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2019.09.18

環境ビジネスにとっての儲けどころとは

 ここ最近、SDGsすなわち「2030年のための持続可能な開発目標」などへの関心が高まっていることと合わせ、金融業界ではESG投資、あるいはESG金融と呼ばれる手法に注目が集まっています。中身的にもよく似た要素を持つこれらの新しい考え方にはどのような特徴があるのでしょうか?そして環境ビジネスにとってはどのような影響があるのでしょうか?

既にご存知の方も多いかもしれませんが、ESGとはEnvironment, Social and Governanceの頭文字を取った略語で、企業が環境・社会・ガバナンス(企業統治)に配慮した中身について、証券アナリストなどがいわゆる「非財務情報」を勘案し、投資政策の参考にするというものです。従って、ESG投資とは従来の財務情報に加えて、ESG関連の非財務情報を併せて投資先を決定する、という手法であると捉えていただいて間違いありません。銀行融資を加えて考えると「ESG金融」ということになります。

企業がESGのうちの「E:環境」に配慮することになれば、当然ですが環境ビジネスを手掛ける企業にとっては積極的なビジネスチャンスが増えると思われます。特に環境負荷を低減させるための省エネ技術や代替原料などの導入にはより多くの機会が訪れるでしょう。

「S:社会」についてもある程度同じような効果が期待できるかもしれませんが、こちらはたとえば地域社会との共生・ネットワーク醸成など関係づくりや従業員の健康管理(いわゆる健康経営)などが中心となるので、環境ファクターそのものに比べると直接的な意味での事業機会は多くないかもしれません。それでも例えば地域とのパートナーシップに基づく環境美化や学校教育事業への参画などの場面では、環境につながる活動が取り上げられる機会もあったりするので、機会を広げる意味においてどのような取り組みがなされているのか、是非とも注視頂きたいものだと思います。

さて、問題はGovernanceすなわち「G:企業統治」についての話ですが、EやSが積極的な評価につながる項目であることに対し、Gはどちらかというと問題回避型の取り組みに対する評価項目が多くなるという違いがあります。「まさか〇〇のようなことはないだろうね」、と言ったネガティブスクリーン的な視点に立ったチェック項目がどうしても多くなりがちなのです。

環境ビジネスの中でも廃棄物関連の仕事をしていると、立場上この点がよく見えてしまうという話を聞かされることがあります。捜査に当たる刑事の視点に似ているのですが、「廃棄物を見ればその企業が何をやっているかがよく分かる」ということですね。事業系一般廃棄物であれば廃棄前の分別がどの程度なされているかによって社内の規律順守度合いが解り、産業廃棄物でも食品系の廃棄物であれば品質管理面の状況がつぶさに解る、というような・・。

いささか誇張した例として、特定の事案ではありませんが、たとえば食品加工の工場からカビのたくさん生えた原材料が廃棄されていて、廃棄物処理事業者からそのような情報がもたらされたとなると、潜在的にとても大きなリスクを抱えている危険性があると言われても仕方ないと思います。

他方で世の中には、新しい技術や製品の開発、市場拡大の取り組みなどについて、前向きなガバナンスの成果として評価する視点があることも忘れてはならないと思います。このような動きは、単に廃棄物の中身を見たからわかるというものではないかもしれませんが、たとえば「これまでよりも試薬のケースが格段に多く廃棄されている」「研究開発棟から出される廃棄物の量が多くなった」などの変化があれば、社内で何か前向きな対応が取られている気配を感じられるのではないかと思われます。

そういう意味では、ESG投資を担当する証券会社のアナリストが、産廃処理事業者の持っている情報を欲しがる場面というのが多分出てくるだろうと、いやもしかしたらすでにそのような検討や試行が、始まっていてもおかしくないと、裏付けはありませんが単なる当て推量以上の自信を持って言えるわけです。

廃棄物事業者がこの新しい動きを正真正銘のビジネスチャンスへと高めてゆくためには、信頼できる情報を積極的に開示する仕組みが必要になってくるのではないかと思います。ある程度公的な色彩を帯びたそのような仕組みがあれば、企業も安心して産廃処理を委託でき、証券アナリストも自信を持ってその情報を活用できるようになるのではないでしょうか。

世界には、まだ廃棄物分野のこのようなサービスで金融分野が裨益しているという事例はないと思います。私がこんなことを言えるのも、他国に比べて廃棄物の適正処理が全国的に広く普及している日本ならではの話であり、その意味で日本がこの流れを捉えた取り組みを始めるなら今ではないか、とも思えるのですが。

2019.09.03

パラダイムの転換とビジネスチャンス

 最近、同業の方々などとあちこちでお話する機会がありまして、今日はその中でおぼろげに見えてきた未来のビジョンについて共有させていただきたいと思います。

 産業革命以降今日まで、人類は主に地下資源を中心として地球が持つさまざまな資源を収奪し、食いつぶす形で文明を発達させてきたという認識に大きな齟齬はないと思います。

 世間で最近よく言われる「持続可能性」、なるコトバについて、地下資源の収奪をベースとしたモデルが持続可能でないという考え方がまずベースにあるということを改めて認識する機会があったわけです。

 この話題に関してはまず世界各地の温度差や時間差・地域間格差などを捨象して、議論をものすごく単純化してお話すると、将来の地球は人類が資源の収奪を続けていてはもはや持たない、だったら収奪を止めるしかない、という考えに進んでゆくわけです。収奪しないとなると、あとはこれまで手にした資源をなるべく効率的に循環させることでしのぐしかない、ということになりますね。

 実はこれこそが、サーキュラーエコノミーと言われる考え方の基礎なのです。そしてその最先端を行く会社が現在私のクライアントになってくれているというのは大変幸運な巡り合わせです。何もこれは今に始まったことではなく、明治以前から日本では、勿体ないというコトバに代表されるとおり、サーキュラーエコノミーに通じる美徳を尊重してきた歴史があります

 実は今、新しいISO規格としてこのサーキュラーエコノミーを取り上げるための基礎的な議論が各国間で行われているところなのですが、議論はまだまだ紛糾しており、何を持って規格とするのか、それはどのような縛りを持つべきものなのかと言ったあたりについてもまだ全容は見えておりません。21世紀後半の地球がよりよい星になりますように、そんな思いを反映できるような社会へと世界は少しずつ変化しているのです。

 環境ビジネスに関わる会社のスタンスとしては、主に対応のタイミングで分けると次の3つになると思います。すなわち、①来るべきISO時代を先取りしてビジネスチャンスを積極的に開拓する、②ISO基準の中身が決まって発表されたらその中身を確認して、素早く対応することで競合他社に先んじる、③ISOが普及する流れに沿って社会の変化を見極めて、どうしても対応しなくてはいけないと判ったらそこで手を打つ。

 各社各様の考え方はあると思いますが、私は日本の環境ビジネスが他の先進国の場合に比べて①の対応を取りやすい位置にいると認識しています。それは、①国内の環境基準が世界に比べて厳しくなっている部分があること、②全国津々浦々まで、同じレベルの環境対策が普及していること、③このため、主に処理事業者の技術水準が高いこと、などによるのですが、だとすれば後は高い技術を応用したビジネスモデルを仕組みとして構築すれば良い、ということになるのではないでしょうか。このビジネスモデル作りについては、残念ながら環境ビジネスがやや不得意としている要素だと思います。

 ここで一つの実例を挙げましょう。A県に本社のあるB社は、特許技術である金属廃材の選別工程を活用して、再生材でバージン材と同等のスペックを実現することに成功しました。普通の会社なら、この特許技術を売り物にするところだと思いますが、同社の対応はユーザーたるメーカーや、その機械を使う事業者などを巻き込んで、バリューチェーン全体をカバーするプラットフォームを構築し、素材メーカーとしてその主導的な立場に立ったことでした。今や同社の再生材は、品質の良さや価格の安さに加えて、化石燃料を大量に使うバージン材に比べてカーボンフットプリント(その製品1単位を作るのに要したCO2排出量の累積値)が極めて低いことなどから欧州の大手メーカーが強い関心を示すようになっています。

 機会を捉えてパラダイムの転換まで一気に推し進めたB社の例は、時代の変革期に臨む経営者が学ぶべき好例だと思います。あなたの会社が目指すパラダイムの転換はどんなものになるのでしょうか?

2019.08.27

儲かる環境ビジネスとは

先日、いま業界で注目されている「ちょっと違う」ビジネスモデルを見学しに行くチャンスがあったので、今日はそこで得たインサイトを共有させていただきます。

 X県とY県の県境に近い地方中核都市にあるA社は、廃棄物処理事業者として長い社歴と地元における信用を確立した優良企業です。本来ならば確固たるその事業基盤を強みとした堅実経営を志向してもおかしくないところ、A社の社長はそうしませんでした。最優先で経営資源を注ぎ込んだのが新技術開発と新しいビジネスモデルのためのプラットフォームづくりだったのです。それはどんなものなのでしょうか?

 後から説明を聞けばすんなりと理解できる話ですが、特に新技術開発は経営的に大きなリスクを取る決断だったと思います。「捨てればゴミ、分ければ資源」とは、廃棄物処理業界では長らく言い古されたコトバです。同社が開発した技術がすごいのは、選別後の廃棄物がバージン材料の技術的仕様に近いところまで純化できることが実証された点です。まさに究極の選別技術と言っても過言ではないでしょう。しかも低コスト。

 多大な経営資源を注ぎ込み、ようやく技術を確立した、それが市場に受け入れられるだけの性能を示した、としましょう。普通の会社なら、この「技術」を売ろうとするはずです。いや、そもそも世の中には廃棄物処理事業者でなくても「こんなにすごい技術がある。是非これを買ってくれ」という営業スタンスを取る会社が無数に存在するのですが、今日はこの考え方こそがビジネスを動かなくする最大の理由だということを申し上げたいのです。

 A社が凄いのは、開発した技術の知的財産を保護したうえで、単に技術を売り込むのではなく、再生資源が未来の社会にもたらす価値そのものを提供しようとしていることです。

 環境ビジネスに関わる方なら、カーボンフットプリントという考え方をご存知の方も少なくないと思います。技術的仕様がほとんど変わらないバージン材とA社の再生資源ですが、実はカーボンフットプリントで見ると全然違う、A社の再生資源の方が圧倒的にCO2排出量が少ない、という認定された論拠があり、これが欧州を中心とした市場にものすごく高く評価されているのです(まだ日本では欧州のように性能が同じならカーボンフットプリントが低い再生材、という話にはなりにくいようです)。

 A社はそのような評価を承知したうえで、再生資源を使ってくれる候補となるメーカー、更にはその製品を使う事業者まで巻き込んで、バリューチェーン全体を包括するプラットフォームを作り上げました。この手法自体は、これまでも様々な場面で「〇〇協議会」や「〇〇協会」と言った形で使われてきたものなので、何も目新しいことはありません。ただ、そこでリーダー企業となることによってバリューチェーン全体でカーボンフットプリントの優位点を市場に対して訴求することができます。地方の一企業がリーダーになれたその理由は、品質保証につながる選別技術を開発したから、ということにつきます。

再生資源なので価格的に安く、仕様的にバージン材と遜色ないものが、カーボンフットプリントでも大きな優位性を示すとなれば、バリューチェーンにおける素材メーカーとしてのA社の立ち位置は盤石なものとなります。A社は名だたる大企業を従えたバリューチェーンのリーダーとして、まさに自社の再生品にとっての新しい市場を作り出しつつあるのです。

廃棄物処理事業者が、再生品の品質を上げ、新たな価値にフォーカスすることでプラットフォームのリーダーとなる。そして再生品の流通を盤石なものへと仕上げてゆく。ビジネスマインド的にいえば、「もはや産廃業者ではない」というくらいの変化です。でも、この取り組みこそがまさに儲かる環境ビジネスへと変わって行くためのカギなのです。A社はまず、その源泉たる技術力を「選別工程」に注ぎ込むことで未来の扉を開き、そしてプラットフォームを形成することで新しい市場の確立に成功しました。あなたはどうやってご自身の未来を開きますか?

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