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コラム

2019.12.10

パリ協定に見る、環境ビジネスで儲けるためのカギとは

 先週から今週にかけてスペインのマドリッドで開かれているCOP25という地球環境に関する国際会議は、報道各社が取り上げない日はない注目のされ方ですが、残念ながら日本のメディアのレポートは、ほとんどが尻切れトンボになっているため、多くの方はニュースだけ見ていても何が何だかさっぱり分からないと思います。ましてや、そこに儲けのネタが転がっていることに気づく方はまずいらっしゃいません。

 特にテレビニュースは酷いもので、如何に短時間の映像で視聴者の耳目を集めるか?みたいな切り口でしか報道しないので、会議の本筋はおろかビジネスとの関係性など、くみ取りたくてもくみ取れない程度の情報しか流しません。やれ日本が最も温暖化の被害を受けた国とされたとか、日本の大臣が石炭火力を選択肢に残すと言ったら批判されたとか、日本が関わった情報の切れっ端ばかりです。

はっきり言ってこんなニュースはどうでもよく、注目すべきはたとえば世界が本格的に再生可能エネルギーへと舵を切ったこと、そしてその中で大規模蓄電池の開発が次の技術的な課題であることが明らかになったことであろうと思います。この部分には、潜在的に使えるかもしれない技術を持っている日本企業がおそらく10や20では効かないくらいのオーダーで存在するはずです。

気候変動への「適応」と言う考え方も、もっと注目されて良い視点です。暖まってしまったものは仕方ないので、暖かくなった状態を前提にどうしたらよいか考えよう、という取り組みです。実はここにもビジネスのネタが沢山隠れているのです。ところが会議では、適応は途上国向けの課題だということで日本の報道各社がこのニュースを劣位においてしまいがちなので、日本にいる私たちの目に入ることはほとんどないのです。

でもなぜ私がこんなことをすらすら書けるのかというと、環境屋の世界ではこれらの話題は超の字がつくくらい「あったりまえ」の話だからです。コンサルタントとして、確かに横文字メディアは追いかけていますし、最新の動きは押さえるようにしているのですが、そんな努力をしても世間の環境屋と比べたとき、知識面でさほど大きな違いをもたらしてくれるわけではありません。克服すべき課題は他にあるのです。それは社内の段差、に他なりません。

日本では、環境事業を手掛けるほとんどの大企業がそうですが、ある程度の中堅企業でも、環境分野の仕事は事業子会社を作ってそこにやらせている、と言う例が圧倒的多数です。つまり、戦略は本社や持株会社が決め、専門の事業子会社がその戦略に従って、主に国内で事業を展開する、という決まり事になっているケースが多く、意思決定役となる本社や持株会社は必ずしも環境の専門家ではないのです。

そこに生じる情報の段差こそが、COP25でザクザクと掘り出されている宝の山から日本企業を遠ざけているのです。そんな会社のトップが言うのは、環境を手掛ける事業子会社には専門家が居て、彼らの知見に期待している、という決まり文句です。では聞きますが、その専門家から一度でも世界の動きを目に入れた提案が上がってきたことがありますか?

事業子会社と本社の間で、戦略を巡る熱い議論が戦わされているという事例が、たとえ少数でも存在しているならば、世界の環境ビジネス市場で日本企業はもっと目立っているはずです。それが全くそうでないという事実こそが、段差の存在を雄弁に物語っているのです。

勘の良い方はもうお分かりかもしれませんが、事業子会社には「経営責任がない」のです。つまり「決められたことをする」のが彼らの仕事100%であって、経営責任は本社や持ち株会社の専売特許だという事実が、事業子会社の専門家をして世界のニュースに対する感性を失わせてしまっているのです。そういうマインドでマドリッドに出張したところで、儲けのチャンスは決して目に入ってくることはないでしょう。

ではどうすれば良いのか?これには二つの解決策があります。一つは経営側(本社や持ち株会社)が自分たちと同じ目線に環境ビジネスの分かるアドバイザーを置くことです。今一つは事業子会社に戦略立案権を付与する、もっと言うと独立させる、という方法です。財務的に独立は難しい、何とか今の体制でビジネスチャンスをつかみたい、と言う経営者にお勧めなのは前者の対策を取ることです。

COP25が終われば、気候変動をめぐる各種施策の動きも更に加速されます。その中にあって「環境は難しいから」と言って後回しにしていると、儲けのチャンスはすぐに飛び去って行ってしまうのです。チャンスの女神に後ろ髪がないことを、この機会にもう一度思い出してください。タイミングを失わずに行動した者にだけ、女神は振り向くのだということも

2019.12.03

儲かるバリューチェーンはこう作れ!環境ビジネス向けプラットフォーム形成の勧め

 このコラムを読んでいただいている方にはなじみ深い話かもしれませんが、環境ビジネスやサーキュラーエコノミーなどで世の中に新しい価値を提供しようとするときに、決まって遭遇するビジネス上の障壁があります。それは単純に「売れない」ということです。この絶望的な課題に、私たちはどう対応すれば良いのでしょうか?

このとき多くの場合は既存の商品やサービスのあるところに環境に良いことを売りにして新規参入を図っているわけですが、たとえどれだけ強いセールスポイントがあっても既存商品が占拠している市場をそのまま奪い取れるかと言われると、残念ながら環境に良いという触れ込みだけでは必ずしも十分ではない、というのが偽らざるところなのです。

ではどうすれば良いのか?答えは単純で、「バリューチェーンを自ら作り上げる」という努力を並行的に行うこと、これだけなのです。では具体的にどうすれば良いのか、について考えて行きたいと思います。

今仮に、品質はまあまあ、価格は安いが安定供給がネック、という再生材があったとします。サーキュラーエコノミーの中核を成す原料リサイクル市場ではごく一般的な話です。日本には石油化学産業(プラスチック系)や非鉄金属精錬(金属系)などの基礎産業が揃っているため、バージン材の供給が大量かつ安定的になされています。再生材のメリットはコストの安さだったりするのですが、現実的にはコストが安い原材料を望むユーザーの多くが量的にも大きなロットを安定供給してほしいニーズを持っているケースが多いです。結局安定供給がネックとなり、せっかくの再生材ビジネスがなかなか伸びないことにつながってしまいます。

このようなビジネス上の課題についてこれまで取り組まれてきたのは、原材料にあたる廃棄物の収集運搬事業者をネットワーク化するサプライチェーンの整備、つまり調達面での努力でした。協力会社の組織化や、行政との対話を通じた支援策の確保など、どちらかというと上流部分に焦点を当てた取組が中心でした。

しかし昨今、世の中は「良いことを歓迎する」考え方に目を向けだしています。現象的には行政や大手企業を中心としたSDGsへの取り組みが象徴的なものです。これを活用しない手はありません。つまり良いことをしたい顧客を組織化してしまう、という取り組みです。できれば「顧客の顧客」まで取り込んで、バリューチェーン全体を一つのプラットフォーム上に囲い込んでしまうというものです。素材提供を問うのですから、まずは部品メーカー、そして機械メーカー、機械ユーザーまでをも視野に入れましょう。そこで何を問うかと言うと。

製造工程でCO2を大量に排出するバージン材は、安価に大量供給してくれる反面で気候変動に負の影響を及ぼしているので、SDGsを推進したい大企業にとっては歓迎せざる側面を持ちます。昨今特に金融界からESG投資に関わるコンプライアンスの強化を求められる中で、大企業各社は具体策への対応が急務となっているのです。

旗印は分かりやすいものであれば「SDGs達成のために」でも、「CO2削減のために」でも構いません。再生材活用協議会みたいな建付けで、まずは情報交換会や勉強会から始めるのが良いでしょう。そこではこれら政策課題について、協議会を通じて御社が何をしたいのか、その考えをメンバー各社としっかり共有してください。しかる後に実際の再生材利活用に向けたユーザーニーズの把握と対応、更には商談拡大へとつなげてゆくのです。

日本経済は長らくバージン材メーカー主導で動いてきた歴史があり、これまで再生材メーカー側が音頭を取ってプラットフォーム形成を進めるという事例はあまり多くありませんでした。その意味で、どこの業界でもバージン材メーカーによるバリューチェーン整備は進んでおり、対抗的に身構えれば巨人を相手に戦うことになります。社会善への取り組みを前面に出すことで対決色を緩和し、さらには共存共栄への道をも拓くことができるのです。

2019.11.19

ビジネスチャンスは足元に

 つい先日のことですが、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン社(以下、P&GJ社)が、同社の台所用洗剤JOYのボトル向けに、日本国内の海岸で回収された海洋プラスチックごみを再生して原材料に使うというニュースが流れたのをご存知の方もいらっしゃるかと思います。
 https://www.newsweekjapan.jp/press_release/2019/11/000000022000031986.php

 リサイクルビジネスにおいて、プラスチックは長年にわたって儲からない分野の代表選手みたいに言われてきた過去があります。なにしろ①大量に計画生産できるバージン材に比べて再生材は安定供給が難しい、②廃棄物にはポリエチレンやポリプロピレンなど多様な素材が混じっていて選別を徹底することが難しいため、再生材は素材の純度を上げることが難しい。また工程上どうしても異物混入が発生しがち、③そもそも価格的にバージン材のプラスチックがものすごく安いなど、プラスチックのリサイクルには難しい要件ばかりが揃っているからです。

 業界ではたとえば白いポリスチレンの精肉トレイに異物混入による黒点などがあると、それだけで消費者はその肉を買わなくなるんだ、というような意味を込めて、ごく少量でも再生材に見られる異物混入を「コンタミ」と呼んで忌避しています。コンタミネーションはそもそも「汚染」と言う意味ですから、思わず「その材料は有害物質にでも汚染されているのか?」と聞き返したくなるところですが、業界慣習の世界では誰一人疑うことなく今日まで再生材忌避の流れが続いてきていたのでした。

 ところがこの夏、大阪で開かれたG-20でクローズアップされたこともあって、「海洋プラスチック」は一気に注目されるテーマとして浮かび上がりました。単に地球環境問題と言うだけに止まらず、社会への配慮を示すためのシンボリックなテーマとしても。目ざとい大手外食チェーンなどが早速プラスチックのストローを廃止したりする動きが加速されたのは皆さんもご存じですよね。

 今回、P&GJ社はさらに突っ込んで、「海洋プラスチックを再生してボトルに使う」という戦略に出ました。ここでパラダイムの転換が起きるのですが、明らかに海洋プラスチックであることを示すには、たとえば「コンタミ」があったほうが良い、みたいな話になるのではないかと見ています。ゴミ集めや再生工程の動画は、そのままコマーシャル映像になりうるでしょう。それまで忌避材料でしかなかったコンタミが、この流れでは価値を生み出すものになるという、そんな流れが新たに生まれるのです。

明らかな異物混入の痕跡も、海洋プラスチック由来であることを示すアイキャッチャーとして、むしろ店頭では目立たせるディスプレイに使われたりするかもしれません。もはや「コンタミ」ではなく、それ自体が価値の証明になるということです。

 良い話題でも悪い話題でも、話題になったことは商機をもたらすという、今回の事例はその典型的なパターンを示してくれているのではないでしょうか。ちょっと前になりますが、CSV=Creating Shared Valueというキーワードが流行ったことがありました。ストローの材料見直しはコストです。でも海洋プラスチックで作る洗剤ボトルは?そうです。話題作りのインパクトが強い分、もしかしたら売り上げ増につながる取り組みなのです。まさにビジネスチャンスは足元にある、ことを如実に示してくれた事例ですね。

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