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2019.12.17

尖ったニーズに商機あり

 最近、街行くサラリーマンの胸に虹色の輪っかを見かけることが多くなりました。国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)のシンボルマークだそうですが、それに相前後してこれまでよりも環境問題に関する話題を耳にする機会が増えたような気がしませんか?

 どうもそんな気がする、と思った方の感覚は多分当たっていて、SDGsが世の中に出てきたのが2015年の秋なのですが、金融の世界においても年金積立金管理運用独立行政法人が「責任投資原則」に署名したのが同じ年の10月なのです。これにより大企業に対する投資家の要求において、環境保全への取り組みが今までよりも強く打ち出されるようになりました。

 ことは日本だけに止まらず世界に目を向けると、パリ協定が同じ2015年に成立していますし、G20による金融安定化理事会が気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を通じて企業行動の可視化を具体的な指針とともに示したのが2016年です。世の中の動きが本格化したのがちょうどそのくらいのタイミングなのですが、世界の大企業も一斉に対応を本格化させたのがちょうどこのあたりだと言えるでしょう。

 それから4年が過ぎ、今や世界の大企業はその調達行動を大幅に見直しつつあるというのが2019年末の状況です。繊維業界では、H&MやZaraなどがリサイクル繊維の供給元を探し、大手飲料メーカーでもコカ・コーラやペプシコはリサイクル材でできたPETボトルの採用を真剣に検討しています。これらに共通する購買の考え方は「多少高くても品質の良い『リサイクル材』の安定供給を受けたい」というものです。

 もともと飲料向けのPETボトルや衣料品に使われる繊維などは、製品の原価構造の中で占める比率が低く、コストファクターとして決定的なものではないことに加え、消費者が製品を評価すること以上に投資家が企業を評価する場合の判断材料になりやすいという特質があるのです。

 環境関連のニュースを見ていると、海洋プラスチック問題はなんだかとても深刻で、人類の知恵をもってしても抜本的な解決は難しいのではないか、と思わされるような内容ばかりです。このニュースを見ているのは消費者だけではありません。プラスチックを使っているすべての企業とその株主、さらにはアナリストもしっかりとニュースを見ています。

 企業経営者としては、このような社会的課題について何らかの具体的な対応を取ることが求められています。欧米の場合、対応を怠ると経営者の資質を問われて解任されることすらありえる状況です。

 他方で消費財の提供というビジネス本流の部分で手を抜くわけには行かないので、彼らは中途半端な妥協はしません。納得感のある対策を取り、同時に収益を上げ、株価を押し上げるような施策を取り続けなくてはいけないのです。ではどうするか?

 キーワードはまさに「高くても、品質の良いリサイクル材」です。ターゲットは米欧の大手企業で消費財を販売しているようなところが良いでしょう。異物の混じった低品質のリサイクル材はそもそも最初から選択肢に入らないので、中国やアジアのリサイクル業者が参入してくるにはまだ時間的な猶予がありそうです。

 こういった、「高くて品質の良いもの」を作るのは日本企業が十八番とするところです。繊維やプラスチックのみならず、たとえば紙でもリサイクル品で品質の良いものは引く手あまたになる状況です。狙うべきは各業界の一流ブランドです。化粧品やバッグ、靴などの包装やどうかすると素材として、「高くても品質の良いリサイクル材」は間違いなく売れ筋になるコンセプトです。2020年、オリンピックに向けた新商品開発の流れにも明らかにこの新しい潮流は影響を及ぼしています。

 もしもこの流れが一時のブームで終わらないなら、やがて中級品以下のリサイクル品にも活用の可能性が出てくることでしょう。クライアントが「100%リサイクル材」の表示をつけられるかどうかに勝負がかかっているとするならば、ベンダーとしてそれに応えるのが使命です。ぜひこの商機をつかんで明日への踏み台としてください。動くなら今しかないのです。

2019.12.10

パリ協定に見る、環境ビジネスで儲けるためのカギとは

 先週から今週にかけてスペインのマドリッドで開かれているCOP25という地球環境に関する国際会議は、報道各社が取り上げない日はない注目のされ方ですが、残念ながら日本のメディアのレポートは、ほとんどが尻切れトンボになっているため、多くの方はニュースだけ見ていても何が何だかさっぱり分からないと思います。ましてや、そこに儲けのネタが転がっていることに気づく方はまずいらっしゃいません。

 特にテレビニュースは酷いもので、如何に短時間の映像で視聴者の耳目を集めるか?みたいな切り口でしか報道しないので、会議の本筋はおろかビジネスとの関係性など、くみ取りたくてもくみ取れない程度の情報しか流しません。やれ日本が最も温暖化の被害を受けた国とされたとか、日本の大臣が石炭火力を選択肢に残すと言ったら批判されたとか、日本が関わった情報の切れっ端ばかりです。

はっきり言ってこんなニュースはどうでもよく、注目すべきはたとえば世界が本格的に再生可能エネルギーへと舵を切ったこと、そしてその中で大規模蓄電池の開発が次の技術的な課題であることが明らかになったことであろうと思います。この部分には、潜在的に使えるかもしれない技術を持っている日本企業がおそらく10や20では効かないくらいのオーダーで存在するはずです。

気候変動への「適応」と言う考え方も、もっと注目されて良い視点です。暖まってしまったものは仕方ないので、暖かくなった状態を前提にどうしたらよいか考えよう、という取り組みです。実はここにもビジネスのネタが沢山隠れているのです。ところが会議では、適応は途上国向けの課題だということで日本の報道各社がこのニュースを劣位においてしまいがちなので、日本にいる私たちの目に入ることはほとんどないのです。

でもなぜ私がこんなことをすらすら書けるのかというと、環境屋の世界ではこれらの話題は超の字がつくくらい「あったりまえ」の話だからです。コンサルタントとして、確かに横文字メディアは追いかけていますし、最新の動きは押さえるようにしているのですが、そんな努力をしても世間の環境屋と比べたとき、知識面でさほど大きな違いをもたらしてくれるわけではありません。克服すべき課題は他にあるのです。それは社内の段差、に他なりません。

日本では、環境事業を手掛けるほとんどの大企業がそうですが、ある程度の中堅企業でも、環境分野の仕事は事業子会社を作ってそこにやらせている、と言う例が圧倒的多数です。つまり、戦略は本社や持株会社が決め、専門の事業子会社がその戦略に従って、主に国内で事業を展開する、という決まり事になっているケースが多く、意思決定役となる本社や持株会社は必ずしも環境の専門家ではないのです。

そこに生じる情報の段差こそが、COP25でザクザクと掘り出されている宝の山から日本企業を遠ざけているのです。そんな会社のトップが言うのは、環境を手掛ける事業子会社には専門家が居て、彼らの知見に期待している、という決まり文句です。では聞きますが、その専門家から一度でも世界の動きを目に入れた提案が上がってきたことがありますか?

事業子会社と本社の間で、戦略を巡る熱い議論が戦わされているという事例が、たとえ少数でも存在しているならば、世界の環境ビジネス市場で日本企業はもっと目立っているはずです。それが全くそうでないという事実こそが、段差の存在を雄弁に物語っているのです。

勘の良い方はもうお分かりかもしれませんが、事業子会社には「経営責任がない」のです。つまり「決められたことをする」のが彼らの仕事100%であって、経営責任は本社や持ち株会社の専売特許だという事実が、事業子会社の専門家をして世界のニュースに対する感性を失わせてしまっているのです。そういうマインドでマドリッドに出張したところで、儲けのチャンスは決して目に入ってくることはないでしょう。

ではどうすれば良いのか?これには二つの解決策があります。一つは経営側(本社や持ち株会社)が自分たちと同じ目線に環境ビジネスの分かるアドバイザーを置くことです。今一つは事業子会社に戦略立案権を付与する、もっと言うと独立させる、という方法です。財務的に独立は難しい、何とか今の体制でビジネスチャンスをつかみたい、と言う経営者にお勧めなのは前者の対策を取ることです。

COP25が終われば、気候変動をめぐる各種施策の動きも更に加速されます。その中にあって「環境は難しいから」と言って後回しにしていると、儲けのチャンスはすぐに飛び去って行ってしまうのです。チャンスの女神に後ろ髪がないことを、この機会にもう一度思い出してください。タイミングを失わずに行動した者にだけ、女神は振り向くのだということも

2019.12.03

儲かるバリューチェーンはこう作れ!環境ビジネス向けプラットフォーム形成の勧め

 このコラムを読んでいただいている方にはなじみ深い話かもしれませんが、環境ビジネスやサーキュラーエコノミーなどで世の中に新しい価値を提供しようとするときに、決まって遭遇するビジネス上の障壁があります。それは単純に「売れない」ということです。この絶望的な課題に、私たちはどう対応すれば良いのでしょうか?

このとき多くの場合は既存の商品やサービスのあるところに環境に良いことを売りにして新規参入を図っているわけですが、たとえどれだけ強いセールスポイントがあっても既存商品が占拠している市場をそのまま奪い取れるかと言われると、残念ながら環境に良いという触れ込みだけでは必ずしも十分ではない、というのが偽らざるところなのです。

ではどうすれば良いのか?答えは単純で、「バリューチェーンを自ら作り上げる」という努力を並行的に行うこと、これだけなのです。では具体的にどうすれば良いのか、について考えて行きたいと思います。

今仮に、品質はまあまあ、価格は安いが安定供給がネック、という再生材があったとします。サーキュラーエコノミーの中核を成す原料リサイクル市場ではごく一般的な話です。日本には石油化学産業(プラスチック系)や非鉄金属精錬(金属系)などの基礎産業が揃っているため、バージン材の供給が大量かつ安定的になされています。再生材のメリットはコストの安さだったりするのですが、現実的にはコストが安い原材料を望むユーザーの多くが量的にも大きなロットを安定供給してほしいニーズを持っているケースが多いです。結局安定供給がネックとなり、せっかくの再生材ビジネスがなかなか伸びないことにつながってしまいます。

このようなビジネス上の課題についてこれまで取り組まれてきたのは、原材料にあたる廃棄物の収集運搬事業者をネットワーク化するサプライチェーンの整備、つまり調達面での努力でした。協力会社の組織化や、行政との対話を通じた支援策の確保など、どちらかというと上流部分に焦点を当てた取組が中心でした。

しかし昨今、世の中は「良いことを歓迎する」考え方に目を向けだしています。現象的には行政や大手企業を中心としたSDGsへの取り組みが象徴的なものです。これを活用しない手はありません。つまり良いことをしたい顧客を組織化してしまう、という取り組みです。できれば「顧客の顧客」まで取り込んで、バリューチェーン全体を一つのプラットフォーム上に囲い込んでしまうというものです。素材提供を問うのですから、まずは部品メーカー、そして機械メーカー、機械ユーザーまでをも視野に入れましょう。そこで何を問うかと言うと。

製造工程でCO2を大量に排出するバージン材は、安価に大量供給してくれる反面で気候変動に負の影響を及ぼしているので、SDGsを推進したい大企業にとっては歓迎せざる側面を持ちます。昨今特に金融界からESG投資に関わるコンプライアンスの強化を求められる中で、大企業各社は具体策への対応が急務となっているのです。

旗印は分かりやすいものであれば「SDGs達成のために」でも、「CO2削減のために」でも構いません。再生材活用協議会みたいな建付けで、まずは情報交換会や勉強会から始めるのが良いでしょう。そこではこれら政策課題について、協議会を通じて御社が何をしたいのか、その考えをメンバー各社としっかり共有してください。しかる後に実際の再生材利活用に向けたユーザーニーズの把握と対応、更には商談拡大へとつなげてゆくのです。

日本経済は長らくバージン材メーカー主導で動いてきた歴史があり、これまで再生材メーカー側が音頭を取ってプラットフォーム形成を進めるという事例はあまり多くありませんでした。その意味で、どこの業界でもバージン材メーカーによるバリューチェーン整備は進んでおり、対抗的に身構えれば巨人を相手に戦うことになります。社会善への取り組みを前面に出すことで対決色を緩和し、さらには共存共栄への道をも拓くことができるのです。

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