今や世界にその名を知られる片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんですが、その著書「人生がときめく片付けの魔法」で彼女が世界に発信したのは、持ち主の「心の持ちよう」が全てを変える、という独自性の高い考え方でした。彼女のビジネスモデルはいったいどこが優れていたのでしょうか?
彼女の考え方について、賛否はあると思いますが、結果として世界中に広まり、多くの人がその手法を実践しているのは紛れもない事実だと思います。
結果的に大きな市場を創造することにつながったそのアプローチは、環境ビジネスが世界を目指す上で大変参考になる、私はそんなふうに考えています。そのポイントをいくつか挙げてみたいと思います。
1) まず、「実効性ある方法論から入る」こと。近藤さんの場合は「捨てる」こと、その際に「思い」についても納得できる方法で整理することが該当すると思います。そうすることでリバウンドしない片付けができるようになる、というロジックで、高い実効性を訴求しています。「まずはやってみよう」と思わせるアプローチです。
2) そこで、ポイントとなるのが「持ち主の心」であることを著書で解説し、妥当性を高めていること。片付けるのもちらかすのも、全て持ち主(=である読者)次第であることを納得しやすい言葉で説明しています。捨てるかどうかを決める基準も「心がときめくかどうか」という、極めて主観的なものに特化させています。客観性を排除することで、読者に対して「すべてはあなた次第」であることを説き、捨てたことについての「反芻的な疑問をシャットアウトする」ことをサポートしています。
3) 以降は、その後のリバウンドを防ぐための考え方や習慣について、事例の紹介となぜそうなのかという解説が中心で、「技術論・方法論は最初に出てきたものだけ」に限られています。
片付けは、生活習慣そのものでもあるため、難しい話は厳禁です。環境ビジネスも、言ってみれば社会全体の生活習慣に深くかかわる事業である分だけ、彼女のアプローチがヒントになる要素は少なくありません。具体的には、まず「実効性ある方法論から入る」ことで投資の成果を約束し、潜在顧客の関心を引くことができます。次に潜在顧客が自信を持って「反芻的な疑問をシャットアウトする」ことができるようなロジックを提供できれば、周囲の雑音を気にせず投資を検討してもらえることになります。さらに「技術論・方法論は最初に出てきたものだけ」に限り、考え方を繰り返し説明することで、疑念なくこちらが提供するソリューションのみを検討してくれることになるのです。
このアプローチを採用するためには、①提供するサービスが実効性の高いものであることに加えて、②サービスの背景にオリジナリティの高い哲学や考え方が伴っていなくてはなりません。一般的に日本の環境ビジネスは技術力が高いため、①についてはあまり問題がないものの、②の部分を外国人にも明示的に解りやすく説明できるという事例はまだ限られているようです。
片付けに悩み、近藤さんの考え方に共鳴した人たちが世界中で新たな顧客となりました。同様に、環境問題に悩む社会に対しても、共鳴しうる考え方を懇切丁寧に発信すること、納得してもらったうえで実践してもらうこと、その部分を持続的にサポートして行くことなどを通じれば、市場は際限なく広がってゆくのです。
もうお分かりいただけたと思うのですが、環境ビジネスのグローバル化に際しては「オリジナリティあふれる考え方」こそが、必須条件として求められる強みそのものである、ということです。逆に言うと、技術の優秀さだけを訴求する方法にはおのずと限界があり、考え方で勝負するアプローチを取らないと、新たな市場を開拓することにはつながらないのです。
技術の説明と合わせて、あなたの会社だけが持つオリジナルの考え方を、分かりやすい言葉で堂々と潜在顧客に説明してゆきましょう。それを繰り返すことで、それまで誰も開発できていなかった新しい市場への扉が開かれて行くのです。