインは広まってゆくことでしょう。

 ところが残念ながら世の中はそこまでカンタンにはできておりませんで、特にメーカー側から「総論消極的賛成、各論絶対反対」みたいな反応が出ることも珍しくありません。考えてみればそれはその通りで、「消費者ニーズに応えることでこそ売上が上がる」という考え方を長いこと拠り所としてきたスタンスは、一朝一夕では変わりません。

 そこで一つの提案として、動静脈連携の輪に消費者代表にも入ってもらうという対応を取ることを検討いただきたいのです。いわば動静脈消費者連携、みたいな設計への取り組みで、製品ライフサイクルに関与する人たちのすべてに参加してもらうことによってより使いやすく循環経済に優しい製品にするための知恵が生まれやすくなると考えられるからです。

 廃棄物となった製品の先行きについては、修理による再利用、部品活用によるリビルド、解体とリサイクルなどがあります。それぞれどのような運命をたどるのか、そしてトータルで最終廃棄率をどこまで減らせるのか、すべての関係者を交えた中でオープンな議論ができることによって循環経済に資するデザインが生まれてくることにつながるのです。

 時代は今、まさに循環経済志向を強めつつあります。もし御社が今取り組まないとするなら、いつ取り組むのですか?

2019.12.17

尖ったニーズに商機あり

 最近、街行くサラリーマンの胸に虹色の輪っかを見かけることが多くなりました。国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)のシンボルマークだそうですが、それに相前後してこれまでよりも環境問題に関する話題を耳にする機会が増えたような気がしませんか?

 どうもそんな気がする、と思った方の感覚は多分当たっていて、SDGsが世の中に出てきたのが2015年の秋なのですが、金融の世界においても年金積立金管理運用独立行政法人が「責任投資原則」に署名したのが同じ年の10月なのです。これにより大企業に対する投資家の要求において、環境保全への取り組みが今までよりも強く打ち出されるようになりました。

 ことは日本だけに止まらず世界に目を向けると、パリ協定が同じ2015年に成立していますし、G20による金融安定化理事会が気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を通じて企業行動の可視化を具体的な指針とともに示したのが2016年です。世の中の動きが本格化したのがちょうどそのくらいのタイミングなのですが、世界の大企業も一斉に対応を本格化させたのがちょうどこのあたりだと言えるでしょう。

 それから4年が過ぎ、今や世界の大企業はその調達行動を大幅に見直しつつあるというのが2019年末の状況です。繊維業界では、H&MやZaraなどがリサイクル繊維の供給元を探し、大手飲料メーカーでもコカ・コーラやペプシコはリサイクル材でできたPETボトルの採用を真剣に検討しています。これらに共通する購買の考え方は「多少高くても品質の良い『リサイクル材』の安定供給を受けたい」というものです。

 もともと飲料向けのPETボトルや衣料品に使われる繊維などは、製品の原価構造の中で占める比率が低く、コストファクターとして決定的なものではないことに加え、消費者が製品を評価すること以上に投資家が企業を評価する場合の判断材料になりやすいという特質があるのです。

 環境関連のニュースを見ていると、海洋プラスチック問題はなんだかとても深刻で、人類の知恵をもってしても抜本的な解決は難しいのではないか、と思わされるような内容ばかりです。このニュースを見ているのは消費者だけではありません。プラスチックを使っているすべての企業とその株主、さらにはアナリストもしっかりとニュースを見ています。

 企業経営者としては、このような社会的課題について何らかの具体的な対応を取ることが求められています。欧米の場合、対応を怠ると経営者の資質を問われて解任されることすらありえる状況です。

 他方で消費財の提供というビジネス本流の部分で手を抜くわけには行かないので、彼らは中途半端な妥協はしません。納得感のある対策を取り、同時に収益を上げ、株価を押し上げるような施策を取り続けなくてはいけないのです。ではどうするか?

 キーワードはまさに「高くても、品質の良いリサイクル材」です。ターゲットは米欧の大手企業で消費財を販売しているようなところが良いでしょう。異物の混じった低品質のリサイクル材はそもそも最初から選択肢に入らないので、中国やアジアのリサイクル業者が参入してくるにはまだ時間的な猶予がありそうです。

 こういった、「高くて品質の良いもの」を作るのは日本企業が十八番とするところです。繊維やプラスチックのみならず、たとえば紙でもリサイクル品で品質の良いものは引く手あまたになる状況です。狙うべきは各業界の一流ブランドです。化粧品やバッグ、靴などの包装やどうかすると素材として、「高くても品質の良いリサイクル材」は間違いなく売れ筋になるコンセプトです。2020年、オリンピックに向けた新商品開発の流れにも明らかにこの新しい潮流は影響を及ぼしています。

 もしもこの流れが一時のブームで終わらないなら、やがて中級品以下のリサイクル品にも活用の可能性が出てくることでしょう。クライアントが「100%リサイクル材」の表示をつけられるかどうかに勝負がかかっているとするならば、ベンダーとしてそれに応えるのが使命です。ぜひこの商機をつかんで明日への踏み台としてください。動くなら今しかないのです。

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