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2019.03.26

ESG投資の熱狂

2019年3月末現在の話ですが、全世界の一部が熱狂し、その度合いが加速度的に高まっている投資ネタがあります。聞いたことがある人は少なくないと思うのですが、ESG投資と言われる社会善を基軸とした投資スキームの話です。

なんでそんなものが、と言われる向きも少なくないと思います。日本国内だけの説明で済むのであれば、最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人:厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っている)が2015年に国連責任投資原則に署名したことがきっかけであった、と言われています。日本はそれだけGPIFの影響が大きい市場環境にあることを、図らずも露呈させてくれたという話なのですが、世界全体を俯瞰する視点を持つと、話はそれだけでは済まなくなります。

GPIFが署名した国連責任投資原則(PRI(Principles for Responsible Investment))とは、機関投資家が環境・社会・ガバナンス(ESG)の課題を投資の意思決定や所有慣習に組み込み、受益者のために長期的な投資成果を向上させることを目的とした原則で、2006年4月にアナン元国連事務総長によって公表されたものです。投資家に対して真正面から社会善への対応を求めたという意味で画期的な提案でした。

その考え方の延長線上に、このコラムでも何回か取り上げたSDGs(持続可能な開発目標)という、国連が採択した国際社会全体のための行動指針があります。さらにまた、国際社会にとって喫緊の課題である地球温暖化対策に向けたパリ協定も重要な要素です。これらの動きは相互に近く、また連動していて、ESG投資の中身についての議論では、常に温暖化対策のための財務的開示に関するガイドラインが参照されます。

議論は熱気を帯びていて、非財務情報の開示をどのように行えばよいか、裾野を広げるための施策はどうあるべきか、関係各業界の対応はどうなるかなど、社会善を真正面から捉えようとする動きが本物であることを感じさせてくれます。

ただ残念ながら、日本社会全体がこの流れを認識しているかと言われれば、そこには確実に大きな段差があり、ややもするとその段差はむしろ広がりつつあるのではないかとすら思われるところがあります。前述のとおり、最先端の議論はどんどん進んでいる中で、大企業のCSR部門であればどうにか話題に着いて来られていても、多くの中小企業にとっては、とてもついて行けない性質のものだと取られる部分がまだ大きいということだと思います。

この落差は世界的に見れば、大企業対中小企業の差である以上に先進国対途上国のそれであり、常に議論をリードする欧米社会に対し、是々非々で対案をぶつけるインド・中国およびそれ以外の途上国という図式になっています。ただ、大枠で言えばSDGsもそうですが、パリ協定にはこれら途上国も参加している状況なので、それが縛りになっていて議論の枠組み自体は担保されているという状況です。

だとすると、確かに紆余曲折はあるのでしょうが、早晩世界はこの落差を吸収する形で議論をまとめ上げることになるのでしょう。その段階では企業に社会善を求めるESG投資の考え方が本流になっている、という姿もあながちホラ噺ではないかもしれません。

企業経営者として、どのようにESG投資の考え方を取り入れれば良いのか、先んじてESG投資を受け入れることでどのようなメリットがあるのか。当社のセミナーではこの点を詳しくご紹介しています。詳しくはセミナー案内のページをご覧ください。

2019.03.19

いまさら聞けない環境の話

ビジネス向けに環境関連の仕事をしていると、ごく初歩的な情報でつまづく場面にしょっちゅう出くわします。かなり規模の大きな会社の経営者でも、SDGsのことをきちんと理解している方はむしろ例外的だったりします。それどころか、意外とプロでも基本中の基本があやふやだったりします。一体どうしてこんなことになっているのでしょうか?

考えてみれば私の世代が高校生だったころは、学校で学ぶとすれば公害の歴史くらいで、地球環境の話など全く勉強する機会がありませんでした。その後私は、必要性に迫られて環境のことを勉強したので、何とか商売につなげることができたのですが、世の中ではむしろ例外的なケースだと思います。学びなおしの機会がないまま責任世代に押し上げられた人が多い状況では、ある意味仕方のないことなのかもしれません。しかし時代は加速度的に変化しているのです。

その1)地球温暖化と気候変動の違い
いわゆる地球温暖化とは、大気中の温室効果ガスが増加することによって引き起こされる気候変動の、ひとつのバリエーションを表すコトバです。指標として地表面での平均気温上昇が使われていることから、気候変動と地球温暖化は同じもの、というふうに理解している例が多く見られます。

完全な間違いとまでは言えませんが、単に温暖化だけではなく、世界各地で深刻化する干ばつも、かつてない規模の豪雨による洪水や、超大型の台風やハリケーンも、温室効果ガスの増加によって引き起こされた気候変動のバリエーションなのです。なので、気候変動と呼ぶほうが問題を的確に捉えた表現だと言えます。

その2)COP24とSDGsの関係
どちらも国連で、どちらも環境がテーマだけど、何がどう違うの?というギモンにきちんと答えられる大人はそう多くないと思います。もっとも、ボーっと生きてるわけではないでしょうから怒られることはないと思うのですが、ざっと説明すれば以下のような話です。

COP24とは、世界中で温暖化対策を進めましょう、という国際条約(国連気候変動枠組み条約~以下、条約といいます)のルールを決めるための会議の名前です。国として条約への参加を決定することを批准といいますが、そうすると経費を負担したり、世界が決めた締め切りまでに温暖化ガスを削減したりする義務を負います。

これに対してSDGs(持続可能な開発目標)は、2030年に向けて持続可能な社会を形作るために国連が決めた具体的な行動指針で、批准する・しないというプロセスはありません。また、環境は重要な要素ではありますがSDGsの全てというわけでもありません(貧困対策や飢餓対策も重要な要素です)。さらに批准プロセスがないため、各国が強い法的義務を負う性格のものではないという違いもあります。

どちらも国連で行われる国際会議によってその進捗が報告されるという手順は似ているのですが、条約のほうが法的拘束力を強く持つという違いは理解しておいて間違いはないでしょう。とはいえ、その普遍性が評価されてか、SDGsも評価基準として祭り上げられつつあるという側面があります。

条約についてはドイツのボンに専任の事務局が存在していて、一連の会議を実施したり各国の意見調整のおぜん立てをするなど仕事をしており、あたかも独立した国連機関みたいな立場で動いています。

これに対してSDGsには専任の事務局が存在するわけではなく、ニューヨークにある国連本部の経済社会問題部が事務局役を務めています。

ただ、これらのどちらも国連の組織ですから、結局のところ部内では似たような用語が飛び交い、似たような手順・段取りで仕事をしていることは否めません。また条約事務局と国連本部および各国連機関の間では、人材交流も結構頻繁に発生しているのではないかと思われます。

ざっくりと理解していただくには、条約=法律みたいなもの、行動指針=ゴールド免許みたいなもの、という類比が分かりやすいのかなと思っています。運転免許はブルーでも世の中を生きてゆくための支障は発生しないのですが、持てるものならゴールド免許の方が、更新手続きも簡単で、自動車保険も多少安くなったりするわけです。このため皆なるべくゴールド免許を持とうとするわけですね。他方で法律は守らないと刑事罰の対象になる場合もあるので、強制力は法律のほうが強くなります。

条約は、加盟国それぞれが異なる義務を背負い、それぞれの努力を重ね合わせて約束の実現を図るものであり、SDGsは国連が加盟国に求める行動指針として、やはり2030年の持続可能な社会の実現を目指すものである、という整理の中で、実際には相互の有機的な連携が模索されています。所詮国連が絡んだ話ですから、つながっていないほうがおかしい、というご指摘もあるでしょう。

このあたりの感覚を養うことで、海外の環境ビジネスがぐっと視野に入れやすくなるのではないかと思います。勉強してみたい、という方には小冊子をお配りしておりますので、ぜひ当社までメールでお問い合わせくださいませ。

2019.03.12

ソーシャルグッドとビジネスの仲介役

世の中で売れているコンサルタントの多くは、高い専門性と実績に裏打ちされたユニークな守備範囲をお持ちです。私の場合もこのところ「環境ビジネスコンサルタント」という肩書を使うことが多くなりました。とはいえ、私自身は技術屋ではなく、化学に関する知見があるわけでもありません。学位も持っていませんし、関連する学会で顔が売れているわけでもありません。いわゆるハードコアの環境屋から見れば、全くもって異端児以外の何物でもないと思うのです。そんな私がなぜ、環境ビジネスコンサルタントを名乗るのでしょうか?

あられもない話をしてしまえば、「それがビジネスになるから」ということに尽きるのですが、その背景はと言えば、1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境サミットと、その成果物として世に問われた「アジェンダ21」にまで遡ります。

当時私は駆け出しの国際公務員として、アフリカ・ケニアでフラミンゴの保護に関係するプロジェクトを手掛けておりました。機会を得て、日本の民間企業から思い切って転職したのですが、担当していたごく小さなプロジェクトでも、野鳥保護に関わるラムサール条約、さらにはアジェンダ21に連なる環境保護の動きの末端に位置づけられることを日々感じながら仕事をしておりました。

その後テーマや向け先は変わっても、この流れは止むことなく、国連に関わる仕事では継続的に環境関連の事案を手掛けることになりました。自ら意図したわけではないのですが、結果としてコンサルタントとして独立してからも圧倒的に環境に関わる仕事が多くなっています。だったら分かりやすい肩書の方が良いだろう、ということで冒頭のように「環境ビジネスコンサルタント」という肩書を使うようになったわけです。

国連が国際社会全体に対してビジョンを提供するという動きは、その後21世紀に向けて採択された「ミレニアム開発目標(MDGs)」で本格化したと思います。しかしながらこの段階ではまだ途上国がその主な対象とされた分だけ、日本国内での知名度も低く、ビジネスセクターとの関わり合いも限定的なものでした。それが2015年の「持続可能な開発目標(SDGs)」で先進国を含む全ての国連加盟国が対象となるに及んで、急激に国内でも関心が高まり、ビジネスとの接点が出来てきたことが大きいと思います。

このコラムでも触れたことがありますが、SDGsは企業にとってもビジネスを通じた社会善(ソーシャルグッド)の提供について公的な色彩を持つ評価軸を与えてくれるというメリットがあり、最近では大企業ならずとも経営指針としてSDGsを採用する動きが顕在化しています。

そのような流れの中で、20年以上に渡って世界の動きを日本の枠の外から定点で観察してきたこと、国際社会が目指しているものを皮膚感を持ってお伝えできること、更には国際社会でビジネスチャンスを模索するために求められるポイントなどを、オリジナルの方法論でご指南できる点が私の強みなのだろうと思っています。

ソーシャルグッドの提供を海外でのビジネスにつなげるには、いくつかの切り口があります。SDGsはその一つに過ぎず、向け先によって複数の切り口を組み合わせて戦略を作り上げるのが効果的です。関連する法律や条約はもちろんのこと、ISOなど社会が求める品質基準も重要な切り口となります。最先端の動きで言えばネットで拡散されるような社会問題そのものも、ソーシャルグッドの美点を訴求するための手掛かりになりえます。

それらのポイントをバランスよく組み合わせて、グローバル展開のための戦略作りをサポートすること、それがすなわち「環境ビジネスコンサルタント」として私が提供していることなのです。言ってみればソーシャルグッドとビジネスの仲介役、ということですね。

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