更新情報 | 合同会社オフィス西田|人財獲得戦略・技術開発戦略はお任せください。
ホーム > 新着情報

新着情報

2019.09.24

サーキュラーエコノミーとビジネスチャンス

 このところ私は自己紹介のとき、「環境ビジネスコンサルタントです。最近はサーキュラーエコノミーに注目しています。」と言うようにしています。
そうすると、決まって
「サーキュラーエコノミーって、リサイクルの事でしょ?」
と問い返しをいただきます。

ここ2年ほど、さまざまな場面で似たような質問を頂いてまいりました。完全に間違っているとは言えませんし、現象的にはほぼ合っているので、「そうですけど、思想的な背景が少し違うんですよ。」とお応えしています。

そうならそれでいいじゃん、なんでわざわざカタカナを使うんだろう?なんだかややこしい奴だな、多分そんな風に思われているのではないかと思いつつも、これまでのリサイクルとは思想的にかなり違いのあるアプローチなので、その点に触れようとするとどうしても「サーキュラーエコノミー」という括りでお話をせざるを得ないのです。

その理由のうち、最大のものは「今までのリサイクルは、結局資源消費経済であるリニアエコノミーにとって、延命策の一つに過ぎない」というものです。主に地下から産出されるさまざまな鉱物資源が精製・加工されて投入される経済は、消費された資源が最終的には廃棄されるという一直線(リニア)な流れから形成されています。

どんな国でもこの経済を長く続けると、やがて廃棄物処理が社会の課題となることは構造的に明らかです。アメリカやオーストラリアのように広大な土地がある国であれば、他国に比べて長い時間的余裕を持つことができますが、それとて根本的な課題解決にはなっていないと言わざるを得ません。その中で、少しでも廃棄物処理の負荷を減らすための対策として振興されたのがリサイクル、そして3R(リデュース・リユース・リサイクル)という考え方だったわけです。日本では特に、「ごみの減容化による最終処分場の延命措置」とされてきました。

これに対してサーキュラーエコノミーとは、経済の仕組みそのものを資源投入→消費→廃棄という流れから、既存資源の循環活用へと変えて行こうとする取り組みの事で、根本的な思想に大きな違いがあるのです。

基本的には新たな地下資源の採掘をなるべく当てにしない、という考え方なので、使用済みの資源すなわち廃棄物に近い対象物からいかにしてバージン材に近い仕様を再生できるか、という技術的なソリューションの成否が第一のカギになります。

価格的に競争力を持てるようなら、この技術そのものを切り売りするビジネスモデルも成り立ちうるかもしれません。ただ、今回提案したいと考えているのはそのソリューションを核にした新しいビジネスの仕組みを考えてみませんか?ということなのです。

再生材は、バージン材に比べるとどうしても仕様面で劣後しがちなことに加えて、思ったほど安くないこと、供給が安定しづらいことなどから、細々とリサイクルされては限られた市場に再投入されていた、というのがこれまでの展開でした。

この状況について、もしも技術的なブレークスルーを実現できれば、バージン材に比べて環境負荷の少ない再生材を主原料として市場投入することができるのではないか、そうすることによって地球の持続可能性はぐっと高まるのではないか、というのが「サーキュラーエコノミー」の考え方なのです。

今仮に、価格的にも安く、安定的な供給量を満たしながら、バージン材とそん色ない仕様の再生材を提供できるようになったとしましょう。世の中には、その技術を投入しただけで新しく広がる市場もあるかもしれませんが、せっかくそんな再生材を提供できるのであれば、もう少し気合を入れたビジネスモデルを作るほうが良いですよね、というのが私の提案です。

具体的には、環境負荷が少ないこと、持続可能性に資するビジネスであること、そのような原材料の活用はSDGsに貢献するものであることなどを、協議会的な仕組みで取引先と共有できるようにすべし、というものです。

なにせ世の中は、リニアエコノミーを前提とした仕組みがしっかりと出来上がっているので、そうでもしないとサーキュラーエコノミーへの乗り換えが加速するとは限らないのです。またそうだとすると、サプライチェーンのあり方そのものから少し手を入れてゆく取り組みが必要になってくるだろう、ということですね。

バージン材に比べて価格面・品質面・供給面で競争力のある再生材を世に送り出す。チャレンジのためのハードルは低くありません。でも、たとえば品質面の基準値を少し下げた市場を相応の価格で確保できるなら間違いなく脈ありにできる話だろうと、私はそんなふうに考えているのですが。

2019.09.18

環境ビジネスにとっての儲けどころとは

 ここ最近、SDGsすなわち「2030年のための持続可能な開発目標」などへの関心が高まっていることと合わせ、金融業界ではESG投資、あるいはESG金融と呼ばれる手法に注目が集まっています。中身的にもよく似た要素を持つこれらの新しい考え方にはどのような特徴があるのでしょうか?そして環境ビジネスにとってはどのような影響があるのでしょうか?

既にご存知の方も多いかもしれませんが、ESGとはEnvironment, Social and Governanceの頭文字を取った略語で、企業が環境・社会・ガバナンス(企業統治)に配慮した中身について、証券アナリストなどがいわゆる「非財務情報」を勘案し、投資政策の参考にするというものです。従って、ESG投資とは従来の財務情報に加えて、ESG関連の非財務情報を併せて投資先を決定する、という手法であると捉えていただいて間違いありません。銀行融資を加えて考えると「ESG金融」ということになります。

企業がESGのうちの「E:環境」に配慮することになれば、当然ですが環境ビジネスを手掛ける企業にとっては積極的なビジネスチャンスが増えると思われます。特に環境負荷を低減させるための省エネ技術や代替原料などの導入にはより多くの機会が訪れるでしょう。

「S:社会」についてもある程度同じような効果が期待できるかもしれませんが、こちらはたとえば地域社会との共生・ネットワーク醸成など関係づくりや従業員の健康管理(いわゆる健康経営)などが中心となるので、環境ファクターそのものに比べると直接的な意味での事業機会は多くないかもしれません。それでも例えば地域とのパートナーシップに基づく環境美化や学校教育事業への参画などの場面では、環境につながる活動が取り上げられる機会もあったりするので、機会を広げる意味においてどのような取り組みがなされているのか、是非とも注視頂きたいものだと思います。

さて、問題はGovernanceすなわち「G:企業統治」についての話ですが、EやSが積極的な評価につながる項目であることに対し、Gはどちらかというと問題回避型の取り組みに対する評価項目が多くなるという違いがあります。「まさか〇〇のようなことはないだろうね」、と言ったネガティブスクリーン的な視点に立ったチェック項目がどうしても多くなりがちなのです。

環境ビジネスの中でも廃棄物関連の仕事をしていると、立場上この点がよく見えてしまうという話を聞かされることがあります。捜査に当たる刑事の視点に似ているのですが、「廃棄物を見ればその企業が何をやっているかがよく分かる」ということですね。事業系一般廃棄物であれば廃棄前の分別がどの程度なされているかによって社内の規律順守度合いが解り、産業廃棄物でも食品系の廃棄物であれば品質管理面の状況がつぶさに解る、というような・・。

いささか誇張した例として、特定の事案ではありませんが、たとえば食品加工の工場からカビのたくさん生えた原材料が廃棄されていて、廃棄物処理事業者からそのような情報がもたらされたとなると、潜在的にとても大きなリスクを抱えている危険性があると言われても仕方ないと思います。

他方で世の中には、新しい技術や製品の開発、市場拡大の取り組みなどについて、前向きなガバナンスの成果として評価する視点があることも忘れてはならないと思います。このような動きは、単に廃棄物の中身を見たからわかるというものではないかもしれませんが、たとえば「これまでよりも試薬のケースが格段に多く廃棄されている」「研究開発棟から出される廃棄物の量が多くなった」などの変化があれば、社内で何か前向きな対応が取られている気配を感じられるのではないかと思われます。

そういう意味では、ESG投資を担当する証券会社のアナリストが、産廃処理事業者の持っている情報を欲しがる場面というのが多分出てくるだろうと、いやもしかしたらすでにそのような検討や試行が、始まっていてもおかしくないと、裏付けはありませんが単なる当て推量以上の自信を持って言えるわけです。

廃棄物事業者がこの新しい動きを正真正銘のビジネスチャンスへと高めてゆくためには、信頼できる情報を積極的に開示する仕組みが必要になってくるのではないかと思います。ある程度公的な色彩を帯びたそのような仕組みがあれば、企業も安心して産廃処理を委託でき、証券アナリストも自信を持ってその情報を活用できるようになるのではないでしょうか。

世界には、まだ廃棄物分野のこのようなサービスで金融分野が裨益しているという事例はないと思います。私がこんなことを言えるのも、他国に比べて廃棄物の適正処理が全国的に広く普及している日本ならではの話であり、その意味で日本がこの流れを捉えた取り組みを始めるなら今ではないか、とも思えるのですが。

2019.09.03

パラダイムの転換とビジネスチャンス

 最近、同業の方々などとあちこちでお話する機会がありまして、今日はその中でおぼろげに見えてきた未来のビジョンについて共有させていただきたいと思います。

 産業革命以降今日まで、人類は主に地下資源を中心として地球が持つさまざまな資源を収奪し、食いつぶす形で文明を発達させてきたという認識に大きな齟齬はないと思います。

 世間で最近よく言われる「持続可能性」、なるコトバについて、地下資源の収奪をベースとしたモデルが持続可能でないという考え方がまずベースにあるということを改めて認識する機会があったわけです。

 この話題に関してはまず世界各地の温度差や時間差・地域間格差などを捨象して、議論をものすごく単純化してお話すると、将来の地球は人類が資源の収奪を続けていてはもはや持たない、だったら収奪を止めるしかない、という考えに進んでゆくわけです。収奪しないとなると、あとはこれまで手にした資源をなるべく効率的に循環させることでしのぐしかない、ということになりますね。

 実はこれこそが、サーキュラーエコノミーと言われる考え方の基礎なのです。そしてその最先端を行く会社が現在私のクライアントになってくれているというのは大変幸運な巡り合わせです。何もこれは今に始まったことではなく、明治以前から日本では、勿体ないというコトバに代表されるとおり、サーキュラーエコノミーに通じる美徳を尊重してきた歴史があります

 実は今、新しいISO規格としてこのサーキュラーエコノミーを取り上げるための基礎的な議論が各国間で行われているところなのですが、議論はまだまだ紛糾しており、何を持って規格とするのか、それはどのような縛りを持つべきものなのかと言ったあたりについてもまだ全容は見えておりません。21世紀後半の地球がよりよい星になりますように、そんな思いを反映できるような社会へと世界は少しずつ変化しているのです。

 環境ビジネスに関わる会社のスタンスとしては、主に対応のタイミングで分けると次の3つになると思います。すなわち、①来るべきISO時代を先取りしてビジネスチャンスを積極的に開拓する、②ISO基準の中身が決まって発表されたらその中身を確認して、素早く対応することで競合他社に先んじる、③ISOが普及する流れに沿って社会の変化を見極めて、どうしても対応しなくてはいけないと判ったらそこで手を打つ。

 各社各様の考え方はあると思いますが、私は日本の環境ビジネスが他の先進国の場合に比べて①の対応を取りやすい位置にいると認識しています。それは、①国内の環境基準が世界に比べて厳しくなっている部分があること、②全国津々浦々まで、同じレベルの環境対策が普及していること、③このため、主に処理事業者の技術水準が高いこと、などによるのですが、だとすれば後は高い技術を応用したビジネスモデルを仕組みとして構築すれば良い、ということになるのではないでしょうか。このビジネスモデル作りについては、残念ながら環境ビジネスがやや不得意としている要素だと思います。

 ここで一つの実例を挙げましょう。A県に本社のあるB社は、特許技術である金属廃材の選別工程を活用して、再生材でバージン材と同等のスペックを実現することに成功しました。普通の会社なら、この特許技術を売り物にするところだと思いますが、同社の対応はユーザーたるメーカーや、その機械を使う事業者などを巻き込んで、バリューチェーン全体をカバーするプラットフォームを構築し、素材メーカーとしてその主導的な立場に立ったことでした。今や同社の再生材は、品質の良さや価格の安さに加えて、化石燃料を大量に使うバージン材に比べてカーボンフットプリント(その製品1単位を作るのに要したCO2排出量の累積値)が極めて低いことなどから欧州の大手メーカーが強い関心を示すようになっています。

 機会を捉えてパラダイムの転換まで一気に推し進めたB社の例は、時代の変革期に臨む経営者が学ぶべき好例だと思います。あなたの会社が目指すパラダイムの転換はどんなものになるのでしょうか?

合同会社オフィス西田 メールマガジン登録
セミナーお申込み&お問合せ