最近、製造業では至る所でRFIDなどを活用した「位置情報のデータ化」が進んでいます。流通を支える大規模倉庫では、この流れについて来られない中小企業による製品などを対象とした「タグ付け」という仕事が存在しており、倉庫内で働くタグ付け専門の下請業者が存在していたりします。タグはそのまま製品に組み込まれてしまうと、基本的にはその役目を終えるのですが、なにせICが組み込まれているため、多くの場合は放っておけば数十年は使えるようにできているのだそうです。
一説によると自動車は一台が約3万点もの部品から出来上がっているのだそうですが、仮にこのうち大半にICタグが付けられているとすると、故障して取り替えられたりする履歴情報もその気になれば追いかけられるということになります。
また、スーパーの商棚に並んでいる製品のほとんどにはバーコードがついています。生鮮品などスーパーが自分で付けたものもありますが、メーカー品の多くは工場でつけられたもので、製造から輸送、販売までのデータが一元的に紐付けられています。
このデータも、家庭の冷蔵庫に入ったからと言って消えてなくなるわけではなく、その気になればレジの向こう側で起こっていることをトレースするための手掛かりになるのです。消費者が冷蔵庫から出し入れするたびにバーコードリーダーが働けば、たとえば消費期限内に食べられたかどうか、もっと言えばいつ消費されたか。お米のように、開封後しばらくかけて消費されるものは、次の購買までの期間を捉えることができれば「何日くらいかけて消費されたか」がわかるようになります。ちょっとメンドクサイかもしれませんが、同じようにバーコードがついている洗濯洗剤やシャンプーなども同じことが可能なはずです。
ガソリンスタンドでも、クルマの個体識別ができるのですから、いつどこでどのくらい給油したのかをトレースすることは技術的に可能だろうと思われます。小売り各社の系列が違うことでデータのやり取りがしにくいという点はあるかもしれませんが、でもそれはスーパーやドラッグストアも同じです。
このようなデータが共有されるようになると、たとえば消費者には「そろそろ買い時」または「賞味期限が近い」ことを知らせてくれるサービスが実現できそうですし、小売店はキャンペーンを計画するための手掛かりが得られます。またメーカーでは容器のサイズやデザインを再検討するための情報として活用できそうですし、流通ではロットの組み方を見直すための情報として注目が集まりそうです。
いずれも、店から消費現場までのラストワンマイルに注目した考え方ですが、スマホが広く行き渡った現代社会では、インフラの問題はほぼ解決している状態にあります。今までこの部分のデータが欠落していたことで発生していたフードロスや家庭内死蔵品の問題を解決し、新たな商機をひねり出すためにも、ラストワンマイルを商機と捉えた取組みに注目したいと思います。