自己認識の限界
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2019.02.26

自己認識の限界

環境ビジネスのコンサルタントをしていると、時々やるせない思いに駆られることがあります。それは、本業が製造業やサービス業の会社が始めた新規事業が環境保全に関わっているのに、本社の意思決定者が環境ビジネスの何たるかをよく理解しておらず、先進的な商機について反応がすごく鈍かったりすることがあるのです。具体的にはどんな場合なのでしょうか?

それが省エネルギーに関することであっても、太陽光や風力などの再生可能エネルギー事業でも、ましてや水処理や廃棄物管理、大気汚染対策など規制に関係するビジネスであればなおのこと、環境ビジネスは一般的に公益性が高いという特徴があります。

これがどのように影響してくるかと言うと、特に規制面において役所その他の公的機関との接点が多くなる分だけ手続きの手間がかかる反面で、事業面では役所のお墨付きが得られることによる信用力の向上が期待できる要素もあるという、言われなければ分からない程度の長所短所が出てくるわけです。

その程度の違いであれば、特に大きな違いはないんじゃないの、元々が環境ビジネス出身ではない経営幹部だと、そんなふうに捉えている人が少なくありません。実は、ここが大きな誤解の素になるのです。

しっかり規制を尊重するのも、役所のお墨付きをもらえるのも、すなわち公益性を担保するために必要なプロセスなわけですが、だとすると社会が企業に対して公益性に基づく責任を果たしてくれることを期待したとき、本来であれば積極的に手を上げるべきなのが望まれる環境ビジネスのありようなのです。

たとえば住民説明会や、地元小中学校に対する環境教育への参加であったり、途上国からの視察受け入れや、技術協力案件における専門家派遣というニーズもあったりします。これらの多くは有償、しかもそこそこ悪くないフィーが支払われる制度になっています。

ところが実際は、会社側から「メンドクサイことは出来ればしたくない」的な拒絶反応を示される事例が少なくありません。そのような場合についてよく見てみると、意思決定者が本社から送り込まれた人材で、環境ビジネスの何たるかをよく知らない人である、と言った場合だったりします。

反対に、元から環境ビジネス専業でやってきた会社の場合は比較的このあたりがしっかりしていることが多く、経営者は打てば響くような反応を示してくれたりします。いつもそういう会社ばかりだと良いのですが、現実的には大企業が始めた新規事業のほうが技術的に魅力的なソリューションを持っていたりするので、なかなか簡単ではありません。

公益性を積極的に訴求することで、ビジネスとしての可能性も実は広げることができるのだという点を、大企業の新規事業担当者にもぜひご理解をいただきたいと思います。そうすることで新たな事業機会を獲得し、さらなる成長へと視界を広げて行けるのです。

これは何も環境ビジネスに限ったことではなく、ポーターの言うCreating Shared Value (CSV)に通じる視点であることに気づくと、実はすべてのビジネスに同様の可能性があるという結論にもつながるのです。公益性というキーワードにビジネスチャンスが眠っていたりしないか、今一度会社の知的資産を棚卸してみるのも悪くないかもしれません。

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