サーキュラーエコノミーが売上を向上させる仕組みとは
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2020.02.04

サーキュラーエコノミーが売上を向上させる仕組みとは

昨年くらいからたびたびメディアに取り上げられてきた実績はあるのですが、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」と言うコトバを聞いたことがある、と言う方は実はまだ多くないかもしれません。しかしながら昨今、特に環境問題への関心が高まるにつれて、今まで全く関係なかったような会社がいきなりサーキュラーエコノミーに取り組むという例があちこちで見られるようになりました。

 「循環経済って、リサイクルの事でしょ?」
コンサルタントをしていると、そんな質問に遭うことも少なくありません。皆さんがご存知のいわゆるリサイクルと、サーキュラーエコノミーとの間には、現象的に85%くらい共通な要素があるので、その認識もあながち間違いではないのですが、でもやっぱり違う。特に残りの15%くらいの要素が働くと、ボチボチ儲かるリサイクルビジネスより、圧倒的なボリュームと利益率で儲けることができるようになるのです。今日はその仕組みについて主なところを皆さんにだけお伝えします。

1. 閉じた循環はすべてが「お客さま」
サーキュラーエコノミーとリサイクルの最も大きな違いは、リサイクルが廃棄物から有価物を抽出して市場に出せるようにするところまででオシマイなのに比べて、サーキュラーエコノミーはユーザーと、そのまたユーザーとさらに最終ユーザーをつなぎ、「閉じた循環」を構築するところにあります。
つまり、再生材のユーザーはリサイクル事業者にとってのお客様ですが、そのまたユーザーはさらに次の段階のお客様であり、最終ユーザーまでの連環が確保されている中で、バトンリレーのように商売をつないで行くイメージなのです。この効用は、何と言っても資源効率を極限まで高めうるところにあります。
大量生産・大量消費モデルのように大生産拠点を高度な遠距離物流でつなぐというよりは、小型の分散型ネットワークの中で回してゆくイメージです。低炭素化の流れで考えれば、物流を極力軽くするようなネットワークデザインを考えるということにもつながります。

2. それなのに「規模の経済」が通じる
循環の輪は、あまり大きくすると輸送費が大変なことになります。分野にもよりますが、たとえばアフリカの廃棄物を日本に運んでリサイクルしようとしても輸送費がバカにならず、損益的にはメリットが生じない場合が多いです。が、それと同時にリサイクル技術を横展開するための投資余力がモノをいう部分も大きいのです。
たとえば最近流行のサブスクリプション制は、資金繰りに強みを持たない中小企業では、やりたくてもなかなかできないと言われています。多くの場合は、まず機械や箱モノを売り資金繰りに目途をつけないと次のステップへ進めないのですから仕方ありません。ところが一定の資本力がある会社にとっては、リサイクル単体でもランニングでしっかり儲かることが分かっているのなら、最初から設備提供のための大規模投資を実施することによって、ユーザーの一時負担を軽くするという選択肢が現実的なものになるのです。
初期投資に絡んでユーザーが負担に思うことは極力事業者が負担する、そうすることによってユーザー満足を高め、そのかわり粗利率の高い利用料金を設定しやすくなる、という構図です。たとえばNTTや東京ガス・大阪ガスが出資した新電力会社が太陽光発電システムの貸し出しサービスを開始しています。これまで、付けたくても設備費が高い太陽光発電は、個人ではなかなか導入しづらいものでした。それがレンタルによって設備を無償で借りられるとなると、ずいぶん導入しやすく感じられるのではないでしょうか。
借りた太陽光発電システムで発電した電気は自家消費し、余った分は単価的には安いかもしれませんが、新電力会社に買い取ってもらえるとしたら、「ウチでもつけてみようか」と思う人は少なくないのでは?でもそんなサービスを実現するためには、かなりの物量で太陽光発電システムを製造して在庫を持ち、注文に応じて取り付けられるような体制ができていないといけません。いずれも、大企業の資本力があってこそ可能だった話、ではないでしょうか。

3. 社会善は何より囲い込みの強い因子となる
サーキュラーエコノミーの閉じた連環に加盟すると、そのつながりは強固な関係によって囲い込まれることになります。共通の夢、共通の目標によって結ばれた同志みたいなものですから、なかなかブランドスイッチングが起きづらい関係になることが知られています。
最近NTT西日本のグループ会社が始めた生ごみによる肥料作りのプロジェクトも、その底流には食品ロス対策を一緒に目指そうとする社会善への取り組みがしっかりと存在しています。一般の個人やレストランなどは、事業者側が用意する生ごみ発酵機をレンタルで導入し、肥料作りを行います。できた肥料は事業者が引き取って肥料を使う農家へ配ります。
閉じた連環の中で、生ごみが加工されて有機肥料になり、その肥料が有機野菜を育てて、最終的には青果や加工食品になって戻ってくる。ユーザーは、一回の循環に1年以上かかるサイクルにプレーヤーとして参加するのですが、そうすると、このサービスに加盟してしまった会社や個人はかなり長期間にわたってユーザーでいてくれる可能性が高くなるわけです。

もうお分かりと思いますが、サーキュラーエコノミーには①閉じた連環を活用し、特に輸送面では低炭素化を追求できる、②初期投資の事業者側負担により長期の高収益モデルを構築できる、③社会善による強い囲い込み効果が期待できると言ったメリットがあり、いずれも企業収益に直結するパワフルなものなのです。
一見すると大企業向きのソリューションと見られがちですが、コア技術の開発や小規模連環の構築など、ベンチャー企業や中小企業に優位性のある部分も色濃く存在することから、「サーキュラーエコノミー」は大企業と中小ベンチャー企業がオープンイノベーションで協力するためのキーワードになるのです。
チャンスの女神は後ろ髪を持たないとよく言われますが、サーキュラーエコノミーの女神もまた、同じ髪形をしています。ゆめゆめ、機会を逃すことのないように・・・。

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