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2019.03.05

グリーンファイナンスのメリットとは

CO2排出量を減らす取り組みなどに資金を供給することで、最近各方面で注目されるようになってきたグリーンファイナンスですが、世間一般ではまだまだ認知度が高いとは言えない状況だと思います。2017年に環境省が定めたグリーンボンド発行ガイドラインでは、発行体の目論見書にセカンドパーティが意見書をつけることでスキームの信頼性を担保する仕組みが求められています。意見書を書いてもらうためには当然コストがかかります。

今のところ、政府による補助金などを活用することができれば、ある程度のコスト増は吸収できるようですが、伝統的な財務面の評価において明らかな優位性~たとえば利率が下がる、といった~が生じる仕組みにはなっていません。それでもグリーンファイナンス市場では、自治体や大手企業による発行(借入による資金調達)が相次いでいるのです。それは一体どうしてなのでしょうか?

ひとつには資本市場において、借り手側の非財務情報がこれまで以上に重要視されるようになったということがあると思います。グリーンファイナンスによる資金調達は、環境に良い仕事をしていることの間接的な証明を得ることと同義に捉えられており、昨今注目されるSDGsとの親和性も高いことから、企業の社会的な信用度を高める効果があると考えられます。この社会的信用度は、資金提供を行う金融機関にも波及的に歓迎されており、現在日本では年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が積極的にグリーンファイナンス市場への資金提供を行っています。

残念ながらもうずいぶん日本はカネ余りの状態が続いており、円滑な資金供給だけでは強いメリットになりにくい市場環境なのですが、クラウドファンディングなどの新しい市場が充実して行く流れの中で、グリーンファイナンスの考え方も今後確実に広まってゆくものと思われます。

一つの例を挙げると、世の中には風俗産業やギャンブルなど、必ずしも社会的評価が高くない事業で財を成した人たちがいて、そういう方々が潜在的に求めている社会的評価とグリーンファイナンスはごく近しいところに位置すると考えられます。今仮に、グリーンな投融資に資金を提供することを評価する社会的なクレジットが客観性のある形で提供されるとすると、その分だけ利率が低くても資金を提供したい、その代り社会的評価がほしいという事業家は必ず存在するだろうと思われるからです。

そういった資金スキームを金融機関と一緒になって作ってゆくことで、社会全体がグリーンファイナンスのメリットを享受できるような仕組みが出来上がると、日本の資金市場も確実にそのすそ野が広がってゆくことになるでしょう。

環境ビジネスの経営者にとっても、ファイナンスの面で新しい可能性が広がる好機なのです。グリーンファイナンスの今後にぜひ注目していただきたいものだと思います。

2019.02.26

自己認識の限界

環境ビジネスのコンサルタントをしていると、時々やるせない思いに駆られることがあります。それは、本業が製造業やサービス業の会社が始めた新規事業が環境保全に関わっているのに、本社の意思決定者が環境ビジネスの何たるかをよく理解しておらず、先進的な商機について反応がすごく鈍かったりすることがあるのです。具体的にはどんな場合なのでしょうか?

それが省エネルギーに関することであっても、太陽光や風力などの再生可能エネルギー事業でも、ましてや水処理や廃棄物管理、大気汚染対策など規制に関係するビジネスであればなおのこと、環境ビジネスは一般的に公益性が高いという特徴があります。

これがどのように影響してくるかと言うと、特に規制面において役所その他の公的機関との接点が多くなる分だけ手続きの手間がかかる反面で、事業面では役所のお墨付きが得られることによる信用力の向上が期待できる要素もあるという、言われなければ分からない程度の長所短所が出てくるわけです。

その程度の違いであれば、特に大きな違いはないんじゃないの、元々が環境ビジネス出身ではない経営幹部だと、そんなふうに捉えている人が少なくありません。実は、ここが大きな誤解の素になるのです。

しっかり規制を尊重するのも、役所のお墨付きをもらえるのも、すなわち公益性を担保するために必要なプロセスなわけですが、だとすると社会が企業に対して公益性に基づく責任を果たしてくれることを期待したとき、本来であれば積極的に手を上げるべきなのが望まれる環境ビジネスのありようなのです。

たとえば住民説明会や、地元小中学校に対する環境教育への参加であったり、途上国からの視察受け入れや、技術協力案件における専門家派遣というニーズもあったりします。これらの多くは有償、しかもそこそこ悪くないフィーが支払われる制度になっています。

ところが実際は、会社側から「メンドクサイことは出来ればしたくない」的な拒絶反応を示される事例が少なくありません。そのような場合についてよく見てみると、意思決定者が本社から送り込まれた人材で、環境ビジネスの何たるかをよく知らない人である、と言った場合だったりします。

反対に、元から環境ビジネス専業でやってきた会社の場合は比較的このあたりがしっかりしていることが多く、経営者は打てば響くような反応を示してくれたりします。いつもそういう会社ばかりだと良いのですが、現実的には大企業が始めた新規事業のほうが技術的に魅力的なソリューションを持っていたりするので、なかなか簡単ではありません。

公益性を積極的に訴求することで、ビジネスとしての可能性も実は広げることができるのだという点を、大企業の新規事業担当者にもぜひご理解をいただきたいと思います。そうすることで新たな事業機会を獲得し、さらなる成長へと視界を広げて行けるのです。

これは何も環境ビジネスに限ったことではなく、ポーターの言うCreating Shared Value (CSV)に通じる視点であることに気づくと、実はすべてのビジネスに同様の可能性があるという結論にもつながるのです。公益性というキーワードにビジネスチャンスが眠っていたりしないか、今一度会社の知的資産を棚卸してみるのも悪くないかもしれません。

2019.02.19

戦略の地平線

 私は環境ビジネス向けの戦略コンサルティングを生業としているのですが、企業の規模や歴史にかかわらず、経営戦略については「素晴らしい仕事をしているのに、どうしてこんなところで止まっているのかな?」と不思議に思わされるパターンが少なくありません。その多くが、市場を国内の、しかも手が届くところに限るというもので、北は北海道から南は九州・沖縄まで、ごく一般的にみられる現象です。一体全体どうしたことでしょうか?

 ある程度の中堅・大手でも、環境ビジネスが海外展開していると言う事例はむしろ例外的で、さらにその場合でも「なぜ進出先がその国だったのか」について多くは「たまたま」「友人の紹介」「行ってみたら良かったので」など、とても戦略的な判断とは思えないような解説がなされたりしています。

 戦略は経営者の専権事項であることが多いため、普通だと曖昧さが生じる余地はまずありません。それなのにどうしてだか、海外についてはあたかも取って付けたような調子でさらりと触れられてオシマイ、となるのです。結局のところ国内が全て、みたいな基本設計になっているのです。

 私はこれを「戦略の地平線」と呼んでいます。その主な理由は政府の環境政策が多くは日本国外についての政策適用を想定しておらず、環境改善へのコミットメントを「日本国内だけ」に限定するような内容になっていることによるものと考えています。そしてその遠因は、戦後になって取り組まれた環境行政の発達の歴史にあるのではないかと見ています。

国際的にも戦後の枠組みが決められてゆく中で日本に課せられた命題は「二度と周辺国に対する軍事的脅威にはならない」ことでした。その頸木が環境問題についても「周辺国を日本と一体的に考えることはしない」という、言わば過剰反応になって表れている、というのが私の読み解きです。ちょっと状況証拠依存の考え方かもしれませんが、そうとでも考えないと説明がつかないのではないか、と感じているのです。

 それでも口頭で議論したりQ&Aセッションなどを通じて、「国連や多国間環境条約を尊重したものの考え方」を提示すると、これまた意外なほど多くの人たちが私の考え方に共鳴してくれます。その落差には、思わずこちらがたじろいでしまう場合もあるのですが、たとえば国連主体で課題を再定義することに対する忌避感などは、これまで感じたことがありません。

 私はこれを「戦略の地平線を押し下げた」みたいな言い方で解説するのですが、考え方をちょっとだけ入れ替える前と後で、見えてくる景色には顕著な違いが生じます。

 未来を生きる若手経営者は特に、この「戦略の地平線」をできうるかぎり低く設定することで、確実に視野を広げることができるようになります。そして、もしかしたらこのあたりに日本が環境問題を含む戦後レジームの呪縛から解き放たれるためのヒントが隠れているのではないかとも思うのです。

 最後のところがいささか大風呂敷な話に聞こえたかもしれませんが、環境問題が世界共通の重要課題として取り上げられるようになってきている現代社会において、日本の環境技術には確実にチャンスが訪れようとしているのです。どうせ世界に出てゆくならば、企業経営者たるもの少しでも戦略性に優れたアプローチを志向すべきなのではないでしょうか。

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