最近、同業の方々などとあちこちでお話する機会がありまして、今日はその中でおぼろげに見えてきた未来のビジョンについて共有させていただきたいと思います。
産業革命以降今日まで、人類は主に地下資源を中心として地球が持つさまざまな資源を収奪し、食いつぶす形で文明を発達させてきたという認識に大きな齟齬はないと思います。
世間で最近よく言われる「持続可能性」、なるコトバについて、地下資源の収奪をベースとしたモデルが持続可能でないという考え方がまずベースにあるということを改めて認識する機会があったわけです。
この話題に関してはまず世界各地の温度差や時間差・地域間格差などを捨象して、議論をものすごく単純化してお話すると、将来の地球は人類が資源の収奪を続けていてはもはや持たない、だったら収奪を止めるしかない、という考えに進んでゆくわけです。収奪しないとなると、あとはこれまで手にした資源をなるべく効率的に循環させることでしのぐしかない、ということになりますね。
実はこれこそが、サーキュラーエコノミーと言われる考え方の基礎なのです。そしてその最先端を行く会社が現在私のクライアントになってくれているというのは大変幸運な巡り合わせです。何もこれは今に始まったことではなく、明治以前から日本では、勿体ないというコトバに代表されるとおり、サーキュラーエコノミーに通じる美徳を尊重してきた歴史があります
実は今、新しいISO規格としてこのサーキュラーエコノミーを取り上げるための基礎的な議論が各国間で行われているところなのですが、議論はまだまだ紛糾しており、何を持って規格とするのか、それはどのような縛りを持つべきものなのかと言ったあたりについてもまだ全容は見えておりません。21世紀後半の地球がよりよい星になりますように、そんな思いを反映できるような社会へと世界は少しずつ変化しているのです。
環境ビジネスに関わる会社のスタンスとしては、主に対応のタイミングで分けると次の3つになると思います。すなわち、①来るべきISO時代を先取りしてビジネスチャンスを積極的に開拓する、②ISO基準の中身が決まって発表されたらその中身を確認して、素早く対応することで競合他社に先んじる、③ISOが普及する流れに沿って社会の変化を見極めて、どうしても対応しなくてはいけないと判ったらそこで手を打つ。
各社各様の考え方はあると思いますが、私は日本の環境ビジネスが他の先進国の場合に比べて①の対応を取りやすい位置にいると認識しています。それは、①国内の環境基準が世界に比べて厳しくなっている部分があること、②全国津々浦々まで、同じレベルの環境対策が普及していること、③このため、主に処理事業者の技術水準が高いこと、などによるのですが、だとすれば後は高い技術を応用したビジネスモデルを仕組みとして構築すれば良い、ということになるのではないでしょうか。このビジネスモデル作りについては、残念ながら環境ビジネスがやや不得意としている要素だと思います。
ここで一つの実例を挙げましょう。A県に本社のあるB社は、特許技術である金属廃材の選別工程を活用して、再生材でバージン材と同等のスペックを実現することに成功しました。普通の会社なら、この特許技術を売り物にするところだと思いますが、同社の対応はユーザーたるメーカーや、その機械を使う事業者などを巻き込んで、バリューチェーン全体をカバーするプラットフォームを構築し、素材メーカーとしてその主導的な立場に立ったことでした。今や同社の再生材は、品質の良さや価格の安さに加えて、化石燃料を大量に使うバージン材に比べてカーボンフットプリント(その製品1単位を作るのに要したCO2排出量の累積値)が極めて低いことなどから欧州の大手メーカーが強い関心を示すようになっています。
機会を捉えてパラダイムの転換まで一気に推し進めたB社の例は、時代の変革期に臨む経営者が学ぶべき好例だと思います。あなたの会社が目指すパラダイムの転換はどんなものになるのでしょうか?