前回は、人材不足に対応するためには経営者と従業員がゴールを共有できていることが重要で、そうなれば従業員は求められているレベル感と自分の実力の差を、むしろ自発的に埋めようとするものである、というお話をしました。
むろんこの反応が出るためには、従業員が会社に対して否定的な認識を持っていないことが前提となります。人間は、目指すべき方向について何か嫌な感覚を持っていると、それが逆に不平不満の形で現れることもあるのですが、そもそも最初から嫌いな会社に入社したという従業員はいないはずですから、もしも小さなわだかまりなどを感じている従業員がいたら、会社側はキチンと向きあってそれを解消しておくべきなのです。今日は、そのうえで取るべき具体策の一つをご案内します。
大学受験指導業界ではよく言われている話なのですが、「人は、人に教えることで一番伸びる」という鉄則があります。これは、単に理解しているだけの知識では人に説明するために十分とは言えず、全体観を簡潔に説明できること、知識の枠組みが整理できていること、重点箇所について分かりやすくかみ砕いて説明できること、さらに説明のためのたとえ話や事例を複数用意してあること等、説明のために必要な知識やノウハウは確実に一段上のものが要求されるためです。
そもそも人材「不足」の状況下にあって、教えることで伸ばすと言ってもそのような機会を多く設けることは難しいのが現状だと思います。新人社員でも入ってくればその教育を任せるなどの方法があり得たかもしれませんが、それは難しい。
ではどうすれば良いのか?というお話ですが、お勧めは定期的な社内発表会の実施です。すでに社内で共有できているゴールがあることを前提に(経営目標あるいは経営理念、もしくはビジョンとかミッションとか言われるものも含めます)、ゴール達成のためのテーマを与え、そのテーマに関する課題の発掘と解決策を、従業員自らのコトバで語らせるのです。
一人ずつやらせるのが難しい場合など、本来はグループワークを設定するのが良いのですが、そうすると打ち合わせのために時間を取る必要が出てきて、働き方改革の流れに逆行する要素が出てくるかもしれません。ですので、発表会の規模をなるべく小さくするなどして、一人ずつに発表してもらうのが現実的な対応策だと思います。
発表会システムが良いのは、実施スケジュールを組むことで日時を区切れるため、締切を持って考えをまとめなければならず、これによって否応なしに変化が加速されるという効果があることです。
そうすることによって、経営者と従業員が共有したゴールに関してお互いの考え方を確認することができるので、確実に人材レベルの段差解消が進みます。従業員との間でゴールを共有し、彼らと真正面から向き合ってください。
人手不足が言われる日本にあって、環境ビジネスの分野には特に人材不足のお悩みを抱える会社が多いようです。今回お伝えしたソリューションは、私が主な支援対象としている環境ビジネスに限らず、どのような業種でも当てはまる考え方なのですが、それだけに「あとは実際にやるかやらないか」にかかっていると言えます。実施を一日遅らせれば問題解決も一日遅くなります。人材不足を克服して明日へと踏み出すための、今が最大のチャンスなのです。