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コラム

2019.04.23

社会善を支える情熱とビジネスチャンスの交差点

最近、SDGsを通じて企業が取り組む社会善のあり方を議論する若手ビジネスマンの会合に参加する機会がありました。参加メンバーには、有名大企業から中小企業までさまざまな業種・企業規模の会社の方がいらしたのですが、そこで気づかされたのは、そのような集まりが盛んになる背景には、業種や企業規模に関わらず今の若い世代が共通して持っている社会善への強い関心が底流にあるということでした。

聞けば、今の30代中盤の方々は、京都議定書が採択された1997年当時はまだ小中学生ながら、社会が取り組むべき環境対策については学校教育を通じてじっくりと考えさせられる機会があったのだそうです。具体的課題としての気候変動に関する学習は、さらに広い視点を持つことへの関心を呼び起こすきっかけになったに違いありません。

昭和に育った私たちの時代には公害対策についての授業くらいで、社会問題の解決についての視点は学んだものの、そこから先に議論を膨らませて社会善の方向性について学ぶというところまでには至っていなかったように思います。

世の中がすべてこのように意識高い系の若手ばかりではない、というご指摘は覚悟のうえで、今日はこの変化の流れに注目してみたいと思います。会合で紹介があった事例は、某有名進学塾が中学入試問題の中からSDGsに関するものを選り分けて問題集を出している、というものだったのですが、ちょうど中学受験を控えた子供たちの保護者が30代ということを併せて考えると、親を対象にした受験対策プロモーションとしては卓越した目の付け所だと思います。

具体的な例を挙げてみましょう。

以下は西武学園文理中学校の入試問題です。これが12歳の子供に対する問いかけだと認識して読んでみてください。

『「働く」ということについて次の文章を読み、あとの問に答えなさい。
かつてあるイギリスの経済学者は、「将来は一人が一週間に15時間働けば十分な世の中になる」と言いました。また、生活を送るために十分なおカネを全員に与える「ベーシックインカム」という取り組みを実験的に行った地域もあります。さらに「AI(人工知能)の発達によって不要になる職業」も最近話題となりました。このように考えると、「人が働くのは当たり前」という考え方自体が大きく変わるのかもしれません。」
問、働かなくても生活をするために十分なお金が国からもらえるとしたら、あなたは働きますか?働きませんか?どちらか一方を選んだ上で、その理由を具体的に答えなさい。』
(日能研:「SDGs 中学入試問題から見る2018年の変化」より)

そういう受験問題を解かされて育つ世代が社会人になる時代に、企業が提供すべき社会善はどのような形で、どんなビジネスチャンスが生まれることになるのか?

ベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者である法政大学の坂本光司先生は、仏教の僧侶から学んだ話として「幸福とは①人に愛されること、②人にほめられること、③人の役に立つこと、④人に必要とされることです。この三つの幸福(②、③、④)は、働くことによって得られるのです。」と述べられています。

SDGsでは、ゴール8のDecent Work(やりがいのある仕事)がこれに当たると思うのですが、坂本先生の言う「働くこと」と、お金のために「働く」は、ちょっと意味や範囲が違うような気もします。いずれにしても、全員ではないにしろ12歳でこのような問題を考えた人材が、今から10年後の日本ではごく普通に社会人になる、ということを、私たちは肝に据えておくべきなのだろうと思います。

今から10年後に、かつてなかった変化からビジネスチャンスを先読みしようとするならば、中学入試問題を見ておくというのは意外と悪くない将来予測かもしれません。

2019.04.16

副業としての環境ビジネス

いよいよあと半月ほどで令和元年がスタートします。平成の最後の方になって勢いが出てきた働き方改革の中で、副業解禁という動きも広がってきたようですね。サラリーマンにとってはかつてなかった時代が到来したという感じですが、企業経営者にとっては何も目新しい話ではなく、新規事業や多角化という言い方で、副業を展開することは昔から行われてきたのです。

この、新規事業あるいは多角化を通じて環境ビジネスに進出される会社は実に数多く、事例も多岐に渡っています。製造業が自社製品や経年劣化した運搬具などを処分する廃棄物処理業を始めるような事例から、不動産業が自社の強みである土地を生かしたメガソーラーの建設・運営に進出するような事例まで、そのパターンも様々です。

このような新規事業への進出に関する最終的な経営判断は、主に損益の予想に基づいて決められることが多いのではないかと思いますが、各社がそれぞれ「企業文化」を持っているように、異なる業界もそれぞれの色「業界特性」を持っている点にも十分注意を払っておくべきなのです。特に環境ビジネスについてはそれが重要なポイントとなります。

具体的には、たとえば製造業が製品の納期・品質・価格に強く縛られるという特性を持っているのに対して、それが廃棄物処理業だと厳格に同じ意味での「納期」は存在せず、廃棄物を引き取ってしまえばその後いつ処理するかについて顧客からの厳しい要求が出てきにくい、という大きな違いがあるのです。

この納期に縛られない、あるいは客が納期を気にしないという点は、処理施設の操業コストを合理化するうえで大きなアドバンテージになり得ます。特急注文が入ったり、段取り替えが頻繁に起きることから、製造業の工場にとっては至難の業である安定操業が、廃棄物処理業では比較的楽に実現できるからです。

反面で、品質面での社会的責任については一般的に廃棄物処理業のほうが製造業のそれよりも格段に厳しい責任を負っています。多くの場合は行政の審査による許認可と、違反に対する厳しい罰則に縛られており、義務付けられているといってもリコールによる善後策や、厳しいと言ってもニュース報道などの社会的制裁で済まされることの多い製造業のそれと比べると確実に一段以上厳しい責任が追及されるのです。

日本では、多くの新規事業は母体企業出身の経営者に委ねられる場合が多く、それが環境ビジネスであっても例外は多くありません。ですが環境ビジネスがそれだけ社会性の高い事業であるという点について、必ずしも経営者が良く理解しているかと言われると、残念ながらそうとばかりは言えないのが現状です。

特に、いわゆる「事業子会社」としてたとえば廃棄物処理のみを行っているような事業体の場合、経営判断に関わるような決裁事項が親会社に上がるというような例も珍しくないのですが、そうなると決裁者はまさに製造業そのものの経営者ですので、社会的責任に関する認識が廃棄物業界のそれとズレてくる、というようなことも起きがちになります。

市場を見ると、環境ビジネス専業で成り立っているという事例はむしろ少数派で、製造業など別分野の企業が多角化する中で環境ビジネスにも進出したという事例のほうが多いのですが、このような業界特性の違いによる思わぬ経営トラブルを招くことのないよう、経営者は万全の注意を払わなくてはなりません。

業界特性の違いを可視化して、会社組織として理解しておくこと、そして経営判断の場面では必ずその「違い」を確認すること。この二つを確実に実行することで、新規事業進出のリスクを低減し、収益を確実なものにできる可能性はぐっと高まるのです。

2019.04.09

やれてる会社でも、実は人はいない

コンサルタントとして環境ビジネスの海外展開に関わっていると、よく社長から「ウチは人材が弱みで・・」とか、「英語のできる人材がいないんです。」という声に出会うことがあります。確かに、英語が喋れて外国の企業とも交渉できる人材がいてくれれば海外展開を考えたい、という気持ちもわからなくはありません。

でもそういう人材がいないと仕事にならないとうのは、私に言わせるといささか短絡が過ぎるのです。逆に、海外展開できている会社でも必ずしも人材が豊かなわけでもなければ、英語による交渉力が十分にあるというわけではありません。

2019年現在、かなりの部分はIT技術の進歩によって、英語による仕事が昔ほど難しいものではなくなってきていることが、まだ十分には知られていないのかもしれないと思い、今日はそのあたりを少し詳しくご案内してみます。

1. 読む・書く
最近では、海外とのビジネスコミュニケーションのほとんどが電子メールになってきている状況だと思います。どうしても先方が電話による対話を望む、というような場合でなければ、基本的に電子メールでのやりとりで済むのですが、その場合はGoogle辞書を使って相手の文章を読み、こちらから打つ文章については「ココナラ」などのネット翻訳サービスを使えばスムースに英語にしてくれます。多少英語が使える人なら、自分で書いた英語をチェックしてくれるサービスもありますので、そちらのほうが割安だと思います。

2. 話す
最近のAI自動翻訳機は、かなり込み入った日本語でもだいぶ正確に英語にしてくれます。これは自社の商品を説明するなど、定型の文章を話すときに最もその力を発揮します。すなわち、予め決まった文章を翻訳し、それを暗記しておくのです。

・・と、ここまで聞いて「なるほどそれならやれる!」と考え方が変わった人はあまり多くないかもしれません。これらはそもそもあまりインパクトのあるニュースではなく、科学技術の発達についてあちこちで取り上げられている情報にすぎないのです。

それなのにどうして、と思われた方のギモンにお答えすると、海外ビジネスに挑戦して、そこそこやれている会社も実はそれほど人材に恵まれているわけではない、という事実があるからなのです。せいぜい上で紹介した1.と2.くらいが出来れば、あとは「何とかなる!」式の挑戦でどうにかこうにか商談が動いているという場合も少なくない、ということなのです。強いて言えば、これまでの2点に加えて、

3. ガイド役を配置する
外部人材で業界のことが分かっていて、英語のチェックをかけてくれるくらいの実力ある専門家を雇う、ということです。最近はインターネットを介して世界中どこにいてもさほど長いリードタイムを取らずに英語の精緻化がカンタンに確認できるのです。この部分を担保できるかどうかで、英語に自信のない社員でも海外とのやり取りができるようになるかどうかが決まると言っても過言ではないでしょう。

ここで述べた1.~3.までを総合的に実施すれば、多くの場合は今いる人材の力+ITの力で比較的簡単に英語を使ってビジネスができるようになります。さらにこの外部人材の力を継続的に用いることによって社員の英語力向上も同時に図れるため、立ち上げ時期に多少のトラブルが出たとしても、それほど時間をかけずに是正することが可能となります。

そこで決定的に重要になるのが、海外の環境ビジネスでどのくらいの売上を見込むのかという経営方針と、そのための営業努力について、いつまで何がどの程度求められるのかという見通しです、これがないと仕事をエンドレスに計画しなくてはいけないこととなり、英語もどこまで上達すれば良いのかわからない状態が続くため、担当する社員はモチベーションが非常に保ちにくくなります。

時あたかも、循環型経済というタイトルでリサイクルビジネスに関するISO規格が検討されていたり、気候変動対策に2兆ドルもの資金が動くとの観測もある等、環境ビジネスにとってはまたとないビジネスチャンスが広がっています。

他方で日本企業にとって人手不足は業界を問わず共通の制約条件となっています。海外市場の開拓に成功している会社でも必ずしも人材がいるわけではないという現状を踏まえ、「現在の人材でどこまでやれる?」という棚卸をしっかりと行うことこそ、機会を逃さないために経営者が今取るべき施策なのです。

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