ジャストインタイムが付加価値になることを意識する
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2020.03.03

ジャストインタイムが付加価値になることを意識する

 環境ビジネス、特に廃棄物関連の事業者と一般のビジネスを比べてみると、相互に気づいていない属性の違いがあちこちにあることに気づかされます。一般事業者は廃棄物ビジネスのことをよく知らないことに加えて、廃棄物処理事業者もふだんは「これが当たり前」と思って仕事をしているので、世の中の常識からズレていることをお互いがあまり気にしなかったりします。しかしながら今から先の時代にサーキュラーエコノミーの考え方が普及してくると、ズレたままでは仕事が上手く行かなくなる懸念が大きいのです。

 そんな意識のズレのうち最も大きいものが、一般企業なら当たり前の「納期」に関する意識です。一般のメーカーや流通業の場合だと、お客様から指定された納期は絶対的な要件で、必死にそれを守ることによって信用を作り上げてゆくというプロセスを踏むことでしか商売の基礎は築けないものです。ゆえに工場はコストをかけても早出・残業・三交代などさまざまな対策を取ることで何とか納期を守ろうとするわけです。

 これに対して、廃棄物処理事業者の場合だとお客様から言われるのは「引取日時」くらいなわけで、いわゆる「納期」について厳しく言われるというパターンはほとんどありません。このため業界には、とりあえず希望日時までに引き取ればその後の処理は自社のペースでゆっくりやればよい、的な文化が蔓延しています。引取手数料で赤字にならないためには、早出や残業など、コストアップ要因になるものを極力排除して工場運営をすることが重要だと考えられています。この考え自体は必ずしも間違っているわけではありません。

 そうだとすると、産廃処理事業者に必要なのはピーク時に受け入れた廃棄物を貯留させておける広大なヤードと、受け入れた廃棄物を安定的に処理できるだけの低コストな処理施設で、これらを使ってマイペースで処理を続けたうえで一年を通じて帳尻が合えば良いということになるのですが、果たしてそれで良いのでしょうか?

 私は、廃棄物処理事業者が革新的なサーキュラーエコノミーに挑戦できない最大のネックがここにあると考えています。処理した廃棄物は最終処分場へ送って埋め立てればそれでオシマイ、という流れとは異なり、基本的には再生材として顧客へ納品されなくてはいけないわけです。顧客は当然ながら、納期について厳しい対応を求めて来ます。そしてこの部分にこそ、廃棄物ビジネスが克服すべき最大のチャレンジが存在するのです。

 サーキュラーエコノミーの議論はまだ端緒についたばかり、ということもあり、再生材を巡る議論もその多くが品質問題に集中しています。実はそれ以外にも、たとえば安定供給やリスク管理など、克服されなければならない課題は数多く存在しています。その中でも納期対応問題は、上で述べた業界文化の違いもあって、多くの会社にとっては大きな隠れた課題なのです。

 この問題に気付いている経営者は、残念ながら決してまだ多くはありません。サーキュラーエコノミーへの関心がこれまでになく高まっていることから、業界全体で関心を高め、対策を考えてゆくべき時期に来ているのですが、その動きは必ずしも強くないのが2020年3月の実態だろうと思います。

では納期厳守のために何をすれば良いのか?このヒントは製造業や流通業の取組みの歴史にあるのですが、詳しくは来週のコラムでお話することにしましょう。

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