メディアが伝えるところによると、10月8日に発表された国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の気候変動政府間パネル(IPCC)第48回会合の報告書では、産業革命前に比べると地球の平均気温は明らかに上昇する基調にあり、2040年ごろには約摂氏1.5度上昇することが予想されているのだそうです。
産業革命前に比べて1.5度の平均気温上昇というと、パリ協定が努力目標として掲げた数字です。報告書の数字は2040年にその天井まで到達してしまうという、なかなかに厳しい予測であることがわかります。それが意味することとは、具体的にどんなことなのでしょうか?
パリ協定でもそうですが、二酸化炭素など温暖化ガスの排出削減がその対策としてクローズアップされています。国際的な協調による将来の努力、という難題への対応ですから、メディアの報道もこの部分に焦点が当たるのは当然だと思います。
他方で、条約の締結国会合(日本の報道においてはいわゆるCOPいくつ、というやつで、最新の会合は2017年にドイツのボンで開催されたCOP23です)などで議論される対策には、温暖化ガスの排出削減など、気候変動の「緩和」策と並んで、起きてしまった気候変動への「適応」についてもしっかりと議論されます。
日本では最初に「緩和」策がCO2削減とほぼ同値のような解釈がされてしまったことに比べると、「適応」策については中身がやや込み入っていることもあってか、あまり詳しく理解されていないところがあるように思います。
適応策が求められるのは、気候変動がもたらすリスクすなわち①社会資本などの脆弱性、②気候変動の影響への曝露、③災害などのハザードの3つが絡み合って発生するものということで、魚が取れる時期が変わるだとか、夏の酷暑が続くだとか、台風が大型化するとかいうような、さまざまな現象が含まれます。
ご存知のように、日本では近年になって毎年のように、7月~9月にかけて大雨や台風など、災害による深刻な被害が続いています。端的にこれを言い表すと、今日本に建っている家や、整備されている都市インフラでは、想定しうるハザードに対する脆弱性が高い状態にある、と言うことだと思います。
これに対する適応策を考えるならば、それは脆弱性の排除すなわち国土の強靭化、ということになるのでしょうが、絶対的な条件として言えることは、確実にカネのかかる話だということですね。
たとえば今後計画されるマンションには、飛んできた異物で窓が壊れないように、シャッターの雨戸が多く採用されるかもしれません。また、庭付きの物件すなわち1階部分の住戸はなくなり、ある程度床上浸水しても大丈夫な設計になるのではないでしょうか。道路舗装なども、泥掻きしやすい表面に変更されるだとか、道路の側溝や排水管の規格が見直されてより多くの排水が流れるように基準が変わって行く可能性もあると思います。
でも、今建っている家や、今川にかかっている橋や堤防などはどうなるのでしょう?積みやすく流れにくい土のう、浸水しても洗って乾かせば使える畳、あるいは橋がこわれないように流木を破壊する装置などの研究も進められなければならない、ということになるのでしょうか。なんだかせつない話ではありますが、2040年を見据えるならば、待ったなしの取り組みということになるのでしょうね。