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2020.04.28

人財はなぜ人「財」なのか

 英語だとHuman resourcesと呼ばれる人的資源は、日本語では一般的に人材と言われています。資源も材も、消費されるイメージの強い言葉だと思います。専門用語だと「経営資源の配分」だとか、「人材配置」という言われ方もしますが、それこそますます人をモノと同列に論じる考え方が強く出てきてしまいます。

 他方で特に日本の資源循環ビジネスでは、有害物質など難しい対象物を扱う事業特性から、歴史的に「信頼できる人とでないとビジネスをしない」という風土が養われてきました。常にフェイストゥフェイスの関係を重んじ、良い意味で現場中心主義を貫いてきたところがあります。確かに法規制もありましたが、このような考え方は商圏が小さく固めるために役立ったようにも感じます。伝統的に「企業は人」「商売は人」という考え方で成り立ってきた、というわけです。

 しかしここ最近では、経営の近代化が言われる中で、「人に仕事をつける」のではなく「仕事に人をつける」ことで最適配置を実現するという考え方のほうが主流になってきています。資材や時間・スペースなどの投入資源を可視化し、人もまた最適配置を考えることで効率を上げてゆく、という仕組み自体に間違いはありません。ただその取り組みが進んで仕組み作りが先行すると、仕組み以上の効果をもたらすことが期待しづらくなってくる、という変化もみられるようです。システムの硬直化が組織のダイナミズムを奪ってしまう、というような変化です。これは何に起因するのでしょうか?

 「言ってることはわかるが、規則のやり方と違う」「この変更を認めると、他も変更に対応しなければならない」「これまでにそんなことをした実績はない」このような発言が中間管理職から聞かれるようになったら要注意です。いずれもシステムの硬直化が進んだ組織でよく聞かれるもので、仕組みを動かすべき人材がボトルネックになっていることを如実に示しています(岩盤化、とでも言うべき変化の始まりだと思っています)。

 規制に縛られているとどうしても仕事の仕方が硬直化しがちになるのは仕方ないとして、それを打破するのはやはり人材に負うところが大きいのです。ポイントは、そういうインセンティブが働いているかどうか、という点にかかってきます。

現場に入り、人対人のコミュニケーションから問題の本質を発見し解決して行く。この力こそが売り上げそして利益を生み出す源泉になっています。それは経営の近代化が進む前でも後でも基本的には変わりません。まさに人「財」と呼ばれる所以がここにあります。仕組みづくりを進めるのと並行して、人「財」を手当てしないと片手落ちになってしまうというわけです。

 仕事の仕組み化はどんどん進めましょう。他方で人「財」を大切にする経営を堅持することで、仕組みが自律的に回るように仕向けてゆくこと。企業の発展性を約束されたものにするためには、これ以外の道はないのです。

2020.04.21

ボトルネックは人

「ビジネスのボトルネックは?と考えると、短期的にカネと言う場面はあるかもしれないけど、構造的には常にヒトだと思うんですよ。」先日、オンラインでつながっている時に知り合いのリサイクル企業の社長がふと漏らしたコトバです。
 コンサルタントは収益構造を仕組み化するお手伝いをします。社内の仕組みづくりもあれば、クライアントにとっての市場やお客様の近くで仕事をすることもあります。いずれの場合も、クライアント自身がそれをできるように仕組み化するのがポイントで、実装段階から先の仕事はクライアント自身、すなわち社長でなければスタッフが自分で仕組みを動かしてゆくことになります。

 上手く回っている会社では、社長が戦略即ち「どの山に登るか」を決めることを仕事としているのに対し、「どう山に登るか」という戦術の部分についてはスタッフの仕事となっている場合が多いです。また、コンサルタントはそうなるように仕組みのあり方を指導するわけですが、肝心のスタッフが山登りに疑問を抱いたり、能力的にその山へついて来られなかったりする、と言う事例は残念ながら皆無ではありません。

 多くの場合、スタッフと上司がコミュニケーションを通じて解決できる可能性が高いのですが、にもかかわらず実際に解決努力へと踏み出す前に転職してしまう、というような例も決して少なくありません。やってみる前から、「課題解決に大切な時間をかけるよりはむしろ思い切って」、と考えてしまうのは人の常なのかもしれません。

 課題解決への忍耐を選ぶか、それとも転職を選ぶか、どこにその分水嶺があるのかといえばそれは「生き方」「信条」など、根源的な人生哲学に根差すところが大きいのです。会社員としてどのような「生き方」を目指すのか、新入社員は自問しながら会社に入って来ます。先輩社員もまた、そのような新入社員を教える中で、自身の「生き方」「信条」を振り返ります(新人教育で一番成長するのは先輩社員だ、とはよく言われることです)。そうすることで新入社員は人生に一度だけしか味わえない「新入社員としての自覚」を自ら作り上げてゆきます。

 私はクライアントに対し、常に「採用するなら中途ではなく新卒を採れ」と言うのですが、その理由がここにあります。すなわち、中途採用の転職組にはすでに社会人経験があるため、社会人として何らかの処世術を身につけている例がほとんどなのに対して、まっさらの新人には今から自分で自分の「生き方」「信条」を身につけてもらう必要があるということです。この部分を会社の戦略とシンクロさせることができたなら、ちょっとやそこらのピンチに出会っても、簡単に辞めようとは思わなくなります。逆に、新入社員のときにしっかりとそのプロセスを踏めていないと、心に隙間風が吹き込みやすくなり、ちょっとしたことで転職を考えてしまいやすくなります。

 ビジネスのボトルネックを解決したいなら、是非とも新卒採用と、行き届いた指導を通じた「生き方」「信条」の提供を。それを繰り返すことで、組織は見違えるほど活力あるものへと育って行くのです。

2020.04.14

横につながると

 コロナウィルス騒ぎによって仕事の仕方が大きく変わった、と言う方は少なくないと思います。典型的なのは、Zoomなどウェブ会議システムを活用した会議やセミナーで、中にはそれで飲み会を実施したという人も散見されるようです。世間の居酒屋経営者も、まさかウェブ会議システムがライバルになろうとは思いもよらなかったのではないでしょうか。

 それが飲み会であっても会議であっても、ウェブ経由だと割と簡単につながることができるのは利点だと思います。これまでのパターンだと、パーティやセミナーで出会って名刺交換したとしても、せいぜい数分くらいしか話ができず、あとから名刺を整理する段になってから「さて、誰だっけ?」と悩むことも少なくありませんでした。

 ウェブ会議システムを使った会議やセミナーになると、比較的じっくりと意見交換の場を持てるようになります。名刺を交換できないのは弱点かもしれませんが、その分メールやFacebookなどを通じたやりとりが補ってくれるので、人とのつながりを有機的なものに保っておくためには却って有効かもしれないと思っています。

 さらに良いのは同じ趣旨で共鳴できる仲間とすぐに集まれること、だと思います。先日、自社主催のセミナーを実施したのですが、6つの異なるFacebookグループから参加者があり、メーカー勤務の方、小売業の方、コンサルタント、産廃事業者、学校の先生などさまざまなバックグラウンドの方にご参加いただき、たいへん有益な知見を得ることができました。

 現在私はサーキュラーエコノミーをテーマとしてさまざまな会合に参加しているのですが、その中でひとつのモデルとして追求したいと考えているのが「動静脈連携」という取組みです。具体的な事例としては、バッテリーを巡る自動車メーカーと産廃事業者の協力関係が挙げられます。伝統的な鉛バッテリーに加え、最近ではHVやEVなどの普及とともに駆動系にもリチウムイオンバッテリーなどの先進的な蓄電装置が使われるようになってきています。特に市場投入後20年になるHVは、世界各国で廃車が出てきている段階ですが、そのバッテリーをどのように適正処理するか、さらには資源循環へと繋げてゆくかという課題は、世界中の市場で対応が求められるものです。すでに日本の大手メーカーは大手産廃事業者と具体的な取組を進めています。

 この「動静脈連携」は、他の分野にも応用することが十分可能ですが、その場合に注意すべき点として、連携をいかに持続可能性の高いものに仕上げるか、という課題があります。単にコストのみを追求してきたこれまでの取り組みと違い、資源の循環性を高め、ひいては気候変動問題を含む地球規模課題に対応することが新たな価値を生み出しているんだということを実感できるようにするということです。

 これまでの、既存の繋がりに縛られた中では意見交換の幅も深さも限られる場合が多かったと思うのですが、ウェブ会議システムで横につながることができるようになると、例えばそんな課題を解決するためのヒントも見つけやすくなるはずです。

 個人的にもこの取り組みをどんどん進めて行きます。その先に新たな価値が生まれるワクワク感を共有できたらと思っています。

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