更新情報 | 合同会社オフィス西田|人財獲得戦略・技術開発戦略はお任せください。
ホーム > 新着情報

新着情報

2019.10.15

循環経済とサーキュラーエコノミーの違いとは

 このところ、環境ビジネス業界ではサーキュラーエコノミーと言うカタカナの単語をよく耳にします。使い終わった品物でも、リサイクルしたり修理したりして、なるべく廃棄しないようにする、みたいな処し方であるという理解に間違いはないのですが、だとすると敢えてカタカナ表記されるのは何故なのでしょうか?

 よく、リデュース・リユース・リサイクル、あるいは3Rというキャッチフレーズで語られてきたのが循環型社会、あるいは循環経済というコンセプトです。日本はもう20年近く、国を挙げてこの取り組みを続けて来たので、廃棄物削減への取り組みは法律から処理施設、初頭教育、社会規範そして業界構造に至るまで、社会の隅々まできめ細かく組み込まれた国になりました。定量的に計測したことはないのですが、3Rの普及率みたいなものを調査してみれば世界でもかなり上位に入ることは間違いないだろうと思います。

 この取り組みは、そもそも各地の埋め立て処分場が一杯になってきて、少しでも延命させなくてはならないという背景から始まったところがあり、その意味では基本的に資源投入と廃棄を大前提とした経済構造に基づくものでした。これはこれで成果を挙げ、日本政府も「日本の取り組みは成功した」と自認しています。

 これに対して、サーキュラーエコノミー(カタカナ)の思想的な前提はだいぶ異なっていまして、そもそも化石燃料をはじめとする地下資源の収奪と投入が持続可能性を損なっている、みたいなやや過激ともいえる考え方がその基礎になっているという違いがあります。

今仮に、一切の採掘を止めて社会にある資源のみを使って生き延びるためには、現有資源を再循環させて使ってゆくしかないだろう、でもそうすればCO2排出も、環境汚染もこれ以上増えることはない。サーキュラーエコノミーの発想の原点は、実はそんなところにあったりするのです。

この考え方は2015年にEUが支持したことから広まったという経緯があり、これまで日本が取り組んできた循環型社会や循環経済とは「似て非なるもの」なのです 。

(参考:https://www.researchgate.net/publication/319403544_The_Theoretical_Background_of_Circular_Economy_and_the_Importance_of_it’s_Application_at_Renewable_Energy_Systems_The_Theoretical_Background_of_Circular_Economy_and_the_Importance_of_it’s_Application_ )

 ではなぜいま日本でサーキュラーエコノミー(カタカナ)なのか?という疑問が湧いてきますね。そこには資源循環と気候変動対策の切っても切れない関係があり、すでに成果が出てしまった3Rを細々と続けているだけでは何もしていないのと同じ、との批判を免れないほどに切羽詰まった状況がある、と言わざるを得ません。

 先日の台風15号、直近の19号による被害でも明らかなように、気候変動対策を本気で推し進めないことには、地球の持続可能性がかなり危機的な状況にあるのは明らかなのですが、だとすると資源循環プロセスにも聖域はない、とする考え方の方が勢いを増しているのが世界の現状なわけです。

 ソロバンが合わないから、法律がそうなっていないから、前例がないから。これらの理由でこれまで見送られてきた資源循環も、改めて見直されようとしています。もしもそこにビジネスチャンスがあるのだとしたら、今こそ先行的に取り組むべきタイミングではないのか?コンサルタントとして私はいつもそんな風に考えているのです。

2019.10.08

環境ビジネスと災害レジリエンスについて

 先日の台風15号は千葉県南部に甚大な被害をもたらしましたが、それによって発生した災害がれきの処理が大きな負荷になっていることが一部で報道されています。新聞報道によると、自治体の焼却工場はOB人材の応援も受けて、24時間操業によるフル稼働体制で災害がれきの処理を続け、周辺自治体の協力も得て災害がれきの処理に当たったそうです。

 環境省は2014年に全国の自治体に対して「災害廃棄物処理計画」作成を求めており、この計画が国の「廃棄物処理施設整備計画」に反映される仕組みを構築しています(災害廃棄物対策指針の位置づけ及び構成 https://www.env.go.jp/recycle/waste/disaster/guideline/ による)。

 通常、焼却工場など自治体が所管する一般廃棄物(家庭や事業所から排出される、いわゆる一般ごみ)処理施設については、想定されるごみの排出量を一日16時間程度の稼働で無理なく焼却できる容量で設計されています。大規模な自治体では、人口減少に加えて環境教育の充実などから実際の排出量が設計値を下回り、平時の操業について容量のゆとりが生じている場合もありますが、一旦災害が起きると発生するがれきの量は尋常ではありません。2016年の熊本地震では約310万トン、2018年の西日本豪雨では約180万トンの災害がれきが発生したと言われています。

 これらの災害がれきをどう処理するか、という問題ももちろんありますが、環境ビジネスの視点から言うと、災害レジリエンス(抵抗力)を強化してがれきの発生量を減らすことにこそビジネスチャンスがあるのではないかと思われます。

 最近、自宅近くに新築のアパートが出来たのですが、窓という窓にシャッターがついています。他方で中古の集合住宅にはガラス窓の保護が不十分な物件も少なくないのですが、窓ガラスにワイヤーが入ったサッシや、後付けできるタイプのシャッターなどの対策ビジネスにとっては商機であるということができるでしょう。同様に、エアコンの室外機や太陽光発電パネルのパワコンなどを水没から守るためのかさ上げ架台なども需要が高まるのではないかと思われます。

 そして何より千葉の経験を生かすのが「停電対策」です。緊急避難的な対策としては、自動車の12V電源を家庭用電源として使えるインバーターを備えておくことでしょう。小型の発電機があればそれに越したことはありませんが、家庭で太陽光発電をされている場合、バッテリーの備えがあるだけで夜間にも電気が使えるため、蓄積される生活ダメージは全く違ってくるのです。

 東日本大震災後には、家具の転倒を予防するためのつっかえ棒などがよく売れたことが思い出されます。まさにビジネスチャンスは正直です。今のところ気候変動による災害の深刻化が向こう数年以上は続くものと思われます。災い転じて福となせるよう、感応度を研ぎ澄ませておきたいものですね。

2019.10.01

人工肉とビジネスチャンス

 このコラムの読者にも、ごく最近の話として人工肉の話題に触れたことのある方が増えてきているかもしれません。実際にアメリカではBurger Kingがこの8月からImpossible Foodsという会社が売り出した人工のミートパテを使ったImpossible Whopperという商品を売り出してちょっとしたブームになっていますし、Beyond Meatというスタートアップが売り出したBeyond Burgerも大きな話題になっているのだそうです。

 環境ビジネスコンサルタントの私がいきなり人工肉ハンバーガーの話題を始めると、「ついに西田もネタ切れか?」と思われる向きがあるかもしれません。実際は全く違いまして、先ごろスウェーデンの女子高校生が切れ味鋭い演説で世界の耳目を集めた気候変動サミットでも注目された、温室効果ガス削減に関する大きな可能性の一つが食肉供給であることによるものです。

 世界で排出されている温室効果ガスのうち、およそ15%は畜産業によるものであるという統計は、特に日本ではあんまり関係ないと思われているかもしれません。でも、たとえばアメリカでは毎年240万頭もの牛が食肉加工用に出荷されているのだそうです。この牛が出すゲップが温暖化に及ぼす影響がバカにならないのです。そこで今注目されている技術が人工肉、すなわち植物を肉に似た素材へと加工する技術なのです。

 アメリカでは環境対策というよりむしろ健康志向の人を中心として売り上げが伸びているそうですが、仮に食糧生産の見直しで温室効果ガスの削減ができるとしたら、そこには一定の市場評価がついて回るのではないかということは申し上げられます。

 具体的には社会的インパクト投資が評価する基準、たとえばTCFD(The FSB Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の求める基準を満たす企業行動として評価されるものなので、マクドナルドやバーガーキングなどの大手は特に、投資家に対する意識から温室効果ガス削減につながる取り組みとして選好的に採用を増やすのではないか(あくまで「売れれば」という条件が付きますが)と思われるわけです。

 だとしたら、旨味の調整や味付けなど、日本企業が得意とする部分で市場開拓の可能性があるのではないでしょうか?なにせカニカマではほぼ本物、みたいな商品を作ってしまった国ですので、日本企業にとって「ほぼ牛肉」みたいな味付けを考えることは十八番ではないかと思うのです。

 現状、アメリカの人工肉は味の面で「それなりの」評価を得てはいるようですが、食べ始めに「本物の肉みたい」と思っても、食べ終わるころには「やっぱり違う」と言われる程度の差がまだ克服できずにいるようです。この隙間にこそ日本の技術が入れるチャンスがあるのではないか?私はそんな風にマーケットを見つめているのですが。

合同会社オフィス西田 メールマガジン登録
セミナーお申込み&お問合せ