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新着情報

2019.12.24

最初から決めておくメリット エコデザイン

 循環経済を巡る重要なコンセプトの一つに「エコデザイン」という考え方があります。製品のデザイン段階から、廃棄するときのことを考えておこうという取り組みです。解体時に部品を外しやすくしておく、リサイクルしやすい素材を使う、完全廃棄される部分を極力少なくする、等々の工夫があります。

 他方で消費財はどうしても消費者の注意を惹くような奇抜さや洗練されたデザインを目指してしまいがちです。結果として解体しにくかったり、廃棄される比率の高い製品になることも珍しくありません。そのような矛盾を解決するにはどうすれば良いのでしょうか?

 一つのアイディアは、製品設計段階から廃棄に関する意見を取り入れるというやり方で、設計時の打ち合わせに廃棄物処理を担当する人たちに入ってもらうというような取り組みが挙げられます。最近特に「動静脈連携」などという言われ方をしているようですが、もしもこの取り組みが上手く行くなら、さほどの苦労なくエコデザインは広まってゆくことでしょう。

 ところが残念ながら世の中はそこまでカンタンにはできておりませんで、特にメーカー側から「総論消極的賛成、各論絶対反対」みたいな反応が出ることも珍しくありません。考えてみればそれはその通りで、「消費者ニーズに応えることでこそ売上が上がる」という考え方を長いこと拠り所としてきたスタンスは、一朝一夕では変わりません。

 そこで一つの提案として、動静脈連携の輪に消費者代表にも入ってもらうという対応を取ることを検討いただきたいのです。いわば動静脈消費者連携、みたいな設計への取り組みで、製品ライフサイクルに関与する人たちのすべてに参加してもらうことによってより使いやすく循環経済に優しい製品にするための知恵が生まれやすくなると考えられるからです。

 廃棄物となった製品の先行きについては、修理による再利用、部品活用によるリビルド、解体とリサイクルなどがあります。それぞれどのような運命をたどるのか、そしてトータルで最終廃棄率をどこまで減らせるのか、すべての関係者を交えた中でオープンな議論ができることによって循環経済に資するデザインが生まれてくることにつながるのです。

 時代は今、まさに循環経済志向を強めつつあります。もし御社が今取り組まないとするなら、いつ取り組むのですか?

2019.12.17

尖ったニーズに商機あり

 最近、街行くサラリーマンの胸に虹色の輪っかを見かけることが多くなりました。国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)のシンボルマークだそうですが、それに相前後してこれまでよりも環境問題に関する話題を耳にする機会が増えたような気がしませんか?

 どうもそんな気がする、と思った方の感覚は多分当たっていて、SDGsが世の中に出てきたのが2015年の秋なのですが、金融の世界においても年金積立金管理運用独立行政法人が「責任投資原則」に署名したのが同じ年の10月なのです。これにより大企業に対する投資家の要求において、環境保全への取り組みが今までよりも強く打ち出されるようになりました。

 ことは日本だけに止まらず世界に目を向けると、パリ協定が同じ2015年に成立していますし、G20による金融安定化理事会が気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を通じて企業行動の可視化を具体的な指針とともに示したのが2016年です。世の中の動きが本格化したのがちょうどそのくらいのタイミングなのですが、世界の大企業も一斉に対応を本格化させたのがちょうどこのあたりだと言えるでしょう。

 それから4年が過ぎ、今や世界の大企業はその調達行動を大幅に見直しつつあるというのが2019年末の状況です。繊維業界では、H&MやZaraなどがリサイクル繊維の供給元を探し、大手飲料メーカーでもコカ・コーラやペプシコはリサイクル材でできたPETボトルの採用を真剣に検討しています。これらに共通する購買の考え方は「多少高くても品質の良い『リサイクル材』の安定供給を受けたい」というものです。

 もともと飲料向けのPETボトルや衣料品に使われる繊維などは、製品の原価構造の中で占める比率が低く、コストファクターとして決定的なものではないことに加え、消費者が製品を評価すること以上に投資家が企業を評価する場合の判断材料になりやすいという特質があるのです。

 環境関連のニュースを見ていると、海洋プラスチック問題はなんだかとても深刻で、人類の知恵をもってしても抜本的な解決は難しいのではないか、と思わされるような内容ばかりです。このニュースを見ているのは消費者だけではありません。プラスチックを使っているすべての企業とその株主、さらにはアナリストもしっかりとニュースを見ています。

 企業経営者としては、このような社会的課題について何らかの具体的な対応を取ることが求められています。欧米の場合、対応を怠ると経営者の資質を問われて解任されることすらありえる状況です。

 他方で消費財の提供というビジネス本流の部分で手を抜くわけには行かないので、彼らは中途半端な妥協はしません。納得感のある対策を取り、同時に収益を上げ、株価を押し上げるような施策を取り続けなくてはいけないのです。ではどうするか?

 キーワードはまさに「高くても、品質の良いリサイクル材」です。ターゲットは米欧の大手企業で消費財を販売しているようなところが良いでしょう。異物の混じった低品質のリサイクル材はそもそも最初から選択肢に入らないので、中国やアジアのリサイクル業者が参入してくるにはまだ時間的な猶予がありそうです。

 こういった、「高くて品質の良いもの」を作るのは日本企業が十八番とするところです。繊維やプラスチックのみならず、たとえば紙でもリサイクル品で品質の良いものは引く手あまたになる状況です。狙うべきは各業界の一流ブランドです。化粧品やバッグ、靴などの包装やどうかすると素材として、「高くても品質の良いリサイクル材」は間違いなく売れ筋になるコンセプトです。2020年、オリンピックに向けた新商品開発の流れにも明らかにこの新しい潮流は影響を及ぼしています。

 もしもこの流れが一時のブームで終わらないなら、やがて中級品以下のリサイクル品にも活用の可能性が出てくることでしょう。クライアントが「100%リサイクル材」の表示をつけられるかどうかに勝負がかかっているとするならば、ベンダーとしてそれに応えるのが使命です。ぜひこの商機をつかんで明日への踏み台としてください。動くなら今しかないのです。

2019.12.10

パリ協定に見る、環境ビジネスで儲けるためのカギとは

 先週から今週にかけてスペインのマドリッドで開かれているCOP25という地球環境に関する国際会議は、報道各社が取り上げない日はない注目のされ方ですが、残念ながら日本のメディアのレポートは、ほとんどが尻切れトンボになっているため、多くの方はニュースだけ見ていても何が何だかさっぱり分からないと思います。ましてや、そこに儲けのネタが転がっていることに気づく方はまずいらっしゃいません。

 特にテレビニュースは酷いもので、如何に短時間の映像で視聴者の耳目を集めるか?みたいな切り口でしか報道しないので、会議の本筋はおろかビジネスとの関係性など、くみ取りたくてもくみ取れない程度の情報しか流しません。やれ日本が最も温暖化の被害を受けた国とされたとか、日本の大臣が石炭火力を選択肢に残すと言ったら批判されたとか、日本が関わった情報の切れっ端ばかりです。

はっきり言ってこんなニュースはどうでもよく、注目すべきはたとえば世界が本格的に再生可能エネルギーへと舵を切ったこと、そしてその中で大規模蓄電池の開発が次の技術的な課題であることが明らかになったことであろうと思います。この部分には、潜在的に使えるかもしれない技術を持っている日本企業がおそらく10や20では効かないくらいのオーダーで存在するはずです。

気候変動への「適応」と言う考え方も、もっと注目されて良い視点です。暖まってしまったものは仕方ないので、暖かくなった状態を前提にどうしたらよいか考えよう、という取り組みです。実はここにもビジネスのネタが沢山隠れているのです。ところが会議では、適応は途上国向けの課題だということで日本の報道各社がこのニュースを劣位においてしまいがちなので、日本にいる私たちの目に入ることはほとんどないのです。

でもなぜ私がこんなことをすらすら書けるのかというと、環境屋の世界ではこれらの話題は超の字がつくくらい「あったりまえ」の話だからです。コンサルタントとして、確かに横文字メディアは追いかけていますし、最新の動きは押さえるようにしているのですが、そんな努力をしても世間の環境屋と比べたとき、知識面でさほど大きな違いをもたらしてくれるわけではありません。克服すべき課題は他にあるのです。それは社内の段差、に他なりません。

日本では、環境事業を手掛けるほとんどの大企業がそうですが、ある程度の中堅企業でも、環境分野の仕事は事業子会社を作ってそこにやらせている、と言う例が圧倒的多数です。つまり、戦略は本社や持株会社が決め、専門の事業子会社がその戦略に従って、主に国内で事業を展開する、という決まり事になっているケースが多く、意思決定役となる本社や持株会社は必ずしも環境の専門家ではないのです。

そこに生じる情報の段差こそが、COP25でザクザクと掘り出されている宝の山から日本企業を遠ざけているのです。そんな会社のトップが言うのは、環境を手掛ける事業子会社には専門家が居て、彼らの知見に期待している、という決まり文句です。では聞きますが、その専門家から一度でも世界の動きを目に入れた提案が上がってきたことがありますか?

事業子会社と本社の間で、戦略を巡る熱い議論が戦わされているという事例が、たとえ少数でも存在しているならば、世界の環境ビジネス市場で日本企業はもっと目立っているはずです。それが全くそうでないという事実こそが、段差の存在を雄弁に物語っているのです。

勘の良い方はもうお分かりかもしれませんが、事業子会社には「経営責任がない」のです。つまり「決められたことをする」のが彼らの仕事100%であって、経営責任は本社や持ち株会社の専売特許だという事実が、事業子会社の専門家をして世界のニュースに対する感性を失わせてしまっているのです。そういうマインドでマドリッドに出張したところで、儲けのチャンスは決して目に入ってくることはないでしょう。

ではどうすれば良いのか?これには二つの解決策があります。一つは経営側(本社や持ち株会社)が自分たちと同じ目線に環境ビジネスの分かるアドバイザーを置くことです。今一つは事業子会社に戦略立案権を付与する、もっと言うと独立させる、という方法です。財務的に独立は難しい、何とか今の体制でビジネスチャンスをつかみたい、と言う経営者にお勧めなのは前者の対策を取ることです。

COP25が終われば、気候変動をめぐる各種施策の動きも更に加速されます。その中にあって「環境は難しいから」と言って後回しにしていると、儲けのチャンスはすぐに飛び去って行ってしまうのです。チャンスの女神に後ろ髪がないことを、この機会にもう一度思い出してください。タイミングを失わずに行動した者にだけ、女神は振り向くのだということも

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