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コラム

2019.11.12

ラストワンマイルに商機あり

 最近、製造業では至る所でRFIDなどを活用した「位置情報のデータ化」が進んでいます。流通を支える大規模倉庫では、この流れについて来られない中小企業による製品などを対象とした「タグ付け」という仕事が存在しており、倉庫内で働くタグ付け専門の下請業者が存在していたりします。タグはそのまま製品に組み込まれてしまうと、基本的にはその役目を終えるのですが、なにせICが組み込まれているため、多くの場合は放っておけば数十年は使えるようにできているのだそうです。

 一説によると自動車は一台が約3万点もの部品から出来上がっているのだそうですが、仮にこのうち大半にICタグが付けられているとすると、故障して取り替えられたりする履歴情報もその気になれば追いかけられるということになります。

 また、スーパーの商棚に並んでいる製品のほとんどにはバーコードがついています。生鮮品などスーパーが自分で付けたものもありますが、メーカー品の多くは工場でつけられたもので、製造から輸送、販売までのデータが一元的に紐付けられています。

 このデータも、家庭の冷蔵庫に入ったからと言って消えてなくなるわけではなく、その気になればレジの向こう側で起こっていることをトレースするための手掛かりになるのです。消費者が冷蔵庫から出し入れするたびにバーコードリーダーが働けば、たとえば消費期限内に食べられたかどうか、もっと言えばいつ消費されたか。お米のように、開封後しばらくかけて消費されるものは、次の購買までの期間を捉えることができれば「何日くらいかけて消費されたか」がわかるようになります。ちょっとメンドクサイかもしれませんが、同じようにバーコードがついている洗濯洗剤やシャンプーなども同じことが可能なはずです。

 ガソリンスタンドでも、クルマの個体識別ができるのですから、いつどこでどのくらい給油したのかをトレースすることは技術的に可能だろうと思われます。小売り各社の系列が違うことでデータのやり取りがしにくいという点はあるかもしれませんが、でもそれはスーパーやドラッグストアも同じです。

 このようなデータが共有されるようになると、たとえば消費者には「そろそろ買い時」または「賞味期限が近い」ことを知らせてくれるサービスが実現できそうですし、小売店はキャンペーンを計画するための手掛かりが得られます。またメーカーでは容器のサイズやデザインを再検討するための情報として活用できそうですし、流通ではロットの組み方を見直すための情報として注目が集まりそうです。

 いずれも、店から消費現場までのラストワンマイルに注目した考え方ですが、スマホが広く行き渡った現代社会では、インフラの問題はほぼ解決している状態にあります。今までこの部分のデータが欠落していたことで発生していたフードロスや家庭内死蔵品の問題を解決し、新たな商機をひねり出すためにも、ラストワンマイルを商機と捉えた取組みに注目したいと思います。

2019.11.05

なぜシェアリングビジネスがそんなに注目されるのか

 世界ではUberやLyftなど、ライドシェアサービスのユニコーン企業が羽ばたく中、少し前までは「日本では規制があってなかなかシェアリングビジネスが根付かない」などと言われていたものでしたね。今やその風景はすっかり様変わりで、確かに大手ライドシェア企業こそ不発だったかもしれませんが、アイカサ(傘のシェアリング)や、コインパーキングと結びついたカーシェアリングなど、しっかりと日本の土壌に受け入れられたサービスも出て来ました。

 サブスクリプションという対価支払いの考え方が普及したことと合わせて、「ルーティンの中でサービスを提供する/受ける」ことがビジネスである、というような感覚が広まってきたということだと思います。これはその対極にある「資産を販売する/保有する」というビジネスモデルの絶対性が薄れてきたことの証明でもあるのですが、先行的な事例としてはパソコンとクラウドソリューションの関係が挙げられると思います。

 その昔、と言うほど昔でもないかもしれませんが、パソコンのソフトは一台ごとにライセンスを購入して、CDなどのメディアからインストールして使うものでした。これは販売/保有モデルそのものに他なりませんが、その後インターネットが普及するにつれ、クラウド上で提供されるサービスにとって代わられて行きました。今やクラウドソリューションでないパソコンの使い道など、少数派になっているのではないかと思います。

 それが販売/保有モデルでも、サービス提供モデルでも、所詮デジタルで動いているサイバーベースのビジネスについてはさほど大きな副次的効果はなかったかもしれません。でもそれが実需の世界に展開されてゆくと、モノの流れに根本的な変革が起きる可能性が出てくるのです。

 クルマを例にとって考えると判りやすいと思うのですが、カーオーナーは人によっては3年で乗り換え、別の人は10年以上も乗り続ける、みたいな消費行動をとります。オーナーシップによって廃車のタイミングも個々のケースで変わってくるという避けがたい宿命を負うことになります。でも、もしこれがサービス提供のシェアリングだったなら、何が起こるでしょうか?

 言ってみれば大手企業が使うリースパソコンと同じで、ある日一斉にモデルチェンジが可能になるわけです、しかも計画的に。それが起きると、クルマの提供というサービスの総コストは劇的に安くなることに加え、廃車となる車のリユース・リサイクルにも大きな価値がつくようになることが想定されます。なにせ、全く同じモデルで全く同じ車齢のクルマばかりを計画した台数だけ集めることができるのですから。

 この考え方は、対象が傘でも自転車でも「サービス提供型ビジネス」でさえあればたぶん有効です。シェアリングエコノミーの普及によって、そういう区切りでビジネスを提供するという取り組みが、すでにあちこちで始まっているわけです。

 最近、環境ビジネスではよく「サーキュラーエコノミー」というコトバが聞かれるようになりました。いわゆるリサイクルビジネスと、現象的には非常に近いのですが寄って立つ考え方が少し違っています。政策的に言って既存のリサイクルビジネスが目指してきたのは、最終的には「廃棄物の削減」だったのですが、サーキュラーエコノミーには「新たな資源の投入を減らすことで地球の持続可能性を高めたい」という高次の理念みたいなものがくっついています。

 環境ビジネスの側から言わせると、実はシェアリングエコノミーもまたサーキュラーエコノミーのバリエーションであると認識されているのですが、その理由は上で述べたように、オーナーシップが顧客に渡っていない分だけ、サプライヤー側が設備更新の自由を手にすることができるという点にあります。そうすることでリサイクルをしやすくし、再生資源のコストを下げて品質を上げることを可能にする、というものなのです。単にモノだけでなく、モノが提供する満足度を循環的に提供し続ける、そんなビジネスモデルを回す企業が出てくるような時代が、もうそこまでやってきているのかもしれません。

2019.10.29

キーワードは世界観

 「西田さん、世界的企業の担当者だというのに、話題がすごく細かいことばかりだって驚かれたみたいですよ。」先日、日本の某大手企業で環境を担当されている方が国連の担当者と面会した時の様子を伝え聞く機会があり、やっぱりなあ・・と思わされたことがあったので、今日はその話を取り上げます。

 21世紀になって2度目の十年紀を終えようとする今日にあって、情報社会や国際経済から見ると、かつてないほど地球は小さくなってきています。日本を別として多くの国では依然として人口増が続き、限りある資源についての懸念が深刻化する流れは一向に変わりません。他方で気候変動や環境汚染の脅威は増すばかり・・という現状について、企業家そしてビジネスマンは何をどう考えれば良いのでしょうか?

 私は、「世界観」こそがキーワードだと思っています。特にここ数年、企業を取り巻く経営環境は急激に変化しており、その中で世界観が持つ意味合いが急激に高まっているという変化については押さえておく必要があるでしょう。以下に述べる理由により、その影響は大企業であればあるほど大きく、変化のスピードも速いと言えます。

 誤解を恐れずに言ってしまえばこれは2015年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国連の「責任投資原則」に署名したことに端を発しているというのが私の見方です。これ以降、GPIFの運用資金は社会善に向けたもの「にしか」回らないことになった、と捉えていただいて大枠で間違いありません。

 だからどうなの?と言われるかもしれませんが、GPIFが世界最大の機関投資家であることがもたらした金融界への影響はかつてないもので、今も時々刻々と変わり続けているのです。たとえば新規大型案件には必ず気候変動対策に関する情報開示が求められ、働き方改革への具体的なコミットメントは数字で報告することが不可欠になり、統合報告書がBSやPLと同じくらい重要な書類になってきている、というような。

金融が変われば、実業も変わらざるを得ないのです。世界的にはダボス会議やWBCSDなどの枠組みを通して大企業経営者の間に広まった考え方ですが、日本でも特に大企業の経営者レベルにおける問題意識の醸成が進み、矢継ぎ早に対策が講じられようとしています。他方で、長年それでやってきた実業界のストラクチャーは一朝一夕に変われるわけではありません。いまだに「SDGsって何だっけ?」というレベルの中堅幹部は珍しくもなんともないのです。

 ところが世界ではすでに、GPIFの先を行くスピードで、社会的課題に適合した新しいビジネスモデルを切り開こうとしている会社があるのです。世界的にはCoca-ColaやUnilever、スノーボードのBurtonなどが知られていますが、いずれもマイケル・ポーターが唱えたCSVなどをバックボーンに、社会善へのコミットメントを強く高く打ち出しています。

具体的な取組みの切り口は途上国への支援だったり、環境対策や社会貢献だったりと様々ですが、いずれも①社会善に対する自社の考え方が哲学として社員に共有されている、②収益を二の次にせず、しっかり儲ける仕組みが出来ている、③他者との協力について基本的にオープンである、などの特徴を備えています。

 冒頭で話に出た「大企業の担当者と国連の環境担当者との接点」みたいな話も、当の日本企業にとっておそらくは矢継ぎ早に講じられた施策の一端ではなかったかと言うのが私の洞察です。これまでの展開ではおそらく出会うことすらなかった方々が会っただけでも大きな前進、と言う見方があるかもしれません。ただ、あるいは準備ができたとは言い難い状況だったとすると、その結果として明らかになったのが「Coca-Colaとはあまりに違う日本企業の現実」で、国連担当者の失望を誘ったとするならば、却って逆効果だったのではないでしょうか。

 まずは、経営者が哲学として信ずる世界観を社員と共有するところから始めてください。そのうえで、実践を通じて哲学が社内に浸透するよう時間をかけることです。そして「結局は上滑りなスローガン」、で終わることのないように、最後までしっかりと目配りをすることです。最近よく聞くようになったSDGs(国連の「持続可能な開発目標」)を指標として取り上げるのは悪くないのですが、共通言語として社会に行き渡っている分だけ「やってるふり」と批判されることのないよう、くれぐれも覚悟を決めて実施してください。

 企業の評価は世界観で決まる、もしかするとそんな時代がもうすぐそばまでやってきているのかもしれません。

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