分別か、そうでないかの境目とは
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2019.07.09

分別か、そうでないかの境目とは

廃棄物リサイクルの世界では良く「捨てればゴミ、分ければ資源」といいます(今でも教育現場では子供たちに対してそう教えます)。確かにある程度の分別とリサイクルは、特に高度経済成長の時代には資源の消費一辺倒だった経済の流れを見直し、社会の持続性を高めることに役立つ取組みだったと思います。

他方で、特にプラスチック類についてはどこまで分別すれば良いのか、どこまでリサイクルすべきかという議論についてなかなか決め手がないまま、観念的にリサイクルが議論されているのが現状ではないでしょうか。

先日長野県で開催されたG20のエネルギー転換・環境閣僚会合で議論された海洋プラスチック汚染に関する問題についてもそうですが、不法投棄を抑止するための対策として確かにリサイクルは有効な施策の一つであるはずなのですが、ことプラスチックについて言うと、現実問題はそう簡単ではありません。

一口にプラスチックと言っても実は多種多様な素材があり、柔らかくて軽いポリエチレン、絶縁性はあるが強度のないポリスチレン、熱や引っ張りに強いポリプロピレンなどの汎用素材に加えて、強度に優れたポリカーボネート、透明にできないが強度はあるポリアセタール、薄くても強度があるポリエチレンテレフタレート(PET)など工業用のいわゆるエンプラ素材など、私たちが日常的に接するものでも十指に余るバリエーションがあります。

更にこれらの素材には、他のプラスチックと混合して使われる例もあるのですが、そうなるとそれぞれの強度や熱に対する特性が違ってくるため、どのようにリサイクル加工すれば良いのかが皆目わからないということにつながります。たとえばPETボトルならそれだけを集めればまだ何とかなるのですが、その他のプラスチックについては一緒くたに取り扱われており、品種ごとにリサイクル商材としての価値とボリュームを安定的に確保できるだけの収集・運搬のためのメカニズム、いわゆる静脈流通が整備されていないのが現状です。

他方でプラスチック素材はいずれも石油化学由来の製品であり、成分的に燃えにくいものや難燃加工を施したものを除けば、基本的には燃えるものばかりなので、ごみ発電のカロリーを確保するためには皆優秀な燃料になってくれます。

ごみ発電といっても焼却処分ですから、その工程でCO2が排出されるという課題はあるのですが、たとえば将来プラスチックが使われなくなって、それまでプラスチックごみのおかげで円滑に運転されていた焼却工場の投入カロリーが減ると、発電プロセスにマイナスの影響が出るという懸念は残ります。

各地のごみ焼却施設では、ただでさえ人口減少に伴って余剰能力が発生しつつあるので、これ以上投入カロリーが減らされることについての問題はしっかり議論される必要があるのです。

このような状況に置いて、私たちが望みうる最適解はどのようなものなのでしょうか?私は「将来ビジョンを持ち、それを議論しながら進めてゆくこと」ではないかと考えます。たとえば、「プラスチックリサイクルを20年かけて経済的に成り立つものにする、それまではゴミ発電の投入材料として最大限活用する」みたいなビジョンです。

リサイクルが経済的に成り立つためのボリューム確保をモニタリングする、分別前の洗浄や乾燥にかかるコストに加え、ゴミ発電に回す場合のCO2発生を計算する、そういった情報をデータで解決するような時代が来るのももうすぐだとは思うのですが、まだ社会で仕組みとして実装されていない以上、ある程度割り切った考え方を整理して、その実践を以て最適解に替えざるをえないのが現状なのです。

20年、という時間枠が果たして正しいのか?については誰も何も言えない話だと思うので、そうだとするなら後は大人の責任で政治が決める、みたいな取り組みでも仕方ないだろうと思うわけです。でもそうやって、方向性を決めればビジネスのネタはついてくる。そういう開拓者精神こそが、環境ビジネスの明日を切り開くために求められているのです。

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