フィージビリティスタディ(F/S)

FEASIBILITY STUDY / UNIDO方式のフィージビリティスタディ

「やるか、やらないか」の前に、
「どの条件なら成り立つか」を確かめる。

新しい設備投資、異業種と組む循環型ビジネス、自治体の再開発や公共インフラの官民連携(PPP)。どれも、思い切りだけでは前に進めません。金融機関、行政、パートナー企業、地域の人々が同じ材料を見て判断できるように、事業の姿を事前に「見える化」する。それがフィージビリティスタディ(F/S、事業化可能性調査)です。当社は、国連工業開発機関(UNIDO)が体系化し、世界銀行などの国際開発金融機関でも用いられてきた方法論に沿って、F/Sの実施・レビュー・研修をお引き受けしています。

フィージビリティスタディとは

F/Sは、事業の実施可能性を多面的に検討し、投資判断に必要な情報を整理するための調査と、その報告書のことです。「儲かるかどうか」だけを見るものではありません。市場、原材料、技術、立地と環境、組織、人材、スケジュールと予算、そして財務。これらを一つの枠組みで点検し、事業として成り立つかどうか、成り立つとすればどの条件のもとでかを明らかにします。

UNIDO方式の特徴は、構想段階から現地での事前調査を丁寧に行い、その結果を統一された章立ての報告書にまとめる点にあります。当社ではこの統一フォーマットを「報告書の金型」と呼んでいます。同じ金型で作られた報告書は、読み手が「どこに何が書いてあるか」をすぐに把握でき、複数の案件を比べるときにも条件やリスクの違いが見えやすくなります。

報告書の「金型」 ― 9つの章で事業の全体像をつかむ

エグゼクティブサマリーに続いて、次の順で事業を点検していきます。経営者として押さえておきたいのは、最初の「背景と目的」と最後の「財務分析」です。

  1. 背景と目的なぜこの事業をやるのか。どの課題を解決し、誰が困らなくなるのか。ここが曖昧だと、どれだけ数字を積んでも説得力を持ちません。
  2. 市場(マーケティング)誰に、何を、どう届けるか。市場規模、需要予測、競争環境、販売戦略。
  3. 原材料・調達必要なものが必要なときに入るか。調達先の信頼性、輸送ルート、価格の安定性、代替材料。
  4. 立地と環境インフラ、規制、自然災害リスク、環境への影響。行政との協議の土台にもなる章です。
  5. 設備・技術・サービス技術の選定と仕様、維持管理の体制。「現地で使いこなせるか」まで評価します。
  6. 組織事業主体、ガバナンス、パートナーとの役割分担。「誰が何を決めるのか」を明確に。
  7. 人材必要な人員と専門性、教育訓練。地域の雇用にどれだけ貢献するかもここで示します。
  8. 実行計画と予算いつ、どれだけ、何に資金と人材を投じるか。スケジュールとコストの見積り。
  9. 財務分析NPV、IRR、キャッシュフロー、回収期間、資金調達。複数のシナリオで採算を検証します。

※章の構成は、当社代表・西田純の著書『復旧復興をビジネスチャンスに変える 世界標準版 フィージビリティスタディの進め方』で詳しく解説しています。

二つの物差し ― 「事業として儲かるか」と「社会にとって価値があるか」

当社のF/Sは、性格の異なる二つの分析を組み合わせます。UNIDOと世界銀行の流れをくむ方法論の要は、この二つを混同せず、並べて読むことにあります。

財務分析

事業者・投資家・金融機関の目で ―「儲かるか、返せるか」

  • NPV(正味現在価値)・IRR(内部収益率)
  • 自己資本IRRと資本コストの比較
  • DSCR(元利返済カバー率)・回収期間
  • 資金調達の構成とキャッシュフローの流れ

経済分析

国・地域・社会の目で ―「その事業は社会を豊かにするか」

  • 付加価値(地域にどれだけ所得が残るか)
  • 経済的内部収益率(EIRR)と費用便益分析
  • 雇用・税収・輸入代替の効果
  • シャドープライス(市場価格のゆがみの補正)

「融資の基準は満たさないが、社会にとっては価値がある」という事業は、決して珍しくありません。賃金や税金、利息は事業にとってはコストですが、地域や国にとっては便益だからです。二つの物差しで測ると、問題が事業そのものにあるのか、資金の組み立て方にあるのかが分かれて見えてきます。

後者であれば、打ち手があります。補助金による初期投資の圧縮、料金設計の見直し、返済期間の延長、事業期間の延長などです。どれを、どの順番で検討すべきかを示すことも、F/Sの大切な役割です。

数字を「動かして」確かめる ― COMFAR III Expert による財務モデル

当社代表の西田は、UNIDOが開発したF/S用のビジネスシミュレーター「COMFAR III Expert」の上級ライセンスを保有しています。2015年10月には、ウィーンのUNIDO本部で「COMFARを用いたプロジェクト評価(Project Appraisal with Application of COMFAR software)」のUNIDOトレーナーとして認定を受けました。

財務モデルは、一度計算して終わりではありません。売上が10%落ちたら、建設費が10%膨らんだら、為替や金利が動いたら、CO2の価格が上がったら。前提条件を一つずつ動かして収益性の変化を観察し(感度分析)、いくつかの条件が同時に悪化した場合も確かめます(シナリオ分析)。どの変数が事業の命運を握っているのかを、トルネード図などで一目で分かる形にしてお示しします。お客様の社内でも使い続けられるよう、Excelによるモデルでのご提供にも対応します。

動画:COMFARビジネスシミュレーターによる財務モデルの作成と収益性の検証

F/Sが役に立つ場面

新規事業・設備投資の判断

投資額に見合う回収ができるか。社内の意思決定と、金融機関への説明を同じ資料で行えます。

異業種で組む循環型ビジネス

製造業とリサイクル業が連携する事業では、「どれだけの投資で、どんな成果が見込めるか」を関係者で共有することが成否を分けます。F/Sが共通の台本になります。

補助金・融資・公的資金の申請

審査する側が知りたいのは、事業の筋の良さと数字の裏付けです。金型に沿って整理した計画は、そのまま申請書の骨格になります。

自治体の再開発・PPP

公共インフラの官民連携では、民間の採算と公共の便益の両方を示す必要があります。リスク分担やバリュー・フォー・マネーの検討にも対応します。

災害からの復旧復興

公共工事で基盤が整った後、本格的な再建を担うのは民間の投資です。不確実性の高い局面だからこそ、事前の見える化が民間参入の後押しになります。

海外展開・国際協力事業

JICAやUNIDOなどの事業スキームでは、国際標準のF/Sが求められます。英語での報告書作成にも対応します。

実績

  • 国連機関で約16年

    UNIDO在職中から、各国の行政官・企業に財務分析を指導

    国連工業開発機関(UNIDO)での勤務を通じて、投資プロジェクトの評価に携わるとともに、各国の行政官や企業を対象とした財務分析研修の指導にあたりました。

  • 2008年

    『基礎から財務分析までみるみるわかるフィージビリティスタディ入門』を出版(日刊工業新聞社)

    「F/S」という言葉自体がまだ企業の現場に浸透していなかった時期に、その基本的な考え方と財務分析の手順を紹介しました(現在は絶版)。

  • 2015年

    UNIDOトレーナーに認定(ウィーン・UNIDO本部)

    「COMFARを用いたプロジェクト評価」のUNIDOトレーナーとして認定を受けました(2015年10月)。以来、UNIDO方式の正統的なアプローチを、研修だけでなく実務そのものに適用しています。

  • 〜2025年5月

    タンザニア:JICA産業振興アドバイザーとしてF/Sの実施を支援

    同国政府の産業政策づくりを支援するかたわら、政府系機関のアナリストを対象に、約2年にわたってF/Sを指導しました。座学にとどめず、実際の投資案件5件のF/Sを共に作り上げる形で進め、修了者には修了証が授与されました。

  • 2026年1月

    エッセンスブック『復旧復興をビジネスチャンスに変える 世界標準版 フィージビリティスタディの進め方』を刊行(JCPO)

    災害や紛争からの復旧復興を「支援」で終わらせず、「持続可能な事業」として組み立てるために、F/Sをどう使うかを経営者向けにまとめました。

  • 2026年〜

    ネパール:PPP導入に向けたF/Sの講義

    JICAの投資開発支援の一環として、ネパール政府の投資誘致機関の職員を対象に、PPP(官民連携)案件のF/Sにおける財務分析・経済分析、リスク分析、モニタリングと評価についての講義を英語で行っています。実在する候補案件を素材に、財務モデルを自ら動かしながら学ぶ構成です。

私たちの考え方

F/Sは、講義や演習だけで身につくものではありません。実際の案件で、現場の数字と格闘しながら報告書を書き上げてはじめて、自分の道具になります。私自身、独立してから実務の中で身につけたことが大半です。

だからこそ当社は、F/Sを「外注して受け取る報告書」ではなく、お客様が自社の事業を自分の言葉で説明できるようになるための共同作業と考えています。数字の根拠を一緒に確かめ、前提を一緒に動かし、最後は金融機関や行政、パートナーの前で胸を張って説明できる。そこまでをお手伝いします。

合同会社オフィス西田 代表 西田 純

ご提供の形

簡易フィージビリティスタディ

COMFAR III ExpertまたはExcelで財務モデルを作り、採算とリスクを一次判定します。「この構想は詰める価値があるか」を早い段階で見極めたいときに。

フィージビリティスタディ(本格)

「報告書の金型」に沿って、金融機関や公的支援の審査に出せる水準の報告書を作成します。日本語・英語に対応します。

F/Sレビュー(セカンドオピニオン)

お手元の事業計画書やF/S報告書を、金型と二つの物差しで点検し、抜けや弱点、追加で確かめるべき前提をご指摘します。

研修・講義

企業、自治体、金融機関、国際協力の現場向けに、F/Sと財務・経済分析の研修を行います。手を動かす演習と、実案件を題材にした構成が基本です。英語での実施も可能です。

費用は内容と規模に応じてお見積りします。まずは無料相談で、構想の段階からお聞かせください。

よくあるご質問

事業計画書とF/Sは何が違うのですか?

事業計画書は「この事業をやる」ことを前提に、実行の道筋を描くものです。F/Sはその一歩手前で、「やるべきか、どの条件ならやれるか」を判断するための材料を、市場から財務まで漏れなくそろえるものです。F/Sで固めた前提は、そのまま事業計画書の土台になります。

中小企業の規模でもF/Sは必要ですか?

規模が小さいほど、一つの投資判断が経営に与える影響は大きくなります。報告書の分量は案件に合わせて調整できます。まずは簡易版で採算とリスクの見通しを立て、必要に応じて本格版に進む進め方をおすすめしています。

英語の報告書や、海外の案件にも対応できますか?

対応できます。国際協力事業の枠組みでのF/Sや、海外の行政官向けの研修を英語で行ってきた経験があります。

関連書籍

構想中の事業が「成り立つ条件」を一緒に確かめませんか。
まだ数字がそろっていない段階でも構いません。