昨今の日本社会において、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)に対する認知度が高まってきたのは心強いことです。さまざまな立場の人たちが、地球の未来を考えるうえでSDGsを共通言語として一緒に議論を進めて行けることほど、国連が果たした役割の中で将来の可能性を感じさせるものはなかったと感じています。
今、国際社会ではSDGsのみならず様々な切り口で社会善への積極的な取り組みを可視化し、評価しようという動きが強まっています。金融の世界ではEnvironment: 環境、Society: 社会、そしてGovernance: 企業統治をその評価軸としたうえで、非財務情報をも併せて投融資の判断基準とする考え方が導入されつつありまして、3つの評価軸の頭文字を取ってESG金融と呼ばれています。
すなわち、経営者は①環境に良いことをどのように導入・実践しているか?②社会に良いことをどのように導入・実践しているか?そして③自身の企業統治をどのように可視化し、持続可能な経営を実現しているか?という点で評価される、ということなのです。
この中で、言ってみればEとSは将来へのコミットメントであり目標であるのに対して、Gは現在進行形であり半ば実績であるという違いがありますが、いずれも社業が社会善への貢献をどのように果たしつつあるか、また果たしているかを評価するために使われつつあります。
欧米では株主による投資を通じた関係情報の可視化が進んでおり、「ESG投資」と呼ばれていますが、日本では企業向けの資金調達手段が金融機関による融資が中心であることもあって、独自の取り組みがなされつつあり、「ESG融資」と呼ばれています。
令和元年はその実践がスタートする年にあたるのですが、今や政府の後押しを受けた各金融機関、なかんずく地方銀行が「地域循環共生圏」に資する働きをしている地方の企業を見出し、融資を通じた支援を円滑に進めようとする動きが出始めています。
具体的には、エネルギーの地産地消、ごみの減量と循環型経済の促進、産業廃棄物の適正処理、再生可能エネルギーの導入と活用などが挙げられますが、このような環境ど真ん中の事業でなくても、社会的弱者への支援や、経営状況をガラス張りにして可視化する取り組みなども評価される流れにあります。
その中で、特にSDGsを標榜し実践することは、国際社会が共同で目指している目標への直接的なアプローチになるということもあって社会的な訴求性の高い取り組みとして評価されるが、その反面で実態が伴っていないと「カンバンを借りているだけ」との批判を受けるケースも出てくるのではないかと思われます。
金融機関もみな横一線で取り組みを始めたところなので、むしろ企業側が具体的な取り組み事案を提供することでイニシャチブを取れるチャンスです。社会善の実現を通じて明日の地球を作ってゆくための取り組みを、あなたの企業がリードするという心意気でESG金融への対応を進めてください。今こそ、そのチャンスなのですから。