近ごろ、企業経営の現場で「GX人材を確保したい」という声を本当に多く耳にするようになりました。これまでも気候変動対応は重要テーマではありましたが、ここ数年でその位置づけは一段階も二段階も重くなった、そんな印象を受けています。
背景には、会計制度における気候変動関連情報の扱い強化、そして上場企業を中心に広がるサステナビリティ情報開示の義務化といった動きがあります。企業経営にとって、気候変動は「知っておくべきテーマ」から「事業戦略を左右するテーマ」へと明確にステージが変わりました。これらの要求を適切に読み解き、自社の業務と結びつけられる人材としてGX人材が求められているのです。
とはいえ、実際の労働市場に目を向けると、GX関連業務を担える即戦力人材は決して多くありません。そもそも他分野でも優秀な人材の採用競争が激化する中、GX分野だけが例外ということは当然ながら起こりません。いまやあらゆる分野について企業が必要とする人材像は高度化し、供給は追いつかない。そのミスマッチが採用の難しさとなって表れているのです。
こうした状況を前に、私が経営者の方々に強くお伝えしているのが、「社内で育てる」という選択肢です。むしろGX人材に限っては、これが最短距離と言えるかもしれません。なぜなら、GXの取り組みは自社のサプライチェーンや事業特性を深く理解していないと正確に進められず、外部人材を採用できた場合でも、実務に入るまでの“キャッチアップ期間”はどうしても発生するからです。それならば、最初から社内の理解がある人材を育成したほうが、結果的に大きなアドバンテージになります。
では、GX人材に求められる素養とは何でしょうか。私は大きく次の三つが柱になると考えています。
第一に、自社のGHG排出量を把握し、分析できる力です。基礎データがなければ、どれほど立派な戦略も絵に描いた餅になってしまいます。
第二に、サプライチェーン全体を含めたGHG削減策を検討できること。ここには科学的視点やデータに基づく合理的判断が必要になります。
第三に、顧客からの情報提供要求に的確に対応できること。今、多くの企業で最も実務負荷が高まっている領域です。
このうち、排出量の把握と分析については、これまでもこのコラムで繰り返しお伝えしてきましたが、当社へご相談いただければ、半年から一年で社内に仕組みを構築し、自動的に情報が出てくるようになります。属人的な活動ではなく企業としての「計測力」を持つことが、GX対応の確実なスタートラインになるからです。
次に削減策の検討ですが、ここはまさに科学的知見が問われる領域です。当社では産学連携チームによるアプローチを推奨しています。大学・高専の研究者が持つ理論的な知見と、企業が持つ現場データや課題感を組み合わせることで、単なる「思いつきの施策」ではなく、再現性と実効性のある削減策を共同で見いだすことができるからです。これは私自身、数多くの産学連携の現場を見てきた中で確信しているポイントでもあります。
最後の顧客要求への対応については、営業部門との連携がカギです。現状は、まず排出量データをGHGプロトコルに基づいて開示できるかどうかが問われている段階です。つまり、分析さえしっかりできていれば、当面の実務には十分対応できます。そして、将来的に削減策を顧客へ提案していくステージに進んだとき、産学連携で生まれた成果を“価値提案”として活用できるかどうかが、営業の競争力を左右することになります。
こうして整理してみると、GX人材が担うべき業務は、決して一部の専門家だけが扱える特別なものではありません。むしろ、社内の業務フローをよく理解した人材が、段階的に学びながら十分に身につけられる領域です。だからこそ、育成が最適解なのです。
まずは、排出量の把握と分析の基盤づくりから。当社にご相談いただければ、御社のGX対応を一気に前へ進めるお手伝いができます。社会に求められる価値を磨く企業は、必ずビジネスとしても強くなる。これまでの経験から、私はそう確信しています