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コラム

2019.05.22

ESG金融をご存知ですか?

昨今の日本社会において、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)に対する認知度が高まってきたのは心強いことです。さまざまな立場の人たちが、地球の未来を考えるうえでSDGsを共通言語として一緒に議論を進めて行けることほど、国連が果たした役割の中で将来の可能性を感じさせるものはなかったと感じています。

今、国際社会ではSDGsのみならず様々な切り口で社会善への積極的な取り組みを可視化し、評価しようという動きが強まっています。金融の世界ではEnvironment: 環境、Society: 社会、そしてGovernance: 企業統治をその評価軸としたうえで、非財務情報をも併せて投融資の判断基準とする考え方が導入されつつありまして、3つの評価軸の頭文字を取ってESG金融と呼ばれています。

すなわち、経営者は①環境に良いことをどのように導入・実践しているか?②社会に良いことをどのように導入・実践しているか?そして③自身の企業統治をどのように可視化し、持続可能な経営を実現しているか?という点で評価される、ということなのです。

この中で、言ってみればEとSは将来へのコミットメントであり目標であるのに対して、Gは現在進行形であり半ば実績であるという違いがありますが、いずれも社業が社会善への貢献をどのように果たしつつあるか、また果たしているかを評価するために使われつつあります。

欧米では株主による投資を通じた関係情報の可視化が進んでおり、「ESG投資」と呼ばれていますが、日本では企業向けの資金調達手段が金融機関による融資が中心であることもあって、独自の取り組みがなされつつあり、「ESG融資」と呼ばれています。

令和元年はその実践がスタートする年にあたるのですが、今や政府の後押しを受けた各金融機関、なかんずく地方銀行が「地域循環共生圏」に資する働きをしている地方の企業を見出し、融資を通じた支援を円滑に進めようとする動きが出始めています。

具体的には、エネルギーの地産地消、ごみの減量と循環型経済の促進、産業廃棄物の適正処理、再生可能エネルギーの導入と活用などが挙げられますが、このような環境ど真ん中の事業でなくても、社会的弱者への支援や、経営状況をガラス張りにして可視化する取り組みなども評価される流れにあります。

その中で、特にSDGsを標榜し実践することは、国際社会が共同で目指している目標への直接的なアプローチになるということもあって社会的な訴求性の高い取り組みとして評価されるが、その反面で実態が伴っていないと「カンバンを借りているだけ」との批判を受けるケースも出てくるのではないかと思われます。

金融機関もみな横一線で取り組みを始めたところなので、むしろ企業側が具体的な取り組み事案を提供することでイニシャチブを取れるチャンスです。社会善の実現を通じて明日の地球を作ってゆくための取り組みを、あなたの企業がリードするという心意気でESG金融への対応を進めてください。今こそ、そのチャンスなのですから。

2019.05.14

心がときめく「環境の魔法」とは

今や世界にその名を知られる片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんですが、その著書「人生がときめく片付けの魔法」で彼女が世界に発信したのは、持ち主の「心の持ちよう」が全てを変える、という独自性の高い考え方でした。彼女のビジネスモデルはいったいどこが優れていたのでしょうか?

彼女の考え方について、賛否はあると思いますが、結果として世界中に広まり、多くの人がその手法を実践しているのは紛れもない事実だと思います。

結果的に大きな市場を創造することにつながったそのアプローチは、環境ビジネスが世界を目指す上で大変参考になる、私はそんなふうに考えています。そのポイントをいくつか挙げてみたいと思います。

1) まず、「実効性ある方法論から入る」こと。近藤さんの場合は「捨てる」こと、その際に「思い」についても納得できる方法で整理することが該当すると思います。そうすることでリバウンドしない片付けができるようになる、というロジックで、高い実効性を訴求しています。「まずはやってみよう」と思わせるアプローチです。
2) そこで、ポイントとなるのが「持ち主の心」であることを著書で解説し、妥当性を高めていること。片付けるのもちらかすのも、全て持ち主(=である読者)次第であることを納得しやすい言葉で説明しています。捨てるかどうかを決める基準も「心がときめくかどうか」という、極めて主観的なものに特化させています。客観性を排除することで、読者に対して「すべてはあなた次第」であることを説き、捨てたことについての「反芻的な疑問をシャットアウトする」ことをサポートしています。
3) 以降は、その後のリバウンドを防ぐための考え方や習慣について、事例の紹介となぜそうなのかという解説が中心で、「技術論・方法論は最初に出てきたものだけ」に限られています。

片付けは、生活習慣そのものでもあるため、難しい話は厳禁です。環境ビジネスも、言ってみれば社会全体の生活習慣に深くかかわる事業である分だけ、彼女のアプローチがヒントになる要素は少なくありません。具体的には、まず「実効性ある方法論から入る」ことで投資の成果を約束し、潜在顧客の関心を引くことができます。次に潜在顧客が自信を持って「反芻的な疑問をシャットアウトする」ことができるようなロジックを提供できれば、周囲の雑音を気にせず投資を検討してもらえることになります。さらに「技術論・方法論は最初に出てきたものだけ」に限り、考え方を繰り返し説明することで、疑念なくこちらが提供するソリューションのみを検討してくれることになるのです。

このアプローチを採用するためには、①提供するサービスが実効性の高いものであることに加えて、②サービスの背景にオリジナリティの高い哲学や考え方が伴っていなくてはなりません。一般的に日本の環境ビジネスは技術力が高いため、①についてはあまり問題がないものの、②の部分を外国人にも明示的に解りやすく説明できるという事例はまだ限られているようです。

片付けに悩み、近藤さんの考え方に共鳴した人たちが世界中で新たな顧客となりました。同様に、環境問題に悩む社会に対しても、共鳴しうる考え方を懇切丁寧に発信すること、納得してもらったうえで実践してもらうこと、その部分を持続的にサポートして行くことなどを通じれば、市場は際限なく広がってゆくのです。

もうお分かりいただけたと思うのですが、環境ビジネスのグローバル化に際しては「オリジナリティあふれる考え方」こそが、必須条件として求められる強みそのものである、ということです。逆に言うと、技術の優秀さだけを訴求する方法にはおのずと限界があり、考え方で勝負するアプローチを取らないと、新たな市場を開拓することにはつながらないのです。

技術の説明と合わせて、あなたの会社だけが持つオリジナルの考え方を、分かりやすい言葉で堂々と潜在顧客に説明してゆきましょう。それを繰り返すことで、それまで誰も開発できていなかった新しい市場への扉が開かれて行くのです。

2019.05.07

ゴールが共有できたなら

 前回は、人材不足に対応するためには経営者と従業員がゴールを共有できていることが重要で、そうなれば従業員は求められているレベル感と自分の実力の差を、むしろ自発的に埋めようとするものである、というお話をしました。

 むろんこの反応が出るためには、従業員が会社に対して否定的な認識を持っていないことが前提となります。人間は、目指すべき方向について何か嫌な感覚を持っていると、それが逆に不平不満の形で現れることもあるのですが、そもそも最初から嫌いな会社に入社したという従業員はいないはずですから、もしも小さなわだかまりなどを感じている従業員がいたら、会社側はキチンと向きあってそれを解消しておくべきなのです。今日は、そのうえで取るべき具体策の一つをご案内します。

 大学受験指導業界ではよく言われている話なのですが、「人は、人に教えることで一番伸びる」という鉄則があります。これは、単に理解しているだけの知識では人に説明するために十分とは言えず、全体観を簡潔に説明できること、知識の枠組みが整理できていること、重点箇所について分かりやすくかみ砕いて説明できること、さらに説明のためのたとえ話や事例を複数用意してあること等、説明のために必要な知識やノウハウは確実に一段上のものが要求されるためです。

 そもそも人材「不足」の状況下にあって、教えることで伸ばすと言ってもそのような機会を多く設けることは難しいのが現状だと思います。新人社員でも入ってくればその教育を任せるなどの方法があり得たかもしれませんが、それは難しい。

ではどうすれば良いのか?というお話ですが、お勧めは定期的な社内発表会の実施です。すでに社内で共有できているゴールがあることを前提に(経営目標あるいは経営理念、もしくはビジョンとかミッションとか言われるものも含めます)、ゴール達成のためのテーマを与え、そのテーマに関する課題の発掘と解決策を、従業員自らのコトバで語らせるのです。

一人ずつやらせるのが難しい場合など、本来はグループワークを設定するのが良いのですが、そうすると打ち合わせのために時間を取る必要が出てきて、働き方改革の流れに逆行する要素が出てくるかもしれません。ですので、発表会の規模をなるべく小さくするなどして、一人ずつに発表してもらうのが現実的な対応策だと思います。

発表会システムが良いのは、実施スケジュールを組むことで日時を区切れるため、締切を持って考えをまとめなければならず、これによって否応なしに変化が加速されるという効果があることです。

そうすることによって、経営者と従業員が共有したゴールに関してお互いの考え方を確認することができるので、確実に人材レベルの段差解消が進みます。従業員との間でゴールを共有し、彼らと真正面から向き合ってください。

人手不足が言われる日本にあって、環境ビジネスの分野には特に人材不足のお悩みを抱える会社が多いようです。今回お伝えしたソリューションは、私が主な支援対象としている環境ビジネスに限らず、どのような業種でも当てはまる考え方なのですが、それだけに「あとは実際にやるかやらないか」にかかっていると言えます。実施を一日遅らせれば問題解決も一日遅くなります。人材不足を克服して明日へと踏み出すための、今が最大のチャンスなのです。

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