ネイチャーポジティブは「理念」から「実装」へ――群馬県の特別セミナーで講演しました

ぐんまネイチャーポジティブ推進プラットフォーム特別セミナーで講演する西田純(2026年10月8日、群馬県庁NETSUGEN)

2026年10月8日、群馬県庁の官民共創スペース「NETSUGEN」で開かれた、ぐんまネイチャーポジティブ推進プラットフォーム「第1回 ビジネスピッチ&特別セミナー」(主催:群馬県 環境森林部 自然環境課)で、「行政・企業連携で生み出すネイチャーポジティブビジネス――社会課題をビジネスに変える実践手法」と題して講演しました。講演の後には、県内の企業・団体による5件のピッチと、登壇者が意見を交わすクロスディスカッションがあり、私はその司会も務めました。

何をお話ししたか

講演では、次の5つの話題を順にお話ししました。

  • 最新動向:10月19日からアルメニアのエレバンで開かれる生物多様性条約COP17、2026年2月に承認されたIPBESの「ビジネスと生物多様性」評価、TNFDからISSBへと進む情報開示、7月の熊本でのグローバル・ネイチャーポジティブ・サミット
  • 気候変動と土地利用:武蔵野大学の講義で扱っている「ドローダウン」の視点から、同じ土地が吸収源にも排出源にもなること
  • 循環経済からネイチャーポジティブへ:「減らす」から「再生する」への発想の転換
  • 自然を「測る」:TNFDのLEAPアプローチ、日本発のLCA手法LIME3、衛星・環境DNAなど、測るコストが下がっていること
  • 行政・企業連携の実践:誰が、何に、お金を払うのか

見立て:2026年は「実装元年」

COP17は、2022年に採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の、初めての世界規模の進捗点検になります。各国の報告では、政府だけでなく企業・自治体・市民社会の取組も「社会全体」の成果として扱われます。地域のプラットフォームでの活動が、そのまま国際目標への貢献として語れるようになった、ということです。

一方で、ネイチャーポジティブには、気候変動のCO2のような単一の物差しがありません。そのため、クレジットや認証、衛星データといった「手段」の話が先に立ちがちです。会場では、「目的は何か」「どうなれば達成と言えるか、誰が判定するか」から考える順番をお伝えしました。

中小企業・地域にとっての意味

開示の義務がない中小企業にも、大企業のサプライチェーン調査票や調達基準、金融機関との対話を通じて「要請」は届き始めています。ただ、大企業の真似をする必要はありません。水源や森林、里山に近いこと、つまり現場を持っていることが地域の企業の強みです。最初の一歩として、次の3つをご提案しました。

  1. 自社と自然の接点を1枚の地図にする(LEAPの「L」)
  2. いま続けている地域活動を、測れる形にする
  3. プラットフォームを通じて、測る人・払う人とつながる

クロスディスカッションでは、水、森林、河川、竹林を題材に、「価値があっても、誰が払うのかが決まらない」という共通の難しさが浮かびました。水の価値は受益する企業が、景観の価値は周りの皆が、というように、価値ごとに支払う人が違うという整理には、会場からもうなずきが見られました。

  クロスディスカッションの様子(2026年10月8日、群馬県庁NETSUGEN)

Local to Global

私は国連工業開発機関(UNIDO)にいた頃、北九州市と協力して、アジア・アフリカの行政官向けのエコタウン研修に長く携わりました。地域の経験を世界に伝え、世界のルールを地域に持ち帰る。その往復は、生物多様性の分野でこそ生きると、今回あらためて感じました。群馬の取組を、COP17後の世界の文脈で、動画と英語で発信していくお手伝いができればと考えています。

本セミナーの様子は、上毛新聞(10月9日付)でも紹介されました。

お声がけくださった㈱ミツバ環境ソリューションの清水様、群馬県自然環境課の皆様、ご参加の皆様に、あらためて御礼申し上げます。


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