ビジネス向けに環境関連の仕事をしていると、ごく初歩的な情報でつまづく場面にしょっちゅう出くわします。かなり規模の大きな会社の経営者でも、SDGsのことをきちんと理解している方はむしろ例外的だったりします。それどころか、意外とプロでも基本中の基本があやふやだったりします。一体どうしてこんなことになっているのでしょうか?
考えてみれば私の世代が高校生だったころは、学校で学ぶとすれば公害の歴史くらいで、地球環境の話など全く勉強する機会がありませんでした。その後私は、必要性に迫られて環境のことを勉強したので、何とか商売につなげることができたのですが、世の中ではむしろ例外的なケースだと思います。学びなおしの機会がないまま責任世代に押し上げられた人が多い状況では、ある意味仕方のないことなのかもしれません。しかし時代は加速度的に変化しているのです。
その1)地球温暖化と気候変動の違い
いわゆる地球温暖化とは、大気中の温室効果ガスが増加することによって引き起こされる気候変動の、ひとつのバリエーションを表すコトバです。指標として地表面での平均気温上昇が使われていることから、気候変動と地球温暖化は同じもの、というふうに理解している例が多く見られます。
完全な間違いとまでは言えませんが、単に温暖化だけではなく、世界各地で深刻化する干ばつも、かつてない規模の豪雨による洪水や、超大型の台風やハリケーンも、温室効果ガスの増加によって引き起こされた気候変動のバリエーションなのです。なので、気候変動と呼ぶほうが問題を的確に捉えた表現だと言えます。
その2)COP24とSDGsの関係
どちらも国連で、どちらも環境がテーマだけど、何がどう違うの?というギモンにきちんと答えられる大人はそう多くないと思います。もっとも、ボーっと生きてるわけではないでしょうから怒られることはないと思うのですが、ざっと説明すれば以下のような話です。
COP24とは、世界中で温暖化対策を進めましょう、という国際条約(国連気候変動枠組み条約~以下、条約といいます)のルールを決めるための会議の名前です。国として条約への参加を決定することを批准といいますが、そうすると経費を負担したり、世界が決めた締め切りまでに温暖化ガスを削減したりする義務を負います。
これに対してSDGs(持続可能な開発目標)は、2030年に向けて持続可能な社会を形作るために国連が決めた具体的な行動指針で、批准する・しないというプロセスはありません。また、環境は重要な要素ではありますがSDGsの全てというわけでもありません(貧困対策や飢餓対策も重要な要素です)。さらに批准プロセスがないため、各国が強い法的義務を負う性格のものではないという違いもあります。
どちらも国連で行われる国際会議によってその進捗が報告されるという手順は似ているのですが、条約のほうが法的拘束力を強く持つという違いは理解しておいて間違いはないでしょう。とはいえ、その普遍性が評価されてか、SDGsも評価基準として祭り上げられつつあるという側面があります。
条約についてはドイツのボンに専任の事務局が存在していて、一連の会議を実施したり各国の意見調整のおぜん立てをするなど仕事をしており、あたかも独立した国連機関みたいな立場で動いています。
これに対してSDGsには専任の事務局が存在するわけではなく、ニューヨークにある国連本部の経済社会問題部が事務局役を務めています。
ただ、これらのどちらも国連の組織ですから、結局のところ部内では似たような用語が飛び交い、似たような手順・段取りで仕事をしていることは否めません。また条約事務局と国連本部および各国連機関の間では、人材交流も結構頻繁に発生しているのではないかと思われます。
ざっくりと理解していただくには、条約=法律みたいなもの、行動指針=ゴールド免許みたいなもの、という類比が分かりやすいのかなと思っています。運転免許はブルーでも世の中を生きてゆくための支障は発生しないのですが、持てるものならゴールド免許の方が、更新手続きも簡単で、自動車保険も多少安くなったりするわけです。このため皆なるべくゴールド免許を持とうとするわけですね。他方で法律は守らないと刑事罰の対象になる場合もあるので、強制力は法律のほうが強くなります。
条約は、加盟国それぞれが異なる義務を背負い、それぞれの努力を重ね合わせて約束の実現を図るものであり、SDGsは国連が加盟国に求める行動指針として、やはり2030年の持続可能な社会の実現を目指すものである、という整理の中で、実際には相互の有機的な連携が模索されています。所詮国連が絡んだ話ですから、つながっていないほうがおかしい、というご指摘もあるでしょう。
このあたりの感覚を養うことで、海外の環境ビジネスがぐっと視野に入れやすくなるのではないかと思います。勉強してみたい、という方には小冊子をお配りしておりますので、ぜひ当社までメールでお問い合わせくださいませ。