私は環境ビジネスを主な守備範囲として、海外展開のためのコンサルティングを提供しているのですが、営業開拓のために展示会を使うことが少なくありません。自社出展をする場合もあれば、展示会に出展している会社の中で海外市場に向いた技術やサービスはないか、いわゆる「ネタ探し」をしに行くこともあります。
展示会にもさまざまな種類があって、総合的なものから専門的なもの、規模の大小を含めて毎回異なった発見があります。展示内容も、新素材や革新的な加工法など汎用性の高い要素技術的なものから、たとえば食品の消毒プロセスのためのLED発光装置など、ユーザー層を確定させたピンポイントのアプリケーションまでさまざまです。
これまで数多くの環境展示会を見てきて、これは共通した改善点だと思うことがあります。特に要素技術の場合がそうなのですが、アプリケーションであっても、「何に効く」あるいは「何に良い」という効能の表現がコストダウンや売り上げ増など想定ユーザーの効用のみについて語られている場合が多く、本来環境ビジネスにとっては重要な視点である公的なメリットについてあまり語られていない例が多いということです。具体的にはどんな点なのでしょうか?
モノによってはメーカー側が「そこまで責任持てない」という場合もあるかもしれませんが、ユーザー目線の訴求ができていないとどうしても、いわゆるプロダクトアウト、もしくはサプライヤー側の論理のみで説明されることになり、せっかくの商品力が際立たないことになります。LED発光装置であれば単に消毒力が強いことのみではなく、従来の灯具に代替することでCO2排出削減が進み気候変動対策にもなる、という部分についての訴求がしっかりと出来ればさらに強いアピールになるのです。
このような商品力の定義については、ユーザーに対する一次的効用のみではなく、社会に対する二次的効用についても目配りをする必要が出てきています。国連が定めた「2030年のための持続可能な開発目標(SDGs)もその一つですし、ESG投資の考え方に基づいた金融スキームなども二次的効用を重視します。
展示会の多くは、朝から夕方まで会場に詰めている必要性があるためか、技術開発を担当したエンジニアや営業マンなど、比較的若い方が説明役として現場に立っていることが多いようです。このような若い方にこそ、社会が求める二次的効用について学んでいただき、自社のプレゼンに生かしてもらいたいものです。そのためには、会社が社会に対してどのような貢献を目指すのかについて明確な指針が示されるべきでしょう。社会とのかかわりについて、経営トップの意識が最も問われる部分です。