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2020.03.10

ジャストインタイムを意識する(2)

 先週は、廃棄物ビジネスが革新的なサーキュラーエコノミーへと展開するために最も重要な要素は納期意識である、というお話をしました。再生材と言えどもユーザーからすれば素材=原材料の一つなので、製造工程を管理する上での重要性は他の素材と全く変わるところがありません。百歩譲って品質面の妥協はありえるにせよ、安い再生材だから納期が遅れても良い、なんていう理屈は全く通らないのです。

 製造業では、原材料についてはある程度の工場在庫を持つという場合が少なくないので、多少の余裕代はあるかもしれませんが、どの業界でも限度いっぱいのコストダウンが当たり前になってきている現代社会にあって、はじめから客先の在庫に頼るという営業態度では客先からの信用を得る前に取引が終わってしまいます。

 すなわち、客先からの要望がそこまで及んでいるかどうかは別にして、たとえば納期について何か守るべきルールが存在しているとなれば、それは当然のように守るべき規範であるということになります。

 前置きが長くなりました。今週は、客先ごとの納期管理(と、品質・価格管理)をどうすれば良いか、という根源的な疑問に答えを出してゆきましょう。

1. 製造業になる
よくある廃棄物ビジネスにとって、おそらくこの点が最も革新的な取り組みになるのでないかと思うのですが、自身の工場で展開しているプロセスを「廃棄物の処理」から「再生材の製造工程」へと認識や呼び方を変えてみるというのが第一の提案です。つまり、マインド的に製造業へと近づけることで、納期意識を持ちやすくしようとする試みです。
もっとも、さすがにこれだけでは大きな効果は期待しづらいのですが、漢方薬と同じように後々になってじわじわ効いてくる性格の変化です。しかも自己認識に生じた変化は後戻りしづらいという特徴があります。

2. 工程管理の考え方を取り入れる
 対策の本命は、工場で行っている業務に「工程管理」という考え方を導入するところにあります。またの名を「生産管理」ともいうのですが、予算・設備・人員・原材料(Money/Machine/Man/Material: 4Mと言います)という投入資源を活用して、生産性・品質・コスト・納期・安全・士気・環境の7つ(俗にPQCDSMEと言います)を確保する、というのが基本的な考え方です。
 長い事、再生材の業界では廃棄物の処理手数料と再生材販売の両面で儲かる、再生材の市況によってはさらに儲かると言ったギャンブル的な収益性認識が幅を利かせていましたが、最近では中国への廃棄物輸出が禁止された流れを受けて、処理手数料や再生材市況もさまざまな影響を受けています。プラスチックなどでは品質面のマイナス影響が最も大きいと言われていますが、品質問題を解決するなら、ぜひ納期に関する対策も同時に考えるべきでしょう。
 産業廃棄物に関しては、工場へ入ってくる段階まではマニフェストでの管理が義務付けられており、そのデータを活用して工場内のフローを管理するところまでは珍しくありません。ラストワンマイルの情報として、そのデータに再生材の向け先と納期に関する条件を付加してやることで、一気通貫で納期管理ができるようになります。

3. 客先と納期に関するコミュニケーションをとる
 ここから先は営業部隊が活躍する場面になりますが、客先とは常に納期に関する最新の情報を確認するようにします。営業訪問でも、SFA経由の情報でも、メールでもLINEでも構いませんが、客先の担当者に対して常に最新の情報を入れるようにします、というかおそらくはすでにこれらのバランス良いミックスが会社ごとに存在していて、それらをフル活用した対応になると思います。
 現在、再生材でそこまでやるという事例はもしかしたらあまり多くないのかもしれません。ニーズがないから、という割り切りではなく、どうしたらもっと顧客要求に応えらえるようになるだろうか?という視点で納期管理とコミュニケーションを見直してみる発想を、ぜひ客先と共有いただきたいのです。

 世の中が、サーキュラーエコノミーへの価値を認めだす時代になって、製造業各社はどのように再生材を製品に組み入れられるかについて検討を深めています。再生材供給事業者もまた、ユーザーである製造業へジャストインタイム供給ができるようになることで、その付加価値は確実に高められるのです。

2020.03.03

ジャストインタイムが付加価値になることを意識する

 環境ビジネス、特に廃棄物関連の事業者と一般のビジネスを比べてみると、相互に気づいていない属性の違いがあちこちにあることに気づかされます。一般事業者は廃棄物ビジネスのことをよく知らないことに加えて、廃棄物処理事業者もふだんは「これが当たり前」と思って仕事をしているので、世の中の常識からズレていることをお互いがあまり気にしなかったりします。しかしながら今から先の時代にサーキュラーエコノミーの考え方が普及してくると、ズレたままでは仕事が上手く行かなくなる懸念が大きいのです。

 そんな意識のズレのうち最も大きいものが、一般企業なら当たり前の「納期」に関する意識です。一般のメーカーや流通業の場合だと、お客様から指定された納期は絶対的な要件で、必死にそれを守ることによって信用を作り上げてゆくというプロセスを踏むことでしか商売の基礎は築けないものです。ゆえに工場はコストをかけても早出・残業・三交代などさまざまな対策を取ることで何とか納期を守ろうとするわけです。

 これに対して、廃棄物処理事業者の場合だとお客様から言われるのは「引取日時」くらいなわけで、いわゆる「納期」について厳しく言われるというパターンはほとんどありません。このため業界には、とりあえず希望日時までに引き取ればその後の処理は自社のペースでゆっくりやればよい、的な文化が蔓延しています。引取手数料で赤字にならないためには、早出や残業など、コストアップ要因になるものを極力排除して工場運営をすることが重要だと考えられています。この考え自体は必ずしも間違っているわけではありません。

 そうだとすると、産廃処理事業者に必要なのはピーク時に受け入れた廃棄物を貯留させておける広大なヤードと、受け入れた廃棄物を安定的に処理できるだけの低コストな処理施設で、これらを使ってマイペースで処理を続けたうえで一年を通じて帳尻が合えば良いということになるのですが、果たしてそれで良いのでしょうか?

 私は、廃棄物処理事業者が革新的なサーキュラーエコノミーに挑戦できない最大のネックがここにあると考えています。処理した廃棄物は最終処分場へ送って埋め立てればそれでオシマイ、という流れとは異なり、基本的には再生材として顧客へ納品されなくてはいけないわけです。顧客は当然ながら、納期について厳しい対応を求めて来ます。そしてこの部分にこそ、廃棄物ビジネスが克服すべき最大のチャレンジが存在するのです。

 サーキュラーエコノミーの議論はまだ端緒についたばかり、ということもあり、再生材を巡る議論もその多くが品質問題に集中しています。実はそれ以外にも、たとえば安定供給やリスク管理など、克服されなければならない課題は数多く存在しています。その中でも納期対応問題は、上で述べた業界文化の違いもあって、多くの会社にとっては大きな隠れた課題なのです。

 この問題に気付いている経営者は、残念ながら決してまだ多くはありません。サーキュラーエコノミーへの関心がこれまでになく高まっていることから、業界全体で関心を高め、対策を考えてゆくべき時期に来ているのですが、その動きは必ずしも強くないのが2020年3月の実態だろうと思います。

では納期厳守のために何をすれば良いのか?このヒントは製造業や流通業の取組みの歴史にあるのですが、詳しくは来週のコラムでお話することにしましょう。

2020.02.25

サーキュラーエコノミーでバリューアップを実現するには

資源循環を新しいビジネスとして考える時、最終的な採用判断に最も影響するのは「それをやると儲かるのか?」という点に尽きます。既存のビジネスに勝るとも劣らない収益性をどのように担保できるのか?今日はいくつかの類型を参照しながら、バリューアップのポイントについてご説明します。

その前に、大前提としてサーキュラーエコノミーでは、モノの循環が「閉じたループにできること」即ち、顧客の囲いこみから始まってそのまた顧客、最終ユーザー、そして循環資源の回収までをしっかり自らの手の届くところに置けることが求められます。たとえ現状そうなっていなくても、バリューアップによって囲い込める見込みが立つことが求められます。

一つの類型は、循環資源の品質を上げることです。そうすることで「リサイクル材を使っている」ことに価値を見出す消費財メーカーが買ってくれるようになります。公共財や産業機械などのメーカーでも、たとえば「カーボンフットプリントが低い」など追加的な価値を見出してくれる事例が少しずつですが増えています。まずは品質アップ、が最も有望な考え方です。

今一つの類型は、回収やデリバリーなどを最適のタイミングで実施することです。そうすることで「欲しい時に、欲しいものを、欲しいだけ」提供するバリューが付加されます。このサービスと相性が良いのがIT技術です。農産物向けの資材供給など、センサーと組み合わせて育成のためのベストタイミングで実施することで、生産歩留まりや品質の向上が望めます。

なお、この視点にはちょっとしたバリエーションがあり、廃棄物の場合だと排出者がスペースを欲しがっているという場合があるのですが、だとしたら「(スペースを)欲しい時に欲しいだけ」提供する=廃棄物の回収というサービスも相応のバリューを提供している、ということになるのです。

さらに、もしもこの循環の輪の中で機械設備が使われているとした場合には、その寿命をメンテナンスによって長期化する、あるいは整備のためのダウンタイムを削減するという対応がバリューを増加させることにつながります。

そして、ある程度将来の話になるかもしれませんが、私は循環全体をサービス化することによるサブスクリプション料金の導入がひとつの分水嶺になるのではないかと見ています。そうすることで、設備更新を事業オーナー側の望むとおりのスケジュールで実施できるようになるわけです。よく事例として参照するのですが、たとえばコールセンターで一斉に設備更新される電話機やモニターなどのハードウェアは、それを扱う廃棄物事業者から見れば利幅が大きな取扱品目とは必ずしも言えないものですが、ロットが集まると見え方が変わってきます。

もしも同じことがレンタカービジネスで起きたらどうでしょう?ある日のこと、同種同年齢のクルマが一斉に、しかも計画的にリプレースされる。資源循環の効率性を究極まで高めるためには、循環資源に関わる管理がしっかりできてさえいれば、このようなモデルが最もバリューアップを実現しやすいのです。

そう考えたとき、大きな可能性を持っているのが個別品目のトレーサビリティです。自動車を例に考えると、現在組立工場では部品のひとつひとつに追跡用のID番号が振られ、システム上で製品となるまでフォローできるようになっているのですが、これを製品のライフサイクル全体に渡って運用できないだろうかという視点があります。製造→使用→廃棄・分別と再資源化に至るまで、共通のRFIDで部品をトレースして行くことができれば、再資源化効率の問題も品質向上も、劇的に改善できるようになるはずです。

その先には、サーキュレーション全体を取り込んだビジネスの集約・一元化という絵姿がおぼろげに見えてきます。そこまで行くと、資源循環が社会全体に最適化したベネフィットを提供するモデルへと変質してゆくことになるのですが、果たして21世紀中にそこまでの進歩がありえるか?それはまだ誰にもわからないのです。

最も早く実現できたものに、最も大きなリターンが約束される。今日のサーキュラーエコノミーは、そんな経済原則を追い求める者たちにとっての青い鳥なのかもしれません。

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